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「お客様? いま何とおっしゃいましたか?」



 僕は客だぞ。

 僕の足はやっぱり店屋に向かったのだ。

 所持金はたったの5万ぽっちだ。


 ギルド長のガンズが店屋に行けば何かもらえるかもしれないって。

 そう言ったから信じて、ここまで来たというのに。

 どうせなら高級な店の方がいいだろうと。


 貴族御用達の武器屋に来て見たのだが。



「ですから──なにかくださいませんか?」

「お客様、いったいなにをお求めでしょうか?」

「強い武器がほしいんだ、軽くて丈夫で特別安価のやつな。できたら無料がいい」



 僕は、そんなに厚かましい注文をしているんだろうか。会話はあるが視線はガン無視だ。

 僕の話を聞く様子は一切ない。

 そもそも入店してから一切、視線を合わせてこない。

 ほかに客はいない。

 客に接する態度がなっていないぞ。ここは本当に一流店か。



「お見受けしたところ、冒険初心者のようですが。坊ちゃんにお似合いの剣なら下賤の武器屋に行かれた方が良いものが手に入るかと存じますが」



 お見受けといったか。いつ僕のことを視たんだよ。


 下賤の店?

 鼻の穴のでっかい長身の店主、あんたも下賤の出だろ。

 鼻毛の手入れをしろ、見下しやがって。ちょー悔しい。


 なおも、視線をそらしたまま店主の口だけが動き続ける。



「お安いものでも、うちは500万はくだらない代物ばかりでございます。手が届きますでしょうか?」



 それにはさすがに閉口する。

 手が届くわけがない。

 たぶん、薄ら笑みを浮かべているのだろうが鼻の穴しか見せてくれない。

 身長差の問題だけではないな。

 それより無料でくれと言ったことを伝え直すと。



「え? いま何とおっしゃいましたか?」



 そういって鼻の穴をかっぽじるのだ。

 普通、耳だろ。耳の穴を掃除しろ。


 僕は客だぞ。

 そのセリフ、もう8回目だぞ。

 なんだこのループは。同じセリフばかり繰り返すボケ店主め。


 おっさんも木の枝で打ち据えて、討伐部位を抜き取るぞ。

 うそだけどな。

 腹立つな、チクショウ。


 その時だった!

 この会話の無限ループの流れを変える者が来店したのだ。

 もちろん貴族の若様のような出で立ちだ。ここは御用達ショップだからな。




 

 おわり。




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