おわりの匂いは夏を連れ去る
夏と秋の狭間で薫る匂い。
夏が終わる。終わってしまう。
だけど僕は、君に「好き」と伝えた夏に足を取られて進めないでいる。
叶わなくていいや、なんて覚悟はしてたつもりだけど、初恋の亡霊は僕に絡みついて忘れることを許してくれない。
振り払うこともできないくらい弱い僕を、君は笑ってくれるだろうか。
もし間違わなかった世界なら、君は手を取ってくれたのかな。
夏が終わっても、君と一緒に進めたのかな。
僕はただ、君との儚く煌めく平凡な時間が欲しかった。
それでも君はずっと届かない場所にいる。
君のこともよく知らないで掴もうだなんて、身の程知らずだ。
分かっていても伝えたのは、君の優しさに触れて抑えきれなくなったからなんだ。
また何処かで会えたら何を言えばいいのだろう。
まだ分からないけど、きっと僕の「好き」は無かったことにできない。
君の笑顔が心を満たす。
君の弱さに気付けなかった僕を悔やむ。
君の優しさを心に刻む。
君への想いを押し付けていた僕の愚かさを憎む。
許されるなら、一度だけでも君の手を握って歩きたいけど。
過ぎた初恋は今更目覚めることは無い。
今年も、夏が終わる。
君に囚われた僕を置いていく。
淡い碧の空に、おわりの寂しい匂いを残して。
ひとりの恋が終わらなくても今はそれで良い。
あの夏から進めないとしても、君への「好き」は大切な気持ちだから。
僕は今日も、時の止まった夏を頼りに息をするための希望を探す。