落雷注意報
※虐待匂わせ表現注意
結局あの後は、少しだけ世間話をしてから帰った。
今週は天気がいいだとか、今朝のニュースの話しだとか、本当にただの何気ない話だったがそれが僕は心地よかった。
彼はまだ学校にいるつもりのようだったが、僕は元々昼には帰るつもりだったから予定通りに下校した。少し恥ずかしかったのもある。
僕が教室を出た時、彼は笑顔で
「またね。」
と手を振ってくれた。また会いに行ってもいいということなのだろうか。帰り道、その一言がずっと頭から離れなかった。
彼の事を考えていたら、いつの間にか家についていた。
僕は家に入る勇気が出ず5分ほどドア前で立ち止まっていたのだが、ちょうど隣の家の人が帰ってきて変な目で見られてしまったので、仕方なく音を立てないように家の鍵を開けた。
そして素早く家に入り、忍び足で廊下を進んだ。家には幸い誰も居なかっため、手にこめていた力がふっと抜けた。
その後僕は、着替えて荷物を持って家を出た。まだ1時前ということもあって太陽が高い位置にあり、眩しかった。
今なら彼も少しはあったかいのではないか。と、無意識に彼の事を考えながら足早にいつもの公園へと向かう。
公園なのかもよく分からない場所だが、そのせいかここは人が来なくていい。家に居場所がない僕にとっては唯一の居場所と言える所だ。
その公園の、唯一屋根があるベンチに座ってただただ夜を待つ、それが僕の日常だ。
昼ご飯は食べない、というか食べるものがない。一応カバンを持ってきているのだが、家の鍵とハンカチ、ティシュのような必要最低限の物以外は特に何も入っていない。
でも、いつもなら長くて仕方ないこの夜までのこの時間も、今日はとても早く感じた。きっと、彼の事を考えているからだろう。
ふいに彼が空を眺めながら言っていた
「見られるときに沢山見ておく」
という言葉を思い出して、僕もふと空を眺めてみる。この空もいつか、見られなくなる時が来るのだろうか。出来ればそんな時は来て欲しくないが、絶対に来ないとも言えない。
見上げているのはただの空だけど、ただの空じゃなくて、彼のおかげかいつもより綺麗で、大きく見えた。
目が覚めた時、空を眺めていたはずの僕はいつの間にかカバンを枕にして寝ていて、気づいたら8時頃になっていた。
さすがに寝すぎた。
そろそろ帰ろうと思い、荷物を持って重い体を何とか動かして家に向かう。
行きは長く感じたのに、帰りはとても短い道だった。
僕が家に着いた時にはもう母が帰ってきていて、不機嫌そうに酒を飲んでいた。
酔っ払った母は、飲み終わった酒の缶を机に叩きつけながらそこにはない何かに文句を言っている。
呂律が回っていないため全ては聞き取れなかったが、今日来た客の態度が良くなかったというような内容であると思われる。
母はまだ帰ってきた僕に気づいていないようだったので、今のうちに自分の部屋に入った。
部屋に入っても結局やることはないので、ただベッドに寝転がっている。
いつもこうやってエネルギーを無駄に消費しないようにしている。でも今日は朝も昼も食べていないため、さすがにお腹がすいた。
ちょうど母がトイレに入ったので、その隙にキッチンに行って冷蔵庫を漁る。
結果、今日は唯一あった魚肉ソーセージと、水道水で飢えをしのぐ事になった。
まだ成長期の僕にとってはさすがに辛いが、食べられないよりマシだと自分に言い聞かせる。
正直、こんな生活を続けているというのにまだ生きている僕は本当にすごいと思っている。
今日はこれでもマシな日になりそうだが、幸せでないことに変わりはない。こんな僕でもいつか、幸せになれる日が来るのだろうか。




