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勇者を追放した姫の破滅物語

作者: のんのん

――これは私の愚かさが招いた結果


「ダメ・・・・どうか・・・止まってっ!」


――どうしようもなく愚かな女の作りだした地獄


「泣くなアリーシャ・・・俺はアンタの笑顔が見たい」


血の降る世界で地に這う男の命が間もなく消え去る。これは救世の英雄の最後を記したお話し。


――始まりは二年前、私のセカイが崩れた日


「よくぞ参られました異世界の勇者。どうかこの世界をお救いください」


――死んだ魂を呼びよせ、地獄へと送る勇者召喚の儀式。破格の力を宿し、その生を血で縛りつける悪魔の儀式。そこで私は、罪の全てを忘れ一人の男性と出会った


「俺が・・勇者?いやいやいや!こんなおじさんに何言ってるの!?」


「年齢はあなたの肉体の全盛期に、力はチートと呼ばれるものを神より与えられたはずです。どうか勇者様、この世界をお救いください」


豪華な宮殿の儀式の間、そこで男と姫は出会った。ここは魔人と人間が手を組み邪神を討つべく日夜争いが繰り広げられている世界。広大な大陸の半分を分かち領土を奪い合う、血の降る世界であった。


――あなたが召喚されて二年、様々なことがありました。私の前で命を奪い嘆くあなたを見た時、私はどうしようもなくこの胸が締め付けられた


「なぁ、どうしてこんなにも命が軽いんだ・・・・教えてくれよ姫さん」


――小さな命を助け、戦う意味を作り出させてしまった時、私はどれほど後悔したでしょう


「俺のこの手が救える命があるなら、手を伸ばそうと思う。だから見ててくれよ姫さん」


――あなたと見た祭りの賑やかさは、私の内に秘めるこの暗い気持ちを忘れさせてくれました


「なぁアリーシャ、俺は守れてるかい?君が望んだ綺麗なセカイを」


――だからどうか私を許さないで、私が愛したあなたは私が殺すのだから


その日大陸の八割までを領土としていた人の国の中枢、勇者のいる国に邪神が大軍を率いて襲撃を仕掛けた。邪神の力を使い、短期決戦を仕掛けてきたのである。


「行ってくるよアリーシャ。ラスボス自らおでましだ。ここで勝てば俺たちはこの世界を平和にできる。邪神の拘束から解き放たれるんだ」


――引き留めない。なぜならそれが彼の責務だから。泣かない、それはあまりにも卑怯なことだから


「どうか、どうかご無事でお帰りください◆◆さま」


「あぁ・・・・行ってくる」


――笑顔で駆けていく背を引き留めることができたなら、そんな妄想はあまりにも


この日、邪神は敗れ世界は平和になった。魔物はいる、魔王と呼ばれる強き者も出てくる。しかし世界は神に等しい化け物を屠ったのだ。一人の英雄と引き換えに。


「血が・・・とまりませんっ!どうしてっ!どうしてっ!」


「無理だ・・・・・・呪いが効いてる。助からないみたいだな・・・・俺」


「いやっ!・・・・いやいやいやっ!死なないで◆◆さま!」


「ダメ・・・・どうか・・・止まってっ!」


「泣くなアリーシャ・・・俺はお前の笑顔が見たい」


少しずつ目から光が消えていく。しかし男は満足げに笑う。そして想う、次があるならばと。


「なぁ・・・俺はまたアンタに会えるかアリーシャ?また転生しても、姫さん、アンタに会えるかい?」


「はいっ!会えますっ!ぜったいにっ!だから・・・だから死なないでっ!私はまだあなたに――――」


「・・・愛してる、来世かそれとも・・・・いつか絶対また会おう・・・そしたら・・・また・・わら・・・・・・・・・・」


「あ、あ、アアアアアアああああああああああああああああ!!!!!」


――そして私は【夢】から覚めた。次は間違えないように、【予知の御子】としてあのかたを死なせないための償いをしよう


「ようこそ役立たずの勇者、いえ家畜にすら劣る者。どうか二度とその顔を私の前に見せないで」


「はっ?」


彼女は世界の未来が見えた。【夢】で【生】を覗く力を持つ彼女は男を追放した。それが男を殺さぬ自身への罰となると信じて。


――あぁ、だからこそ


「だからこそこの最後は私に相応しい――――――」


街は燃え、宮殿は落ちた。いや、彼女は陥としたのだ。民を逃がし、家族を逃がし、しかし彼女という特殊な能力を狙う邪神の軍勢をおびき寄せて。


「でも、苗床になる気などないわ。この命、自ら断って償いましょう。あの人への罪を」


勇者がいないこの国は簡単に疲弊した。ただでさえ均衡していたわけではない、頼みの綱の勇者は力を知らず、それに頼った国は希望をなくした。ゆえに、国は堕ちた。


「ここにおったか姫よ」


「天を穿つ十二王のお一人ですか」


「はっはっはっ!どうか姫手荒いことは・・・・ここではしたくありませぬ。どうかついてきてくださいませぬか?なに、すぐに自意識などなくなり産むだけの苗となりましょうぞ」


――愚かな者よ、私と同じく間違えている


「ふふっ、ええ、一緒に行きましょう」


「おや?精神が壊れておいでか?ならばたやす―――――」


「もっとも行くのは地獄ですが」


瞬間魔力が爆発した。渦を巻き重さをもち世界に吼える。それは命を奪う戦争兵器。自身を薪のようにくべることで燃える破壊の権化。魂すら砕く悪魔の宝玉。


「まさかそれは・・・・ふざけるな小娘!貴様死ぬ気か!【収縮魔力弾】なぞ使えば貴様もっ!」


「ええ、これが私の償いなのだから」


――だからさようなら、またいつかあなたに会えるならそのとききっと


「だから言っただろ姫さん・・・んな泣き顔じゃなく、アンタには笑っていてほしんだってな」


空から降ってきたのは絶望。もっとも許容のできない未来の化身。拒否したい、そう思っているのに彼女の心は踊ってしまう。その声を聞いただけで彼女はその顔を綻ばせてしまう。


「どう・・・して」


「託されたんだ、救えなかった俺から。アンタの笑顔を護れなかった俺から。だから、なぁ姫さん・・・次は最後まで守るぜ?アンタは笑顔が一番よく似あうからな」


「だって、それじゃあアナタはっ!?」


「大丈夫だよ、【俺】からもらったんだ。アンタを守る力を、意志を、心を・・・・だったら負けねーさ。だから姫さん・・・・いや、アリーシャ。はじめよう、ここから」


「もう・・・仕方のない人なんだから」


ここから始まったのは世界を救った英雄の物語。圧倒的な力で世界を救い、その後のんびりと世界中を巡った姫と英雄の物語。




著者

ヘルベルト=マグイクト

「世界の英雄と聖姫のはじまり」より抜粋

なんかとりあえず大まかな構想だけで投稿しました。

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