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高家の晒首  作者: 西季幽司
第二章「みっつの密室」
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ひとつめの密室の謎②

「門柱に突き刺さっていた生首は勿論、部屋で見つかった胴体部分も、飯尾のものであることで間違いありません」と竹村が説明してくれた。「犯人は飯尾を殺害後、首を切り落とし、門柱に突き刺しています。鍵は部屋の中にあった。どうやって鍵をかけたのか不明です」

 密室殺人なのだ。

「防犯カメラは? お屋敷には防犯カメラが設置されていたそうですが、何か映っていなかったのですか?」

「屋敷には防犯カメラが設置されていて、生首が晒されていた正門の門柱の上にも防犯カメラが設置されています。ですが、外部からの侵入者を警戒して設置されたものである為、カメラのアングルは外部に向いています。屋敷内を映したものもありましたが、何も映っていませんでした」

「そうですか」

「門柱に生首を串刺しにした訳ですから、門柱の上のカメラが何かとらえているはずだと思ったのですが、死角となっていて、犯人は映っていませんでした」

 品川邸の二階で飯尾を殺害、生首を切断し、槍門の上に晒している。夜中に、犯人は生首をぶら下げて、屋敷から正門へとやって来たはずだ。

「門から屋敷まで結構、距離がありましたけど、その間、何か映っていたのではありませんか?」

 正門の防犯カメラの他に、庭をカバーする為に、高い塀の上に三台、防犯カメラが設置されている。広い庭をカバーする為に、防犯カメラは首振り式になっている。南東の位置と北西の位置にある二台のカメラが屋敷の庭を東西から監視し、残りの一台が屋敷の裏庭に当たる部分を監視している。

「東西に設置された二台の防犯カメラが、庭の様子を監視しています。我々も、犯人が屋敷から玄関まで生首を下げて歩いたのなら、防犯カメラの映像に残っているはずだと考えました。防犯カメラの映像を、死亡推定時刻前後から生首が発見された時刻まで、八時間余り、ぶっ通しで確認したのですが、犯人の姿は映っていませんでした」と竹村が悔しそうに言った。そう言えば目が赤い。徹夜で映像を確認したのだろう。

 犯人は一体、どうやって生首を屋敷から正門まで運んだのか分からなかった。

「部屋に犯人の遺留物は残っていなかったのですか?」

「ガイシャのもの以外は、秘書の中山さんの指紋と品川翔子さんの指紋と毛髪が見つかっています。中山さんは、仕事の報告で部屋に入ったことを認めています。翔子さんの指紋と毛髪については、我々も不倫を疑っていましたが、屋敷の主ですので、部屋に指紋や毛髪が残っていても不思議ではありません。ですが、二人が不倫をしていたとなると、指紋や毛髪が残っていたのも当然でしょう」

「ドアノブには?」

「飯尾さんの部分指紋と中山さんの指紋だけです」

「品川翔子さんの指紋は?」

「部屋にはあちこち残っていましたが、ドアノブにはありませんでした。飯尾さんや中山さんが触った時に上書きされたのでしょう」

「まあ、品川翔子さんに飯尾さんの殺害は難しかったでしょうね。動機もありませんし」

「別れ話のもつれとか。別れ話を切り出され、かっとして殺害したとか」

「首を切断して門柱に突き刺す必要はないような・・・」

「まあ、そうです」

 竹村も本気で翔子が犯人だと考えている訳ではないだろう。

 犯罪現場だ。西脇は中に入って見て回りたがった、圭亮が廊下から動かなかった。

「さて、中に入ってみますか?」と竹村が聞いてくれたが、圭亮は「いえ。結構です。日本の警察は優秀です。刑事さんや鑑識の方が徹底的に調べられた後でしょうから、素人の僕が見て、新たに発見できるものなど何もありません」と尻込みした。

 部屋に入りたくないのだ。だが、竹村は誉め言葉と受け取ったようだ。西脇が圭亮を睨んだが、圭亮は気がついていない振りをした。

「では、一階の品川翔子さんが死んでいた寝室を見ますか?」

「その前に、高房さんが死んでいたという部屋を見てみたいのですが。確か、二階の――」

「西側の真ん中の空き部屋です。高房さんの事件の後、開かずの間となっています」と安井が答えた。

 高房が自殺した部屋は、二階の裏庭に面した西側にある。西側には三つ部屋が並んでいて、北西の角部屋が広めの客間となっており、今は正子が一人で使用している。南西の角部屋は、事件当夜、信之が使用していた。

 東側には四つ部屋が並んでいて、北東の角部屋を正憲が利用している。

 西側の真ん中の空き部屋が高房の自殺した部屋だ。宿泊者はいない。高房の事件後、「開かずの間」となっているようだ。

 安井が合鍵を使ってドアを開けてくれた。

「おっ!」と声が漏れる。部屋にはベッドと机、それに椅子があるだけの、驚くほど簡素な部屋だった。あまりの簡素さに、思わず声が漏れたのだ。

「ここで高房さんが自殺した・・・しかし、何もありませんね」圭亮が呟く。

 今度は好奇心が勝ったようで、圭亮がずかずかと部屋に入った。「先生――」と西脇が続く。竹村と吉田が続いて、四人が部屋に入った。安井は廊下に待機していた。

 ばらばらに部屋を見て回ったが、特に違和感を抱くようなところは見つからなかった。

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