女王は問う
「……何で、言ってくれなかったの?」
いつものように、私はヴィルヘルムを匿っている隠し部屋にいた。
……当然私のその疑問に、彼が答えることはできない。
「貴方が、私の憎悪に気が付いていたなんて……思いもしなかった。破滅覚悟で、私のことを助けてくれていたなんて……知らなかった」
どれだけ、苦しかっただろう。
やがて私に殺されると分かっていて、それでも彼は私を助けてくれた。
自分と血が繋がる一族の死を知りながら、それでも彼は何も言わなかった。
弱音も、不満も、何も漏らさなかった。
どれだけ、辛かっただろう。
ポタリと、涙が頬を伝った。
ダメだ、泣くな。泣くのは、卑怯だ。
「……もう少しで、終わるから。後少しで、貴方は自由よ」
他に、何も貴方にはあげられるものはない。
与えられた恩に報いることも、できないのだけれども。
「……アーロンに、言われたの。独りで、進むなと。駄目ね、幕に手をかけてから、焦って一人空回ってたみたい。これからは、ゴドフリーとアーロンに協力して貰うわ。エトワールの皆も、手伝ってくれることになった。段々と、仲間が増えてきた気がする。私がいなくなった後も国政が回るように、体制も整ってきた。……これで、ちゃんと終われる」
私にできることは、復讐劇をやり遂げること。
自分で幕を開いたのだ……幕を引くまで、やり遂げなければならない。
そうでしか、彼への感謝を示す方法がない。
それ以外、私には分からなかった。




