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高家の晒首  作者: 西季幽司
第四章「愛の形」
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二人の関係①

――品川正憲が鬼牟田圭亮に会いたがっている。

 寺井にそう言われた。

 曲がりなりにも、正憲は芸能界の人間だ。伝手を伝って西脇に辿りついたようだ。実際、宮崎は伝手を使って正憲がギターを巡って飯尾とトラブルになっていた噂を聞き込んできた。

「先生に会って、どうしたいんだろう?」と聞くと、「それは、会ってみないと分かりません」という返事だった。

 そういうところが、西脇が寺井を「気の抜けたビールだ」と評する所以だ。伝言ゲームじゃないのだから、少しは西脇や圭亮の気を引く情報を付加してもらいたいものだ。

 圭亮に確かめると、「ああ、良いですね~僕も話があります」という返事だった。

 そこで正憲との会談を設定することになった。

 あの日、中山が犯行を自白した後、竹村たちは「詳しいことは署の方でお伺いします」と中山を車に乗せて連れ去ってしまった。

 西脇と圭亮は大森海岸に残された。

 その後、捜査の進捗状況について、何の発表もなかったが、昨日になって、飯尾連傑、品川翔子殺害の犯人として中山竜也を逮捕した――という警察発表があった。

 動機など、詳しい状況については捜査中だということで、何も分からない。あれから竹村から西脇は勿論、圭亮にも連絡がないようだ。

 事件について情報を仕入れる良い機会かもしれない。

 事件はまだ解明されていない。生首が門柱に晒されるという衝撃的な事件であったが、世間は急速に感心を失いつつあった。ドラマで主役を張る若手俳優同士の結婚が発表され、今週末の番組のトップ・ニュースはその話題に持って行かれそうだった。

 寺井に、圭亮が会いたいと言っているので都合を聞かせて欲しい旨を伝えさせると、「何時でも良い。サクラ・テレビに出向いても良い」という返事だった。

 番組の打ち合わせを兼ね、サクラ・テレビで圭亮と正憲を会わせることにした。

 当日、正憲は寺井に導かれながら職場に現れると、「よっ!お久しぶり」と十年の知己のように西脇に片手を上げた。

「ああ、品川さん。お久しぶりです」と丁寧に返すと、「こちらへ」と職場の会議室に案内した。

 会議室には圭亮が長い体を器用に丸めて、コーヒーを美味しそうにすすっていた。正憲の姿を認めると、すっくと立ちあがって、「やあ、正憲さん」と一旦、右手を挙げてから、ぬっと差し出した。

 二人はがっちりと握手をした。

 まるで十年の知己のようだ。似ても似つかない二人だと思っていたが、根本のところが同じなのかもしれない。

 寺井がコーヒーを持って来てくれた。圭亮にももう一杯、煎れたてのコーヒーを振舞うと、「やあ、嬉しいなぁ~」と歓声を上げた。まるで子供だ。

 一服してから、歓談が始まる。

「中山君が逮捕されたようだね」と正憲。

「はい。飯尾さんと翔子さんを殺害したことを認めました」

「何故、二人を殺したのだろう?」

「二人が共謀して高房さんを殺害したからだと言っていました」

「高房は飯尾と翔子に殺されたのだろうか?」

「そう思います。ですが、それを証明することは難しいでしょう。だから、中山さんは自らの手で復讐する道を選んだのだと思います」

「俺たちの代わりに復讐してくれたってことか・・・」

 俺たち? 品川一族としての誇りを忘れていないということか。

「警察から連絡はないのですか?」

「ないね。中山君が捕まったことも、ニュースで知った」

 当てが外れた。親族であれば、捜査状況を教えてもらえていると思っていた。正憲から情報を引き出すどころか、反対に「どうやって飯尾を殺したのだろう?」と圭亮に質問する始末だった。

 ご丁寧に、圭亮が事件の経緯を説明した。

 説明が終わると、「品川翔子さんが殺された夜のことを教えてください」と圭亮が尋ねた。そうだ。そのことがあった。

「ああ、あの夜ね」と正憲が説明してくれた。

 飯尾愛美との約束で、飯尾が指にはめていた結婚指輪とギターとの交換することになった。指輪があるとすれば、翔子の寝室だけだ。寝室を探す必要があった。だから、翔子の様子を伺っていた。

 だが、飯尾の事件以来、こもりっぱなしで、部屋から出て来なかった。

「どうして夜中に品川翔子さんの寝室を尋ねたのですか? 彼女が寝入った隙に指輪を探すつもりだったのですか?」圭亮が尋ねる。

 確かに、そこが分からない点だ。

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