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私の体験談  作者: 常羽 トオル
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幼馴染みのSの部屋

私には幼馴染みがいる。


神社生まれのS。


これが超絶美少女だったり、寺生まれのTと言う名だったらまた違う物語があったかも知れないが、Sは現在東京に上京して美容師をしているイケメンの男である。惜しい。


そんな彼とは昔から良く遊んだし、彼の親父さんにもかなりお世話になった。今でも親父さんにサーキットで200キロを超えるスピードで走るGTターボの助手席に乗せられた記憶は鮮明に残っている…チビりかけたわ…


(閑話休題)


そんな彼等の家には神社本殿と御尊山、本邸と、公道を挟んで横に別邸があり、SとSの兄はその別邸の一階二階が各々の部屋になっていた。

私もちょこちょこと遊びに行っては泊まって帰ることをしていたが、小学生中学年の時になんとなく違和感に気付く。それは、


「Sの部屋に泊まると霊をみる」


というものだった。


いくら敷地から離れているとはいえ、神社のすぐ近くの住まいであるというのに、Sの部屋に泊まると100%の確率で霊をみた。5才違いのSの兄にこっそりと確認したが、Sの兄もSと昔一緒に寝てた時はみていたという。


この数年後に、実はSがとんでもない依り代体質であったことを知るのだが…それはまた別のお話。


(閑話休題)


そんな形でSの部屋に最初は恐れを抱いたが、されとて霊をみるといっても部屋の中に突然現れたりする訳ではなく、親父さんが何かをしていたのか、寝ている部屋の中には入って来なかったのでその内に私も慣れてしまった。


ある日のこと、何時ものように泊まりに行き、釣りやゲームを1日中楽しみ遊び疲れて寝た時に、ガチャガチャ、ギシッギシッという廊下の鳴る音で目が覚めた。


時計を確認すると2時半過ぎ。Sは隣で寝ていたので、Sの兄がシャワーでも浴びる(トイレは各部屋内にあるので)ために起きたのか思ったのだが、どうも様子がおかしかった。廊下の音は、何人もの人が歩いている様に耳に届いていた。


私は(またか…)と思いつつ、廊下の方を向いてみた。


廊下に通じる障子の向こう、月明かりが照らして影が生まれる。


それはまるで影絵のように


何人もの甲冑を身に付けた兵が列になり、奥に向かって歩いていた。



(こんなにいっぱいは初めてだな、レアだレア。)


そんな緩い感じでボンヤリみていたからか気づかなかった。

白無垢の、結婚式の花嫁の格好をした女性がいたのだ。





いつのまにか、私の真横に。





そのことに気が付いた瞬間に、私の肌はぶわっと鳥肌がたち、心臓が大きく跳び跳ねた。今まで部屋の中には現れなかった霊がいる。私はパニックに陥った。人間、本当に驚いた瞬間には声が出せないことを私はこの時初めて知った。


白無垢の女性も子どもがまさかこんな時間に起きているとは思わなかったのか、少し驚いた様子だった(そんな雰囲気を感じただけだけれど)そして申し訳なさそうにこちらに一度会釈をしてから、障子をスッと通り抜け、列の真ん中に加わっていった。


ドッドッドッという自分の速打ちの心臓の音がおさまって、虫の鳴き声だけが聴こえるようになった頃、霊の行進は全員奥に方に消えていた。


私は久しぶりの恐怖に大きく息を吐いた後に、隣で我関せずとスヤスヤと眠るSに軽い苛立ちを覚え、額に肉とマジックで落書きした後、ふて寝した。



次の日、キレながら洗面台で顔を洗うSを置いて、親父さんにこんなことがあったと昨夜の件を話してみた。


親父さんは私の体質を知っているので、ちゃかすことなく、話しを聞いてくれた。

親父さんはその白無垢の霊が私の真横に現れたと聞いた時に一瞬険しい顔をしたが、詳しく話すとその顔をいつもの表情に戻した。


親父さん曰く、部屋の中に現れたということは悪い霊ではない。

(余談だがSに取り憑いていた場合は別らしい、親父さんが一瞬険しい顔になったのはこれが原因。今回は違った。)


別邸の最奥の倉庫に霊道が重なっているので、そこに入る前の人達を見た可能性が高い。


前は霊道をずらすようにしていたが、最近Sの兄が倉庫にエロ本やビデオを隠すために色々動かしたので、効果が弱くなって大きいのも通るようになったのかもしれない。


とのことだった。






Sの兄は味噌汁を噴いていた。





あの後、親父さんが何かやったのか、Sの部屋にいても霊を見ることは少なくなった。


そうして俺もSも大人になり、Sは上京し、Sの兄が跡を継いだ。

あの別邸は親父さんの趣味の部屋となっているらしい。

だがたまにSが帰って来た時は、懐かしいのかあの部屋で寝ていると話していた。


Sが帰って来たときはまた霊が見えるのかも知れない。













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