女王は客を迎え入れる3
「……全ての情報を、嘘偽りなく彼に与えよ。そして、全ての幕引きまで余に協力せよ。それが、其方たちに与える罰だ」
「……陛下?」
「ウェストン侯爵家は、潰す。ラダフォード侯爵家と、同じように。……それは、変えられぬ。だが、其方たちは余の協力者。故に、其方たちの存在は目を瞑るとする」
「……私如きのような者に寛大なお言葉、恐れ多いことです。ですが、どうか私もウェストン一族の者と同じ処遇をお願い致します」
「……私如き、か。其方は、己の命を賭してでも過ちを正そうとした。其方のその行為は、如きと言うにはあまりにも尊いものと考えるが?」
「……しかし、前例を作っては……」
「……前例を作るとは言ってないぞ」
「そんな……!」
私の言葉に、サムが叫ぶ。
「……控えろ、サム」
オスカーの嗜める言葉に、けれどもサムは引かない。
「恐れながら、陛下。オスカー様は、自らの命をも棄てる覚悟で此度の報告をしています。しかし私はそれを座して見守ることは到底できません。……私はどうなっても構いません。ですが、どうか……オスカー様の御命だけは、御救いいただけませんでしょうか?」
「……其方の命と、オスカーの命が同等だと?」
「……っ。いいえ……ですがっ!」
「冗談だ。命は等しく皆平等。例え身分の隔たりがあろうとも、年を経れば誰しもが老いるし、やがては命を失う。……逆に命に価値をつけるという考えこそが、五大侯爵家を増長させた傲りと同じ」
私の言葉に、サムは驚いたように目を見張っていた。
「……良い家臣に恵まれたな」
「……勿体無いお言葉です」
「だが、オスカー・ウェストンは生かしておけぬ。故に其方は過去と名前それから顔を捨てねばならぬ」
「……は?」
「其方に新たな名と顔を与える、と言っているのだ」
「……つ、つまり……オスカー様の御命をお助けいただけると?」
「オスカーとしての其方は死んだことになるが、別の人物として生きよと言っている」
「……あ、ありがとうございます!」
「……しかし、陛下……」
尚も不満げなオスカーに、私は溜息を吐く。
「……逆に重い罰かも知れぬぞ?オスカー・ウェストンとしての全てを捨てさせられた上に、それが僅かにでも露見すれば、当然其方の命はない。その可能性に怯え、挙句、一人生き残ったという事実が其方を苛むかもしれん。それでも、其方を捨てるのは惜しい故、余は其方にその罰を押し付けるのだ。其方は、耐えられるか?」
「……私は、選ぶ立場にございません」
「ほう?」
「ですがもし……許されるのであれば、私は生きます。そして国の為に、働きたく思います。それが、どのような形であろうとも」
「安心しろ。其方には、余の元で働いて貰う。是非とも、国の為に働け」
「……良いのですか?」
「余は信頼できる駒を欲している」
「……温情、感謝致します」
「ふふ……そうと知りながら、其方はこの罰を背負うと言うか。ならば、アーサーよ!」
「はっ!」
私が叫ぶと、扉の向こうで待機していた護衛騎士のアーサーが戻って来た。