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「これはこれは。ケイン様! よくぞお越しくださいました!」
「うむ。世話になるぞ」
「本日は、どのようなご用向きでございましょうか?」
僕の方が先客だぞ。
まともな接客をしてるな。やっぱり貴族なのだろうか。
「この剣が刃こぼれしてな。そろそろ下取りに出そうかと」
「おお! それでは新調なさるのですね。かしこまりました」
「400万でどうだ?」
刃渡り70ほどの重量感のある剣だ。
下取りで、400万って。なにで出来てるんだよ。剣の素材が謎過ぎるな。
「400万ですか、悪くないですね」
余計な口を挟んだら、ぶった斬られそうだな。
すると、僕の存在に気付いた様で。
ケイン様が、僕を見て。
「なんだ、先客が居たのか? またにするか」
鼻デカ店員より、まともじゃないか。
しかし、店員がこう伝えた。
「ケイン様、害虫が目に止まるとは! 新しい魔眼でも入手されたのですか?」
「うん? そんなものは持っていないが……」
おい、その害虫って。まさか僕のことじゃないよな。
ケインの視線は確かに僕を捉えていた。その解釈しかないよな。
散々無視されて、今度は人前で。
僕は悔しさのあまり──。
「見かけ倒しのゴミ剣が400万とか、道楽にも程があんだろ──」
「ん、なんだ坊主?」
「ケイン様、害虫などとお話をされますと家訓を汚すことになりますよ」
あまりの悔しさに。
「……金の使い方も、剣の使い方も、三流だな」
さらに、わざわざ言わなくてもいいことが口をついて出てしまった。
鼻デカの店員がはじめて視線をこちらに向けて、一瞬、三日月のように目を細めてほくそ笑んだのを垣間見せた。
くそっ!
最初から、それが狙いだったのか。
「その言葉はもしかして俺に向けたのか、坊主?」
ケインは僕に鋭い怒りの眼光を向けた。
鼻デカ店員が無視を続けるため、つい無縁のケインに向けてしまった。
もう、引っ込みをつけられないかも。
おわり。




