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高家の晒首  作者: 西季幽司
第四章「愛の形」
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二人の関係③

 正憲との会談を終え、軽く週末の放送の打ち合わせをしてから、圭亮はマンションに戻って行った。別れたばかりなのに、圭亮から電話があった。

「西脇さん、どうしましょう」と泣きそうな声で言う。

 明日、須磨が圭亮のマンションを訪れると言う。

 圭亮の推理を参考に事件が解決すると、須磨はわざわざ捜査結果を圭亮に報告に来てくれる。捜査協力に対する御礼のつもりだろう。

「ああ~良かったですね。しっかり聞いておいてください」と西脇が言うと、「僕一人だと不安なので、西脇さんも同席してもらえませんか?」と言う。

「それが、残念ですが、明日は月に一度の宮崎ちゃんの地方出張ロケについて行くことになっています。今回は小豆島に行きますので、今晩から前ノリです」

 サタデー・ホットラインの生活情報のコーナーで月に一度、宮崎に地方へ出張してもらい、レポートをしてもらっている。宮崎の強い希望から実現したコーナーだ。忙しい宮崎は出張もままならない。番組のコーナーとして、あちこち行ってみたいのだろう。

「そ、そうですか・・・」

「まあ、頑張ってください。別に須磨さん、先生を取って食ったりしませんから」

「あはは」と笑って電話を切った。圭亮の泣き顔が目に浮かぶようだ。

 翌日、くたくたになって東京に戻って来ると、また圭亮から電話があった。

「詳しいことは明日、話します。明日、午前中、サクラ・テレビに行きますので、よろしくお願いします」ということだった。

 圭亮のことだ。朝からおしかけてくるはずだ。

「面倒だな。また泊るか」結局、家には帰らずにテレビ局に泊ることにした。

 翌朝、毎朝、定時に出社してくる寺井が「西脇さん。またお泊りですか? 下で会ったので、今日は鬼牟田先生と一緒に来ました」と圭亮を連れて出社して来た。

「夜討ち朝駆けは先生の十八番ですからね」と嫌味を言うと、圭亮は「夜は苦手ですよ~朝は得意ですけど~」といけしゃあしゃあと答えた。

「はいはい。じゃあ、昨日の話を聞きましょうか」と圭亮を会議室に誘う。「あっ、後でコーヒーをお持ちします」と寺井が二人の背中に声をかけた。

 圭亮が長い体を折り畳んで、椅子に腰を降ろしたのを見届けて、「さて、先生。須磨さんから聞いた話をなるべく詳しく教えてください」と西脇が口火を切った。

「はい。大丈夫です。記憶力は良い方なので。昨日、午前十時丁度に須磨さんがうちを訪ねて来ました。須磨さんは時計みたいな正確で、十時を言えば十時丁度にやって来ます」と圭亮の話が始まった。

 須磨は一切、無駄話をしない。マンションのソファーに腰を降ろすなり話し出した。

「先ずは中山竜也と品川高房の関係からお話しましょう。二人は、まあ、その・・・」と言った後、珍しく口籠った。そして、須磨の口から衝撃的な発言が飛び出した。

「恋人関係にありましたと須磨さんから聞きました」

「ゲイだったのですか?」

「そのようです。単なる仕事上の関係だけではなかったようです」

「それで・・・」

 そうなると一連の事件の動機がはっきりしてくる。

 中山は高房との関係について、「僕は高房のことを愛していましたし、高房も同じ気持ちだったはずです」と言う言い方をしているようだ。何時の頃からか恋人同士となった二人は、人目を忍んで逢瀬を重ねていた。

 息子がゲイであることを知らなかった高憲は、強引に翔子と結婚させた。だが、当然のように高房と翔子との関係は結婚直後に破綻してしまった。飯尾はそんな翔子に近づいた。翔子の不倫は高房には都合が良かっただけだったのかもしれない。

 そして、高房が自宅で謎の死を遂げる。

「彼が自殺するなんてあり得ない。だって、あの頃、彼はゲイであることをカミングアウトし、僕らの関係を公にしょうと考えていたのですから――」中山はそう主張した。

 高房が叔母の正子に「そろそろ、はっきりさせなければならないのかもしれない」と言った言葉の意味は、翔子との離婚のことではなく、自分がゲイであることを公表することだったのだ。

 高房の事件は、警察で一通り捜査をしたが、部屋が密室であったこと、翔子一人では犯行が不可能なこと、外部から人が侵入した形跡がなかったことから、自殺として処理された。

 だが、中山は警察の結論に納得が行かなかった。当然のように、高房が死亡した時に屋敷にいた翔子を疑った。翔子一人では高房の遺体を天井から吊るすことは難しい。となると共犯者がいたはずだ。翔子と飯尾の関係は知っていたし、高房亡き後、社内の動きを見ていると、飯尾こそ、共犯者だったのではないかという疑いが強まるばかりだった。

 中山は高房から秘密の抜け道があること、屋敷から防犯カメラに映らずに正門まで行くことが出来ることを聞いていた。高房が子供の頃の思い出として中山に話していた。中山が知っていたとしたら、翔子にも話したかもしれない。そして、翔子がそれを飯尾に伝えていたとしたら。いや、飯尾は屋敷に忍んで来ていた。知っていたと考えて間違いないはずだ。

「屋敷には防犯カメラが設置されていますね。あの日、防犯カメラの映像に、何も映っていなかったのですか?」と安井を問い詰めた。

「すいません!私は・・・とんでもない事をしてしまいました」安井は青い顔で中山に打ち明けた。裏庭の防犯カメラの映像に飯尾の姿が映っていたら、直ぐに削除するように高房から厳命されていた。

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