誰一人、箱の中までは見ようとしない
店の机の上に2種類の箱があった。ひとつは、黒一色で装飾などは一切ないシンプルなもの。もうひとつは、何色であるのか判断が難しいほど鮮やかに染められリボンやらハートの模様が目立つもの。
どちらも値段は同じなのに、売り上げは圧倒的な差を作り出していた。全く売れない前者と次々と売れていく後者。時間が経つにつれ、その差は縮まることなくだんだんと広がっていった。
誰しもがそうなって当然だと思う結果に、唯一眉を寄せたのはその商品の製作者だった。
どうしてこんな結果になったのだろう?
不思議でたまらない。
きっとこれを買っていった人は、人を外面だけで判断するような困った方に違いない。
次の日、
製作者がとある一枚の張り紙を二箱の間につけた。
すると昨日までの売り上げは幻かのように、一気に前者と後者は逆転した。
特に大したことない張り紙が人を変えた。
いや、忘れていたことを思い出させた。
「見た目で判断せず、手にとっていろいろ見てください」
ただこれだけの言葉が、人を変えた。