#01 通知の余韻
高校生編の短編連作です。
明日1/19より、毎日20時に更新していきます。(全11話)
初日は #01〜#03 を同時公開します。
#01 通知の余韻
2026/1/19 19:42
熱めのお湯で身体がゆるむ。
「事務員」からの解放。
…キュッ、キュッ…
バスルームから出て、眼鏡をかけなおす。
洗面台に伏せていたスマホから、薄い光が漏れていた。
画面には、見慣れない差出人の名前。
『2026年 霞ノ浦高校 同窓会のお知らせ』
水が滴る音が、静かに響く。
指を置いたまま、しばらく動かなかった。
淡いオレンジ色の背景に、集合写真の小さなサムネイルが並んでいる。誰が写っているのか、判別はつかない。
指先が、かすかに冷えた。
「……同窓会」
部屋の空気がわずかに震える。
その揺れが、遠い記憶の層を薄く叩く。
放課後の音楽室の匂い。
金属の鍵盤に触れたときの、ひやりとした感触。フルートの息が、まっすぐ伸びていく音。
誰かの視線が集まる気配。
褒められた瞬間、空気が少し乱れた。
意味は分からないのに、身体だけが覚えている揺れ。
陽子はスマホを伏せた。画面の光が消えると、部屋の温度が戻る。
「……」
言葉は出ない。
ただ、胸の奥に残った薄い余韻だけが、ゆっくりと沈んでいった。
次話:#02:春風の書店




