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悪徳女王の心得  作者: 澪亜
第二章
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女王は客を迎え入れる4

「この者たちを隣の部屋に案内してくれ。二人は、そこで暫く待機しているように。後に、トミーを向かわせる」


「畏まりました」


そして二人はアーサーに連れられ、部屋を出て行った。


「……随分と衝撃的な会談でしたね」


静かな室内に、トミーの声が響く。


「ああ……まさか、ヴィルヘルムが知っていたとは……」


「恥ずかしながら、気がつきませんでした。……彼の協力に」


「責めはせん。余も、気付いていなかった。ラダフォード侯爵家の者たちの捕縛から統治までスムーズだと疑問に思ったことはあったが……上手くいっているのであればそれで良いと、その疑問を放っていた」


私は、そっと溜息を吐いた。


「……これで、十一年前の事件の証拠は残りスレイド侯爵家とべックフォード侯爵家のみか」


「……仮に証拠があったとしても、最重要機密として扱っているでしょうね。人身売買以上に、証拠を見つけることは困難かと」


「であろうな。だからこそ、人身売買を足掛かりに家宅捜査ができれば一番簡単であろう。……今回オスカーのお陰でべックフォード侯爵家の関与についての証拠も得た。残るはスレイド侯爵家の証拠か」


元々、五大侯爵家の家宅捜査を行う大義名分を得るために、トミーには長年工作活動をして貰っていた。 

十一年前の事件に関与している証拠を得て、彼らの名誉を失墜させるために。


それが今回のエトワールの件で全てが吹っ飛んだ。

トミーが態々大義名分をでっち上げなくとも、奴らを失墜させるに足る案件……人身売買が明るみになったからだ。


私たちが用意していたもの以上の罪を軽々と犯してくれていたとは……本当に、五大侯爵家の腐敗具合は凄まじいものがある。   


「本当、巧妙ですよ」


「スレイド侯爵家の証拠を探れといったら、可能か?」


「……べックフォード侯爵家に調査が入ったことを、カールが仮に各家に警告がてら共有していたら厳しいですが……陛下の命令であれば、やってみせますよ」


トミーからの返答に、暫く考える。


「……ダメだ、リスクに見合わぬ。スレイド侯爵家には魔法を無効化する者がいる。だと言うのに、証拠が残っているのかは不明。リターンが見込めぬというのに、其方を死地に追いやる訳にはいかぬだろう」


「……それに関して、一つ提案が」


「何だ?」


「証拠の存在が不確かなのであれば、証拠を作り出すのはどうでしょう?エトワールが味方に入っていることですし」


「……其方は、子ども達を危険に晒せと?」


「俺の配下には十六・七の奴らがいます。見た目も若く見えるので、そいつらに任せましょう。その上で、ベックフォード侯爵家がスレイド侯爵家に子ども達を引き渡した後、セルデン共和国に引き渡す前にスレイド侯爵家を取り押さえれば良いのではないでしょうか」


「……ふむ」


「ルクセリア様、是非、ご検討下さい。俺が考える中で、それが最も可能性が高く、手早く進められる手段です」


私はトミーから言われた案について、思案する。


……トミーの言う通り、確実性と迅速性で言えば最も効率的な手段でもある。


「……その方法では、駄目だな」


悩んだ結果、私は回答した。  


「其方の部下の守りには念には念を入れよう」


……そうして、私はトミーに今後の作戦を伝えたのだった。


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