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REGAIN  作者: 村上蘭
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二度目の災難





「うーんと、この辺だったけどな、あ、あった」



 今朝、あんなことがあったので気分一新の為にス

カッとする様な映画でも借りようと会社が終わった

後、駅前のレンタルショップに来たのだが新作にも

これはと言う作品が無かったので思い切って古い作

品を借りる事にした。



「これだ、これだ」



 手に取ったのは、松田優作の探偵物語だった。僕

は、リアルタイムで松田優作は見たことは無かった

が、テレビの深夜映画でやってたのをたまたま見て

ファンになった。それからは、面白い作品が無いと

きには優作の映画かテレビシリーズを借りている。

その日は、旧作を十本ほど借りてレジで支払いを済

ませて店を後にした。



「よし、今日は土曜日だし一晩中映画三昧だな」



 アパートに帰る途中でコンビニでビールとつまみ

をしこたま仕入れた。



「よーし、これで準備万端ととのったぞ」



 僕のアパートは、駅から歩いて十分ほどの所にある。

最近引っ越したのだが、日当たりも良いし此れは当た

りじゃないかと本気で思っているし駅のまわりには今

はやりの店だったり、飲み喰いするのに美味しい店も

結構あるから、生活するのには便利な町だなと言うの

が僕の感想だ。そんな事を色々考えている間にアパー

トに着いた。



「んっ!」



 ドアノブに鍵を差し回した瞬間、少し違和感を感

じた。いつも鍵を右に回して開けるのだが、その時

の抵抗感が無かったのだ。鍵かかってない直感的に

そう思った。鍵を、閉め忘れたかなとも考えたけど

寝不足気味ではあったが、ちゃんと鍵を掛けたのは

覚えていた。という事は・・・僕は、用心しながら

静かにドアノブを回して外開きのドアを開けようと

した。



「ドガッ」



 凄い音だった。その衝撃で僕は後方に吹っ飛ばさ

れ頭をしたたか打ったが、すぐ起き上がった。その

僕の眼の前を黒い影が通り過ぎ様としているのが見

えた。茫然となって、言葉が中々出てこなかったが

やっとの思いで絞り出すように言った。



「ど、泥棒」



 黒い影が、その声にちらっと振り向いた様だった

が顔までは解らなかった。そのまま、一目散に逃げ

て行ってしまった。僕は、そいつを追いかけ様とし

たが不覚にも腰が抜けてしまって、その場にへたり

込んでしまっていた。



「それで、犯人の顔は見なかったんですね」



 駆けつけた警察官がそう僕に聞いた。



「はあ、なにぶん暗かったもんで」



 警察官は、矢継ぎ早に質問してきた。盗られた物

は無いか、壊された物はみたいな事であった。部屋

は見る限りそう荒らされてはいなかった。多分、侵

入して間をあけず部屋の主が、帰って来たものだか

ら犯人は品物を物色する暇もなく、泡食って逃げた

のだろうと言うのが警察官の見立てだった。結局、

怪我も大した事がなく盗られた物も無いという事で、

行きずりの窃盗犯だろうという所に落ち着いた。



「部屋の鍵は、新しいものに変えた方がよろしいで

しょう。それも出来れば、二重にされた方が良いか

とそれとこの辺りの、パトロールを今後強化する様

本署に報告しておきますので」



 それだけ、言い残すと警察官は帰って行った。事

件性が薄いと、呆気ないものだなと思ったが取り敢

えず警察官の言う通り鍵は新しい物に交換する事に

した。その夜、僕は借りてきた映画を一晩中見て夜

を明かした。犯人は、どうやったか解らないがこの

部屋の鍵を入手していたと言う事だから、もう一度

帰って来ないとも限らないと思うと怖くて眠るなん

てとても出来ないと思ったのだが、夜明け前にはテ

レビの前でしっかり眠っていた。買ってきたビール

が眠気を誘ったみたいだった。翌日、遅い朝食を済

ませてから僕は防犯鍵の専門店に行くために都心に

向かう電車に乗っていた。しかし、何でこんなに立

て続けに事件に巻き込まれるんだろうと電車の車窓

から見える流れゆく景色を見ながら僕は考えに耽っ

ていた。



「何か、したのか俺」



 そう思って色々考えたが何も思い浮かばなかった。

そんな、僕の考えなどお構いなしに電車は目的地の

渋谷駅に着いた。鍵のショップは、駅から程ない所

にあった。店では、昨夜起こった一部始終を話して

一番防犯性の高いものをお願いしますという事で頼

んだ。今、少し立て込んでいるので二、三日後にな

るという事であったが取り敢えず出来るだけ急いで

くれという事を頼んで店を後にした。



「さて、この後はどうするかな」



 そう、思って渋谷のスクランブル交差点を少し急

ぎ足で歩いていると、その人は反対方向から来てや

はり急ぎ足で通り過ぎて行った。「あっ、彼女だ」

昨日、電車で危ない所を助けてくれたあの彼女だっ

た。僕は悪いと思いながらも好奇心から彼女の後を

尾行する事にした。



「これじゃ、まるでストーカだな」



 彼女の、早足について行くのに苦労したが五分程

歩いて、七階建てのビルに入って行くのを確かめて

から彼女の後に続いた。五階にあったその会社の、

ネームプレートを見て僕は妙に納得した。そこには、

田崎探偵事務所と書かれていたからだった。











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