錫杖の音
ちょっと怖いと感じた体験を、文章を久し振りに書く練習として書かせていただきます。
それは、私がまだ小学校低学年のころ、上の二人の姉と布団を並べて寝ていたころの話です。隣の部屋にはフスマを開けたままで両親が寝ていて、子供が安心して眠るには十分な環境でした。
寝つきが悪い私は、いつも家族の寝息を聞きながら、ぼーっと天井を見ている時間があり、その音はそうした夜に聞こえてきました。
カツッ
シャラン
カツッ
シャラン
音はとても近く、頭上の窓の、すぐ外から聞こえてきます。
カツッ
シャラン
カツッ
シャラン
行ったり来たりするその音は、決して私の頭上から離れていきません。私は布団をかぶることもできずに固まります。
カツッ
シャラン
カツッ
シャラン
音から、イメージが湧いてきます。三蔵法師のような白い法衣、そして金の輪の沢山ついた錫杖の姿。
外の何かはそれで地面を突き続けていて、私は怖がりながらも眠りにつく、そうしたことが何度かありました。
ですが、怖い以外に害はなく、大人になり引っ越しをすれば、その音が聞こえてくることも無くなりました。
聞こえなくなったと思っていました。
去年でしょうか?
カツッ
シャラン
この音がまた聞こえたのは
カツッ
シャラン
昔は一階に住んでいましたが、今は二階に住んでいるからでしょうか?音は昔よりも少し遠くに聞こえました。
カツッ
シャラン
カツッ
シャラン
カツッ
シャラン
カツッ
シャラン……
音はしばらくとどまり、やがて消えていきました。
実話なので続きはありません。