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死んでないおれの不確定な死亡説  作者: 提灯鮟鱇
第四章 カンクーンの決着
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第四十七話 白いワンピース

 赤尽くめを倒した翌日は気持ちのいい晴れだった。

 暢気な太陽の下、おれたちはのんびりと居住区に入った。


 奇襲を受けてもっと緊張感が高まるかと思いきや、そうでもなかった。

 どうせ大概の相手なら勝てるし、取り逃がしていた赤尽くめも倒した。

 それにジャノバスのトップもただの下級魔族だし、サイババの情報通りなら、もう敵はいない事になる。

 まあ依然としてジャノバスは存在しているが、彼らのメンバーに大陸最強と呼ばれるポアロイルに敵いそうなメンツはいないだろうというのはサイババの推測だ。

 確かにポアロイルの強さは異常だから、ジャノバスという金好きなヤツらしか集まらないような集団に、命を張ってまでおれ達を戦いたかる者はいないだろう。

 トミーに関しては、グモーザの報復が恐ろしくてジャノバス手つきの盗賊を呼び寄せたが、トミーが戦闘のコマを使い切った感がある。

 戦闘員がいなければ、ジャノバスはただの頭でっかちな組織である事に違いない。

 まあ、頭がデカいから政治的な側面では色々口出しは出来るみたいだが。


 おれ達は情報屋に依頼を済ませたので、約束の二日後、つまり明日までは状況は動かせない。

 出来る事と言えばジャノバスとの最終決戦に向けた準備をするだけだ。

 なのでおれ達は居住区に来て色々と買い出しをしていた。

 最初はみんなで一緒に居住区に入ったが、買い出しは主にモリスの矢の補充と、アカネの護身用の小型ボウガンを買うのみだ。

 それも最初に入った武器屋で全て揃ってしまった。

 さすがに都と言ったところか、品揃えは無いものを探す方が難しそうだった。


 その後、襲撃の心配はほぼ無いので、居住区内で三チームに分かれる運びとなった。

 昨日襲撃されたばかりのおれとしては、また散けて行動するのはどうにも不安でたまらなかったが、みんなに大丈夫と言われ渋々受け入れた。

 おれがあまりにもガクブルってたので、モリスがおれと一緒に行動すると申し出てくれた。

 おまけにアカネも着いて来てくれると言って、見えないバリアまでかけてくれた。

 バリアもあってモリスもいるなら安心だが。

 でもやっぱり怖いもんは怖いぜ……


「それじゃあ、後でここで落ち合おう」


 ソルダットが居住区のユニオンの前で宣言する。

 居住区は平民の住宅やユニオン、商業施設の立ち並ぶ地区だ。

 それぞれ必要なものを買いそろえ、適当に過ごしたらここに集合だ。


 ソルダットはジェフとガラクタを見に行くと言う。

 新しい魔道具の開発の為らしい。

 ホワイトとセレシアはカジノに遊びに行くと言う。

 ていうか、カジノあんのかよ。

 戦う前に遊ぶって、確かにあの二人は傑物だからそんなもんなんだろうが、一般人の感覚としてはどうもついていけない。


 おれはモリスと一緒にアカネの買い物に付き合う。

 モリスには悪いが、アカネと一緒ならちょっとだけお邪魔虫感があるのは否めない。

 だが、おれが奇襲にビビっている以上いてもらわなくては困る。

 それに、モリスだったらどこにいても、おれ達が何してるかなんてわかっちゃうだろうし、まあいいか。


「で、アカネさんは何買うんすか?」

「えーと、服と靴下が欲しいかな」


 そういえば、アカネはずっとセーラー服だ。

 同じ服を何着か持ってるみたいだけど、なんでそんなにセーラー服にこだわるんだろうか。

 靴下も黒いハイソックスばっかりだし。


 しかし、戦いの前に服買うって……リラックスしてるな。

 まあ、ウォーモルで敵の手駒はソルダットが殆ど片付けたし、昨日残りの残党も始末したし、いいか。

 旅続きでストレス溜まってただろうし。

 散財はストレス解消にもってこいだ。

 女の子はこうでなくちゃね。


「というか、なんでアカネさんって同じ服ばっかり買うんすか?」

「なんでって言われても、これが一番落ち着くんだよね」

「パジャマ以外全部セーラー服っすよね」

「まあね。なんだかんだ好きなのよ、この服」

「じゃあ今日もセーラー服買うんすか?」

「……そうね」


 モリスとアカネの会話を聞きながら、彼らの後ろに続いて散策を開始した。

 居住区は城外区と違って、道は綺麗で、行き交う人々も心なしか小綺麗な服装をしていた。

 通りにはオシャレなレストランやカフェが立ち並んでおり、佇まいもジェフ御用達のキャロッテとは一線を画していた。

 それらを遠目から眺めながら歩いていると、目の前には大きい建物が見えて来た。

 街をよく見ればこのような建物がそこら中に立ち並び、多くの人が出入りしている。


「あそこ見ていってもいい?」

「おう」


 アカネはおれに振り返って聞いて来たので、短く返す。

 中に入ると、そこはまるでデパートのようだった。

 建物内は大きく区切られており、仕切りごとに違ったインテリアとディスプレイがどれも洗練された様子で置いてあった。

 こう見ると、日本のデパートとなんら変わりない。

 変わってるのと言えば一階に化粧品売り場が無いところだろうか。

 それ以外は日本のデパートとほぼ一緒である。


「すげーな」

「やっぱ王都は違うっすね」


 おれとモリスが感心して周りを見渡していると、アカネは両手を胸の前で組んで頬を赤くしていた。

 彼女の目はキラキラを輝いてる。


「初めて来たけど、こんなにすごいなんて!」


 その後、アカネはじっくり時間を使ってテナント一軒一軒を見て回り、全七階建てのフロアの隅から隅まで見尽くした。

 結局、服は買わないで小さな髪留めを一つ買っただけだった。

 デパートの外に出る頃には、おれとモリスはヘトヘトだったが、アカネは逆にイキイキとしている。

 ああ、凄いな女子って……


「じゃあ次行こう!」とアカネから驚愕の一言が飛び出したところで、手元のダウジングランプが光りだした。

 そろそろ、集合の時間だ。


「えー、もっと見たいな」


 アカネは珍しくワガママを言った。

 彼女がこんなことを言うなんて本当に珍しい。

 いつもはしっかり者だからな。


「ならオレが行って伝えて来るっす」

「いいのか?」


 モリスがいないと不安だから、おれはとしては一緒に行きたいが。


「どうせ昼飯食いに行くとか言って、またジェフっちのあそこに行く羽目になるんすよ。

 もしなんかあったら竜骨で地面殴るなりしてデカい音出してください。そうすればどこにいるかわかるんで」


 まあ確かにそうか。

 モリス並みの地獄耳なら、例え城外区に戻ってもデカい音がしたら聞こえるだろうし、位置もわかるか。

 それに、アカネからバリアもかけてもらったし、万が一昨日みたいな事があっても、一撃目はやり過ごせるだろう。

 もしかしたらモリスがおれに気を使ってくれたのかも知れない。

 だとしたら申し訳なさと、気恥ずかしさでいっぱいだ。


「わかった。それじゃみんなにヨロシク」

「うっす!」


 モリスは片手を上げて去って行った。

 さて、ここからアカネとツーショットのわけだが。

 どうしようか。


「じゃあお腹も減ったし、私たちもご飯食べよっか?」

「お、おう」


 ここからどうするか悩んでいたら、アカネの方から食事の提案。

 まあ確かにそれが普通か。

 きっと飯食った後もデパート巡りは続くんだろうな。

 そしたらアカネに主導権を握られっぱなしだが、問題は無い。

 アカネと二人でこうしてデートみたいなこともしたことなかったし。

 デパート巡りは正直かなり疲れたが、嫌じゃなかった。

 むしろアカネが真剣に服を見たり、笑顔で服を当てたりしている姿が見れて幸せな気分になった。

 旅では見れない彼女の表情に、なんだかおれも癒された気もする。


 おれ、やっぱり、アカネの事好きなのか……?

 生前は意識していなかったが、もしかしたらそうなのかもしれない。

 だとしたらおれはどうすればいいのか。

 いや、今は考えるのをやめよう。

 まずはジャノバスを潰して平穏を勝ち取ってからだ。

 それから悩んだって遅くない。


 おれは漠然とした悩みをほっぽり出し、アカネの目に留まったレストランに入った。

 適当に食事をして店を出て、デパートを巡って、アカネが時折「似合う?」って聞いてくるのに「すごく」と答え、徐々に時間が過ぎて行く。

 今日はこのまま髪飾りだけ買って終りかと思われた矢先、三軒目のデパートの三階で、アカネは一つのマネキンを見て動きを止めた。


「これ、どうかな?」

「いいんじゃない?」


 白い綺麗なワンピース。

 袖は短く、ピンとした襟がついていて、スカートの長さは脛の辺りまである。

 アカネがこれのどこに心を奪われたのかわからないが、おれはいつも通り適当な返事をした。

 だって、おれが「いい」って言っても「悪い」と言ってもアカネは買わないんだから。

 彼女が買うのはセーラー服だけだ。

 ゲートワールドに来てから今まで彼女はすっとセーラー服だし、服を見るのもただのウィンドウショッピング的な眺めて楽しむだけだ。

 それで彼女は満足してるみたいだし、今日の様子を見ても別段服が欲しそうな様子は無かった。


「似合うかなあ?」


 ここで気がついた。

 ちょっと様子が違う。

 なんか真剣に悩んでいるようだった。


「シゲルはこういうのどう思う?」


 彼女がおれに振り向くと、銀色のショートカットがふわりと揺れた。

 表情は心なしか不安そうな顔をしている。

 それを見ると適当な返事をしちゃいけない気がした。


「おれは……セーラー服も好きだけど、こういうのもいいと思うな」


 よく考えて発言したつもりだが、声に出して言ってみると、なんだか当たり障りの無い返事になってしまった。

 アカネは俯き加減で少し考えてから、顔を上げた。

 その顔は少し赤らいでる気がした。


「こういうのさ、私が着ても……変じゃない、かな?」


 彼女はおれに目を合わせずに聞いた。

 欲しいのか、この服?

 セーラー服しか着ない彼女が、どうしたんだろう。


 もしかしたら本当はこういう服が着たかったのか?

 いつもセーラー服を着ているから、キッカケがなくて着たくても着れなかったのかもしれない。

 アカネならあり得る。

 彼女はキッカケがないと、新しい事が出来ないタイプだったな。

 きっとそうだ。

 生前の彼女を知っているので、おれは彼女がセーラー服ばかり着ている理由がわかった。

 

 彼女は本当はいろんな服が着たかったんだろう。

 デパートをこんなに楽しそうに巡ってあれこれ見て、こんなにウキウキしてたんだ。

 そう考えると今日のデパート巡りも彼女なりのキッカケが欲しかったのかも知れない。

 きっとオシャレがしたかったんだろうな。

 でもキッカケがなくて着れなかったんだろう。


 それならおれがキッカケを作ってやればいい。

 推して推して推しまくってやればいい。

 そしたら彼女だって「シゲルがどうしても買えって言ったから」という言い訳が出来る。

 言い訳があれば、人は諦めがつく。

 このワンピースを諦めて・・・買ったら、それがキッカケになる。

 それならおれは彼女の気持ちを後押ししてやりたい。


「全然変じゃない。むしろ凄く似合うと思う!」

「そうかなあ」

「絶対似合う! 一回着てみろよ」

「え?」

「店員さーん、これ試着できますか?」

「え、ちょっと!」


 おれはこれまでに無いくらい一気に捲し立てて試着を薦める。

 多少強引だが、このくらいでいい。

 どうせ着るだけならタダだし、着たら彼女も踏ん切りがつくだろう。

 金もあるし、一着二着買ったところでポアロイル財政は傾かない。


「試着なんてしなくてもいいって! 聞いてみただけだよ」

「着てみろよ。これ凄く似合うと思うぞ?」

「そ、そうかな?」

「ああ! これ着たらもっと可愛くなるに違いない!」


 アカネが真っ赤になった。

 あれ? どうした?

 この間のジェフのようでもあり、泣きそうな様子でもあった。

 すこしだけ戸惑った。


「こちらのワンピースでしょうか?」


 若くて美人な店員さんがやって来たので、とりあえず試着をお願いする。

 試着室は店の奥の方にあったので、店員さんについて行きカーテンのかかった個室の前にやって来た。

 アカネの顔はまだ赤かった。


「終わったら教えろよ」

「うん」

「おれ店の中見てるな」

「うん」


 俯き加減のまま、アカネは試着室のカーテンをサッと引いた。

 彼女の動作は不機嫌なようにも見えた。

 おれは一人になったので、さっきのおさらいを始めることにした。


 なんとか普通にやり過ごしたが、おれマズい事言ったかな?

 アカネは試着室に入る時も、無愛想に返事をしただけだった。

 もしかしておれの読みが外れたか?

 よく考えてみると、おれは前世の記憶に頼り過ぎてた。

 ゲートワールドで後天的に変わった部分があったかも知れないのに、その可能性を全く配慮していなかった。

 本当はただウィンドショッピングを楽しみたいだけだったとか?

 もしくはセーラー服に特別な思い入れがあったとか?

 

 もしそうだとしたら、おれの行動はとんだありがた迷惑だ。

 いや、ありがたくなんてない。ただの迷惑。


 うわーこれはやらかした可能性が高いぞ……!

 うわーうわーうわーうわー……

 もし彼女が試着なんてしたくなかったら、おれはかなりウザいことしてることになる。


 頭の中のおさらいの結果、おれはかなりウザいヤツという結論がはじき出された。

 店の中を見てると言ったにも関わらずそんな勇気は無くなり、ただ試着室の前で頭を抱えて悶絶していた。

 アカネが出て来たら謝ろう。

 謝っても彼女の気分は晴れる事はないと思うが、そうせずにはいられない。

 その時、試着室のカーテンがサッと開いた。


 よし、先手をかけて謝ろう。

 おれが勢いよく振り向き「アカネ、本当に……」と言いかけたところで、おれの時間はストップした。


「に、似合うかな?」

「……」


 そこには頬を赤く染めて、少しだけ恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかむアカネがいた。

 袖口とスカートからのぞく彼女の四肢はすらっと細く、白く、美しかった。

 清楚な雰囲気をたたえたこの服は、彼女にこの上なく似合っていた。

 その姿に見とれて、謝ろうとしていた事が、すっかりと頭から抜け落ちていた。


「ねえ、聞いてる?」

「……ああ、すごく、綺麗だ」


 多分おれは真顔で答えたと思う。

 だって、彼女に見とれてしまって、笑顔を作る事なんて忘れてしまったんだから。


「ほ、本当?」

「……うん」


 すると彼女は真っ赤な顔をしたままカーテンをサッと閉めた。

 おれは徐々に再起動して行く頭の中で、おれは間違ってなかった思った。

 あんなに可愛いアカネが見れたんだから、多少ウザくてもよかったんだ。

 アイツ、少し嬉しそうだったし。

 これでいいキッカケになったら、おれはそれで十分だ。


「いかがでしょうか?」

「これ、決まりでお願いします」

「ありがとうございます」


 アカネが試着室から出たところで店員さんがやって来て、そのまま会計を支払い店を出た。

 まだ上の階を見てないが、アカネはもうたくさんと言ってデパートを出た。

 結果的にはいいキッカケになったのだが、おれはすこし強引すぎた誘導を謝る事にした。

 横を歩くアカネは満足げにるんるんとしてるが、とりあえず謝っておこう。


「さっきはごめんな」


 重くならないように、明るい感じでサラッと言った。

 それを受けて、アカネはぽかんとして「何が?」と小首を傾げた。


「いや、さっきは強引だっただろ?」

「あ、そういえば確かに強引だったね」

「だからさ、嫌だったかなって」


 アカネはこの世界に来て七年になる。

 いくら見かけが変わらないといえど、七年の月日があれば人は大なり小なり変わるものもある。

 ジェフみたいに三十年たっても精神年齢が変わらなくたって、性格的な変化はあるんだろうし。


「聞いてもいい?」


 アカネが先回りして、おれの目の前に立った。

 じっと目を見られてすこし気恥ずかしい。


「やっぱりシゲルは魂の記憶があるから、私の事よくわかってるの?」


 彼女から発せられた質問は、彼女が意図して避けてるように思われたおれとの過去の話だった。

 この際、なんでおれがあんなに強引だったか話してしまうか。


 おれはさっきの試着を薦めるまでの一連の考えを全て話した。

 アカネはキッカケがないと中々新しい事が出来ない性格で、おれはそれを知ってたこと。

 だから強引にでも着てもらって彼女のキッカケを作ってやりたかったこと。

 もしかしたらアカネは別に欲しくなかったんじゃないかと思ったこと。

 でも間違えていなかったこと。

 話し終わるとなんだかすっきりして、肩が軽くなった気がした。


「シゲルは私より私の事知ってるみたい」

「そりゃおれたち幼馴染だし一緒に育ったようなもんだからな」


 そこで一呼吸置いて、おれは続けた。


「でもわかってるんだ。アカネは自分の過去の事は知らないだろ?

 だからアカネにとって今の自分が等身大の自分で、それが全てだ。この世界で過ごした七年がお前のすべて。

 もちろん、今のアカネはおれの知ってるじゃないってわかってるし、おれが過去に重ねてお前を見るのは失礼だってのもわかってる。

 だから、おれもこれからは気をつける。ごめんな」


 そう。アカネと茜はどう見ても同一人物である事は疑いようのない事実。

 でも、彼女には過去の記憶がない。

 つまり、彼女の過去は彼女にとって他人事のようなもの。

 だから今の彼女に過去を重ねるのは、彼女にとって迷惑であるに違いない。

 するとアカネは少し照れたような顔をしてほっぺを掻いた。


「最初は少し気持ち悪かったの」


 ああ、やっぱりな。

 予想はしていたが、直接言われるとグサッときた。


「いきなり出現したばかりの人が私の事知ってるなんて」


 確かにそうだよな。

 全く面識のない人が、自分の個人情報を知り尽くしてたら気持ち悪いのは当然だ。


「でもね、シゲルがその記憶のせいで馴染めなかったり悩んでる姿とか見て思ったの。

 きっとシゲルは、欲しくて記憶を持っているわけじゃないって。

 それから一生懸命訓練したりして、ポアロイルに馴染もうとしてるところを見て、なんかね、凄いなって、思ったよ。

 それからはあまり気にならなくなったし、一緒にいて楽しいし。

 仲直りした時だって、シゲルが最初にキッカケを作ってくれたし、敬語の時もそう。

 そういうのは過去の記憶のせいなのかなって考えたら、シゲルが羨ましくなっちゃった」


 そう言いながら笑う彼女にまたおれの心臓が跳ねた。


「もしよかったら、私の昔の話、聞かせて?」


 そして、おれ、多分こいつの事好きなんだなと思った。

 何の根拠も理由もない。

 ただ、何年も見て来たのに一目惚れしたようなこの感覚。

 そして、彼女の笑顔や仕草に自然と笑顔になるこの事実。

 どこが好きでどこに惹かれるのかなんてわからないけど。

 でも漠然とこの笑顔を守って行きたいって思えた。


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