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そういや──冒険者にだけは成りたくなくて武器屋を覗いたことがあった。
そこに「スライム棒」という武器を見つけた記憶がある。
スライムなら棒で叩くのが一番早いよ、みたいな。
買うともいってない客に横から解説をごり押してくる店員。
冒険用武器量販店のあるあるな。
「僕が人生で、手にしたものといえば、ほうきかモップだけだ」
掃除道具だ。しかも掃除のためじゃなく、暇つぶしのためにだ。
パットパットしないゴルフ。それもどうでもいい。
その長物は両手が塞がってしまう。
木の枝が片手にいい具合に納まる。
この感触はとても良さそうだ。
「一応、もらっておくか。何もないよりマシだ。この拾得物、まさか高値で売れないよな。落ちてるわけないよな、そんなもん」
見るからにただの木の枝。めずらしくも何ともない代物。普通にゴミ。
何もないよりはマシという、ただそれだけだ。
だが、草には通用しない。
そして戦う気はないが、追っ払うときに使えるはず……多分。
傷薬さえ貴重で買えない。
世の中の物価高がえぐいのはギルドの存続のせい。
安くて、冒険の準備が簡単だと金持ちがそれらを買い占めて転売が始まる。
その防止対策みたい。まじで迷惑です。
これは無傷で帰らなければトラウマになる。
軽い手当はギルドがしてくれるらしいが。
また笑われるにちがいない。
カッコ悪い。見られたくないよ。
物語なら、だれもが読み飛ばすような、どうでもいいシーンだ。
社会人初日の下積みライフ。
情けない姿だから是非とも読み飛ばしてくれると有難い。
おわり




