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7-9 クリティカル・パス

 ハーズも、バーグも、そして勿論タスクも、用意した水を手に取る暇すら無い程に喋り続けていた。

 戦況が動くたびにタスクは分析図を進め、修正し、あるいは半分近くを消して新たに書き直し、その莫大な量の計算をし続けた。

 そして、戦場を妖精の遠見鏡で眺めていたアリスタから、待ちわびた報告が入る。


「軍師さまっ! 回遊作戦で残ってた敵を第4大隊がほとんどやっつけました!」


 同時にバーグへも連絡が入った。


「タスクさん。マクレラント隊長が戦線へ復帰しました。アトキンソン隊長は負傷するも健在とのことです」


 更にハーズへも。


「多角戦略隊、被害多数ですが健在。サーブリック隊長が魔導師隊のロシュさんを連れて戦線へ復帰しました」


 これでおよそ7割を攻略したことになる。


「創発戦略隊……アージリス隊は!?」


 数瞬を置いて、ハーズから返答が来る。


「健在です!」


 その声に、タスクは改めて分析図へと振り返った。

 ビジネスにおいても重視される、このアローダイヤグラム分析の目的は人材や資金を投入する最良の経路、すなわち『クリティカル・パス』の発見にある。


「タスクさん! 第3大隊、および魔導師隊より報告です! 右翼突破しました!!」


 そして、タスクの眼前、妖精の落書帳に光の線で記された改良型アローダイヤグラムもまた例外ではない。

 元いた世界での夢に向けた成功への道筋は断たれたタスクだったが、だが今度こそ、ここに文字通りの『必勝の道筋(クリティカル・パス)』が繋がった。


「第4大隊は速やかに最前線まで出てアージリス隊の援護だ。第3大隊は戦線右翼から、第1大隊は戦線左翼から、アージリス隊の後退を援護しろ」

「了解です。本陣より第4戦隊……」

「魔導師隊は属性を均等に三班へ分割。1班は中央戦線にて『かんばん作戦』を展開。残りはアージリス隊の援護に向かい、2班は全属性攻撃を一斉に詠唱。3班は10秒差で分割して詠唱を行い戦線を押し上げろ! 戦線を再構築でき次第『問題児作戦』だ。王都を取り戻せ!」

「了解。本陣より魔導師隊……」


 タスクの声にハーズとバーグは次々と指示を伝え、アリスタは遠くの友軍に精一杯の声援を送った。

 果たしてアリスタの声が届いたかは定かではないが、戦場からは盛大な雄叫びが響いてきた。


 あるいはそれは、全盛期には8万の軍勢を有したゴルトシュタインの歴史の中でも、もっとも大きな勝ち鬨だったかも知れない。


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