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空に近い場所  作者: 彼方
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台風の目

空き教室の中は昨日と何も変わっていなくて、昨日のままの場所に椅子があった。彼は僕に座るよう促した後、余っていた椅子を机のある方へ持って行って

「ごめん、ちょっと寝るから後で起こして」

とだけ言って寝てしまった。さっき腕を掴まれた時、今日の彼が昨日よりも冷たい気がして体調が悪いのかと少し心配だったのだが、自分から寝てくれたからとりあえず一安心だ。起こさないように気をつけながら、彼に自分の制服の上着をかけてあげる。なんせ彼は冷たいのだ。暖かい方が眠りにつきやすいというような事を聞いたことがあるから、少しでも暖かくなるようにしてみた。彼は何も気づいていなさそうに寝息を立ててすやすやと眠っている。

その後も特にやることがなかったので、なんとなく彼の横に立って寝顔を眺めてみる。肌が白くて髪はサラサラだし、まつ毛は長いし、本当に綺麗な人だ。先程、顔は綺麗だけど中身はどこか抜けている目の前の彼に後で起こしてと言われたのだが、どのくらいで起こせばいいのかの加減が分からない。とりあえず、正午までには起こす事にして、彼の元を離れた。正午まで僕は、ずっと気になっていたこの部屋の中を探索したり、空を眺めにベランダに行ったり、もう一度彼の顔を眺めてみたりしていた。そして丁度正午になったあたりで彼が目を覚ました。その時僕はというと、彼の横に椅子を持ってきて座りながら彼の寝顔を眺めていたため、目覚めて顔を上げた彼との距離が近すぎて、ビックリして椅子から落ちそうになって、ひとりで葛藤していた。それに気づかれたのか

「大丈夫?顔真っ赤だよ?」

と少し寝ぼけてほわほわしている彼に言われてしまい、照れ隠しに全力で頷く。そして立ち上がろうとした彼は自分にかけられていた僕の上着に気づき、嬉しそうに

「ありがとう」

と、素早く上着をたたんで返してくれた。唐突に、彼は少しでも暖まれたのだろうかという疑問が生まれ、目の前でまだ眠そうにしている彼にそっと触れてみる。結論から言うと彼はまだ冷たかったのだが、ずっと微笑みかけてくれているからなのか心の温かさのようなものを感じた。誰かに愛されたことが無い僕は、何だか不思議な感覚に陥った。

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