表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夜の万博、ひとときの灯り

作者: ごはん

電車が止まり、会場を後にできない人々が大勢いた。

本来なら不安や苛立ちがあふれてもおかしくない状況――それでも、大阪万博の夜は不思議な空気に包まれていた。


スタッフがパビリオンの扉を開けて、「よかったら中で休んでください」と声をかける。

照明が少し落とされた展示空間は、昼間の賑やかさとは違い、静かに光を放ち、人々をやさしく迎え入れた。


「せっかくなので、夜だけの特別展示をどうぞ」

そう言ってスタッフは、普段は見られない裏側を案内してくれる。

思わず拍手が起こり、誰もが子どものように目を輝かせていた。


フォトスポットも即席で用意され、そこでは見知らぬ人同士が肩を並べ、笑い合いながら写真を撮り合った。

売店にはビールが並び、自然と小さな宴が始まる。

「こんな経験、なかなかできへんなぁ」

「明日、会社で話したら信じてもらえるかな」


笑い声とグラスの音が重なり、深夜のパビリオンはまるで小さな街のようになった。


やがて床に敷かれたマットに横たわる人々。

展示の光に照らされながら、静かな寝息が重なっていく。


――電車が止まった夜。

不便さの中に、人の優しさと温もりが溢れていた。

きっと誰もが、忘れられない万博の一夜を胸に刻んだのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ