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閑話 エミリーの思い

私には三個上のお姉ちゃんがいる。

私が今十歳だから十三歳だ。

それなのにお姉ちゃんは働いている。

私たちを養うためだ。


私たちというのは孤児院がつぶれた時にいた子たちで、

お姉ちゃんを抜いて十四人になる。

最初は十六人いたんだけど、赤ちゃんだったから病気にかかってそれでなにもできなくて死んじゃった。



二年前。

孤児院がつぶれた時私たちは奴隷として売られかけていたのだ。

それをお姉ちゃんが聴いてきて孤児院のみんなで夜逃げしたんだ。

最初のころは全然うまくいかなかった。

お姉ちゃんはその時も働いていたけどお金は全然足りなくてみんなひもじい思いをしてた。

でも誰も文句は言わなかった。

皆お姉ちゃんがすっごくがんばってるってことがよくわかってたから。



変わったのはお姉ちゃんが十二歳になった時だった。


お姉ちゃんが大けがをして帰ってきたときだった。

私はあわてた。

だって私たちはお姉ちゃんに養ってもらっているから。

だからお姉ちゃんが死んじゃったら私たちは死ぬしかないから。

そうやって心配してる横でチビたちはお姉ちゃんのことを純粋に心配してた。


その時私は自分に嫌悪感を感じた。

お姉ちゃんが死にかけてるのに私は自分達の、いや自分の心配をしてたのだ。


だから私は謝った。

私が思ったことも全部打ち明けて。

お姉ちゃんに軽蔑されるかもと思ってびくびくしてたけどお姉ちゃんは私の頭を撫でて許してくれた。

それから幸いお姉ちゃんは快方に向かって行った。



そして仕事に出かけて次に帰ってきたとき大金とは言えないけど結構な量のお金を持ってきたのだ。

今までとは比べ物にならないくらいの。

多分私の言葉がお姉ちゃんに責任感を持たせたんだと思う。

お姉ちゃんは自分が死ねば私たちも死ぬっていうことを自覚したんだろう。

私は私の言葉のせいでお姉ちゃんが無理をしてるんじゃないかと心配だ。


それからお姉ちゃんはひたすらに頑張って働いていた。

私たちも働こうかと言ったけど、

それより女子は読み書きや計算そして礼儀作法の勉強、

男子は読み書きと戦闘の訓練をしといてと言って決して働かせようとしない。


確かに将来的に職について働く場合にはそれらは必要だろうけど今のままだとお姉ちゃんの負担が多すぎると思うんだけど。

そのたびに


「いやいや甘えられるのも私にとってはうれしいんだよ。

 だからじゃんじゃん甘えちゃってね。」

と満面の笑みで言ったり

「家族なんだからいいよ。

 家族には甘えるものでしょう。それとも私とは家族いや?」

と悲しそうに言ってくるの。

そんなの断れるはずないじゃない。



それでお姉ちゃんは今日も頑張って働いてきて結構なお金を持ってきた。

この頃はお姉ちゃんががんばるからたくわえすらでき始めている。

でも心配でもある。

私たちが自立できるようになったらお姉ちゃんが消えちゃうんじゃないかって。

ううん、そんなことないっていうのはわかってる。

だけど私たちが早く自立できるようにってがんばってるお姉ちゃんを見るとそう思ってしまう。


その思いがついに爆発してお姉ちゃんに添い寝を頼んじゃった。

お姉ちゃんの体は私と大きさはそこまで変わらないのになんだか温かくてとっても大きく感じた。

それですっごく安心して眠れた。


そのおかげというかせいというか翌朝は寝坊しちゃった。

しかも家事はお姉ちゃんがしちゃってるし。起こしてくれたらよかったのに。

お姉ちゃんに家事をさせちゃったことを謝るとお姉ちゃんはいつものごとく


「いやいや甘えられるのも私にとってはうれしいんだよ。

 だからじゃんじゃん甘えちゃってね。」

とか

「家族なんだからいいよ。

 家族には甘えるものでしょう。それとも私とは家族いや?」


とか言ってごまかしてきた。そうごまかしてきたのだ。

さすがに何回も言われていればわかる。

それでも一緒に長くいるからお姉ちゃんが本心で言ってることもわかるので断ることはできない。







うー、私も早く大きくなって一人前に働けるようになりたい。


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