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高家の晒首  作者: 西季幽司
第三章「心理的密室」
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ふたつめの密室の謎③

 先ずは秘密の抜け道の確認に行った。

 正憲を先頭に竹村、吉田、それに圭亮と西脇が続く。

 品川邸の裏庭の北西角の一部分に公園側の樹木が張り出している場所があった。この部分だけ、塀ではなく、鉄格子となっていた。

「ここだ。どれだったかなあ・・・? 子供の頃に公園に遊びに行くのに使っていたが、大人になってからは必要なくなったからね」

 鉄格子は幾つもの縦に長い柱を上下にある横の柵で固定している。正憲はいくつか鉄格子の柱を回していたが、「おっ!これだ」と叫ぶと、一本の鉄格子の柱を上にずらした。鉄棒は下側の横柵から外れて、外すことができた。

 鉄棒を一本、取り外すと、大人でも一人、悠々、通ることができるスペースが出来た。

「おお~!」圭亮が声を上げた。

 柱が緩んで外れるようになったのではなく、もともと公園に出る通路として作られたもののようだ。

「この抜け道は――」正憲の話では、父親の高正が、子供たちが裏庭から直接、公園に出て遊ぶことができるように、鉄格子を改造して作ったものだそうだ。高正は、高憲や正憲に向かって、「いいか。この抜け道のことはお父さんとお前たちだけの秘密だぞ。仲の良い友達にも話してはいけないよ。うちに泥棒が入ったら、大変なことになるからね」と言ったという。

「友達に自慢したかったんだけど、うちに泥棒が入るかもしれないと思うと怖くてね。結局、誰にも言えなかった。多分、兄さんも同じだったんじゃないかな」正憲は懐かしそうに言った。

「抜け道のこと、早く教えて頂きたかったですね」

「忘れていたんだよ。子供の頃は公園への近道だったけどね、でも、ここから町に遊びに出ようとすると、公園を抜けて大通に出なければならない。結構な距離だ。大人になると公園に遊びに行く必要がなくなったからね。それに、防犯カメラに映らずに、正門から抜け出せる方法を見つけたから、この抜け道は用無しになった」

「防犯カメラは?」と竹村が確認する。

 裏庭の防犯カメラは、ほぼ中央部の壁の上にあった。カバーする範囲が広い上に、庭木や植え込みが沢山あって死角が多い。公園に面した秘密の抜け道から死角を通り、防犯カメラに映ることなく屋敷に侵入することが出来そうだ。しかも、防犯カメラのある場所に街灯があるだけで、夜になれば秘密の抜け道辺りは真っ暗だろう。防犯カメラの映像の解像度では、人が歩いていても分からないだろう。

「信之さんは抜け道の存在を知っていたみたいです」と竹村が言うと、正憲は頷きながら、驚くべき一言を言い放った。「ああ、あいつも一族の人間だからね。知っていても不思議ではない。一族の人間以外であの抜け道の存在を知っていたのは、飯尾くらいじゃないかな?」

「飯尾さんが抜け道の存在を知っていたのですか!?」竹村が驚きの声を上げる。

「だって、抜け道の存在を知らなければ、こっそり屋敷に忍んで来ることが出来ないじゃないか? まさか飯尾が正面から堂々とやって来て、あの女と浮気をしていたと思っていたのかい? いくら何でも、それは無理ってもんだ。飯尾はこの秘密の抜け道から裏庭を通って、あの女の部屋に忍んで来ていたに決まっている。安井さんに聞いてみな。飯尾は防犯カメラのことに詳しくないから、防犯カメラの映像に映っていたはずだぜ」

 飯尾は裏庭の抜け道の存在を知っていたようだ。

 飯尾が抜け道の存在を知っていたとなると、翔子が飯尾と共謀して高房を自殺に見せかけて殺害した可能性がぐっと高まることになる。翔子が一人で高房を殺害し、天井から吊るすことは不可能に思えた。だが、当夜、飯尾が屋敷内に忍んで来ることが出来たとすると、高房を殺害し、天井から吊るすことが可能だった。

「飯尾さんは、一体、どうやって秘密の抜け道の存在を知ったのでしょうか?」

「そんなこと、俺が知る訳ないだろう。誰からから聞いたんじゃないの? 聞いたとしたら翔子だろうな。高房が翔子に抜け道の存在を教えて、それを翔子が逢引きで利用する為に飯尾に教えた。まあ、そんなところだろう」

 そう言って、正憲は「ひひひ」と卑下た笑い方をした。

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