表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高家の晒首  作者: 西季幽司
第三章「心理的密室」
42/58

地位と金④

「サタデー・ホットライン」の放送が始まった。

 トップ・ニュースは品川家の殺人事件だ。事件の続報が放送された。何せ、品川家で再び死体が発見されたのだ。品川翔子が、夫、高房と同じ死に方をしていたと言う情報は世間を驚かせたに違いない。警察発表では自殺とも、他殺とも断定されていなかったが、新たな展開は世間の注目を浴びない訳がなかった。

 若手アナウンサーの羽田がフリップを使いながら、要領よく事件の概要を説明して行く。今回の犠牲者は品川ケミカル先代社長の妻、翔子であり、寝室で首を吊って死んでいるのが、家人により発見された。

「被害者は亡くなった夫と同じ死に方をしていたと言うことですね?」

 総合司会の宮崎から羽田に質問が飛ぶ。

「はい。そうです。亡くなった高房さんと同じ死に方をしていました」

「夫の後を追って自殺したとなると、夫婦仲は良かったと言うことでしょうか?」

「反対に、夫婦仲は良くなかったと言う証言があります」

 二人を見ていると、良くできた芝居を見ているようだ。

「さて、鬼牟田さん。今回の事件、自殺なのでしょうか? それとも他殺なのでしょうか?」

 ニュースの締め括りとして、宮崎が圭亮にコメントを求める。これも事前に打ち合わせ済みだ。

「そうですね~品川翔子さんの事件が自殺か他殺か考える前に、品川高房さんの死が本当に自殺だったのか、検証したみた方が良いと思います」と圭亮が答えた。

「えっ⁉ ひと月以上前に亡くなった品川高房さんが自殺ではなかった可能性があるのですか?」と宮崎が大仰に驚いて見せた。

「はい。品川高房さんが自殺ではなかったと仮定すると、品川翔子さんの死はまるで別の意味を持って来ます」

「連続殺人――そうですね?」

「はい」圭亮が神妙な表情で頷く。

「品川高憲さんはどうなのでしょうか? 前回、番組では、品川ケミカルで三代、続けて社長の不審死が続いていると報道しています。品川高憲さん、高房さん、そして飯尾さんの三人です。連続殺人となると、高憲さんも殺された可能性があるということですか?」

「どうでしょう。動機や状況から見て、高憲さんが殺された可能性は低いように感じます」

「なるほど。では、品川高房さんは殺された可能性がある訳ですね」

「可能性があると思います。いや、むしろ、今回の一連の事件の発端となったのは、品川高房さんの事件だったのではないでしょうか」

 圭亮のコメントで、番組はコマーシャルへ切り替わった。

 コマーシャル中に宮崎が圭亮に近寄ってきて、「先生、行けますよ」と頬を紅潮させながら囁いた。

 宮崎の予感通り、圭亮の発したコメントは、番組放送中からネットで取り上げられ、拡散し始めていた。

 放送が終了するとモニタールームから西脇が飛んで来た。「先生、お疲れ様でした。もうネットで記事になっています。いやあ、視聴率が楽しみだ」

()()()()率は()()()()ですから、()()()()()して待ちましょう」

「ああ、もう、先生のくだらない駄洒落が、今日は微笑ましくなります。ははは」

 西脇は笑いが止まらない様子だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ