7-6 倅たち
そのときマクレラントの感じたそれは、あるいは走馬燈のようなものだったのかも知れない。
ゴブリン・ウォリアーの振るう斬岩剣の一閃が首へと届くかという瞬間、マクレラントは少しだけ冷静さを取り戻せた気がした。
同時に振るった自分の剣閃もよく見えた。
どちらが速いということもないが、たとえ頭を斬り飛ばされても、胴体だけでもとどめを刺せる自信はあった。
よちよちと歩く歳の頃から剣を振るい続けてきた体だ。頭など無くともそれくらいの仕事はしてくれるだろう。
事実、マクレラントの剣はゴブリン・ウォリアーの顔面を深くえぐり、返す一閃で深く目を斬り、最後に深く突き刺した。
そしてマクレラントの頭は、青く濁った返り血と赤い鮮血、その両方を滴らせた。
だがしかして、マクレラントの首はいまだ繋がっている。
ゴブリン・ウォリアーの剣撃は、戦盾を一刀両断して、だがそれでも、アトキンソンの屈強な前腕によって止められていた。
「ふざけんな、耄碌ジジイ……。アイツに続いてアンタが居なくなったら、誰が俺の相手をするんだよ……」
肉を斬られ、骨も断たれ、だがキャズムはそこで止まっていた。
「自分の隊はどうした馬鹿者……まったく、この国はどこを向いても……困った倅ばかりだのう」
そもそもこの男は、ラガードやマクレラントに勝ったことがないどころか、その辺の中堅剣士にもしょっちゅうに負けているというのに、いつも懲りずに剣士隊を訪ねてくる。
本当に困った男だと、マクレラントは目元を拭った。




