女王は説明する
後日、私はギルバートとアーロン軍団長・ゴドフリー魔法師団長それからアニータを呼び出した。
勿論トミーに骨を折ってもらい、秘密裏に集まらせている。
「……今日集まって貰ったのは、他でもない。ベックフォード侯爵家、ウェストン侯爵家並びにスレイド侯爵家の捕縛に関する件で集まって貰った」
全員が言葉の重みを即座に理解して、真剣な面持ちになっていた。
「……まず、アニータ。子ども達をカールに引き渡せ」
初っ端から爆弾を落としたせいで、アニータの表情は怒り心頭だった。
「子ども達を引き渡せですって?そんなの、嫌に決まっているでしょう!子ども達を助ける為に協力しているっていうのに、何で子ども達を危険に晒さなきゃなんないの!」
「アニータ、其方の言い分は分かる。故に今回引き渡す子どもはトミーの部下だ」
「あ……そういうこと。でも、危険じゃない?トミーさんの部下なら、危険も承知なのかもしれないけど……ほら、やっぱり私たちも引き渡す以上、責任があるというか……」
「だが、スレイド侯爵家を捕まえる為の証拠が、未だない。故にこのままでは捕縛はおろか表立って調査もできん。子ども達が捕らえられている場面を押さえれば、それが何よりの証拠になる。共和国に捕らえられている子ども達を早く救出する為にも、早く国内の問題は片付けたい」
「……そうだ!先にカールを捕まえましょう!ほら、カールを捕まえれば……何だっけ、証言?というのをさせれば良いのよ」
「ベックフォード侯爵家及びカールを先に捕縛したら、スレイド侯爵は今回の件に関する一切の証拠を闇に葬るだろうな。……もし、未だ彼の手元にあったら……の場合だが。もしくは、身を隠すか逆にこちらに攻撃をしかけてくるか。いずれにせよ、彼の手札が増えるだけ。故にベックフォード侯爵家とスレイド侯爵家は同時に攻略したい」
「……ウェストン侯爵家は同時に攻略しなくて良いのですか?」
今まで黙っていたアーロンが、口を開いた。
「信頼できる者たちのみで動き、迅速に攻略しなければならない。……魔法師団との共同作戦とは言え、二家同時攻略が精一杯であろう。それに、ウェストン侯爵家は、嫡男オスカーが抑えてくれる。協力してくれるアテもある。故に二家の攻略を優先させる」
「理解しました」
「……アニータ、引き渡す子ども役の者たちには余の宝剣による守護を与える。だから、安心せよ」
「……五つの宝剣にはそれぞれ名前に関する能力があります。その内『栄光』の宝剣は、王の敵を殲滅する攻撃力と王が守護せし民を守る力が秘められていると言われています。つまり今回の場合は、子ども達に対して宝剣による結界を張るということですね」
「……分かりました。協力します」
「うむ、頼んだぞ。……さて、アーロンとゴドフリーよ。其方たちは隊を二つに分けよ。一つは隊員の八割を配置し、そしてもう一つは二割。アーロンとゴドフリーは八割の方を率いて、ベックフォード侯爵家を攻略だ」
「随分と偏らせますね。二割の方は、誰が率いるのですか?」
「勿論、余だ」
「なっ……陛下!まさか、陛下まで御出陣なさるのですか!?」
「そうだ」
「危険です。是非、ご再考を」
「もう、決めたことだ」
「ならばせめて護衛として、もう少し隊員をお連れ下さい」
「問題ない。其方たちの心配は有難いが……余には、宝剣もある。それに何より、余の護衛に当てるよりも、より確実にベックフォード侯爵家の者たちを捕らえたい」
「……っ。畏まりました」
彼らは渋々といった体で頷いた。
それから私たちは、かなりの時間をかけて具体的な戦術……両侯爵家の制圧ルート、各隊の配置等々を話し合っていた。




