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空に近い場所  作者: 彼方
5/23

落雷注意報

※虐待匂わせ表現注意

結局あの後は、少しだけ世間話をしてから帰った。彼はまだ学校にいるつもりのようだったが、僕は元々昼には帰るつもりだったから予定通りに下校した。少し恥ずかしかったのもある。彼は笑顔で

「またね。」

と手を振ってくれた。また会いに行ってもいいということなのだろうか。ちなみに僕は屋上には戻らずまっすぐ家に帰った。帰り道も彼のことが頭から離れなかった。

家のドアの前まで来て、音を立てないように鍵を開けて忍び足で廊下を進む。幸い誰も居ないようだったので素早く着替えて荷物を持って家を出る。1時前ということもあって、太陽はさらに高く昇り暑ささえ感じる。これで彼も少しはあたたまれただろうか。考えながら足早にいつもの公園へと向かう。公園なのかもよく分からない場所だが、そのせいか人が来なくていい。家に居場所がない僕にとっては唯一の居場所と言える所だ。公園(?)の、屋根があるベンチに座ってただただ夜を待つ、すっかりこれが最近の日課になってしまっている。昼ご飯は食べない、というか食べるものがない。一応カバンを持ってきているのだが、家の鍵とハンカチ&ティシュのような必要だが暇つぶしにはならないもの以外は特に何も入っていない。どれだけ暇であっても、こうしていることが1番平和なのだ。

いつもは長くて仕方ない夜までのこの時間も、今日は早く感じた。彼の事を考えているからだと思う。ふいに彼が空を眺めながら言っていたこと「見られるときに沢山見ておく」 という言葉を思い出して僕もふと空を眺めてみる。この空もいつか、見られなくなる時が来るのだろうか。出来ればそんな時は来て欲しくないが、絶対に来ないとも言えない。見上げているのはただの空だけど、ただの空じゃなくて、彼のおかげかいつもより綺麗に、壮大に見えた。

空を眺めていたはずの僕はいつの間にかカバンを枕にして寝ていて、気づいたら8時頃になっていた。さすがに寝すぎた気がする。そろそろ帰ろうと思い、荷物を持って立ち上がり、重い体を何とか動かして家に向かう。僕が家に着いた時にはもう母が帰ってきていて、不機嫌そうに酒を飲んでいた。酔っ払った母は、飲み終わった酒の缶を机に叩きつけながら何かに文句を言っている。呂律が回っていないため全ては聞き取れなかったが、今日来た客の態度が良くなかったというような内容であると思われる。母はまだ帰ってきた僕に気づいていないようだったので今のうちに部屋に入ってしまう。部屋に入っても結局やることはないので、ただベッドに寝転がっている。寝転がってエネルギーを無駄に消費しないようにしているのだが、朝も昼も食べていないため、さすがにお腹がすいた。母がトイレに入った隙にささっとキッチンに行って冷蔵庫を漁る。結果今日は、ほとんど何も入っていない冷蔵庫の中に唯一あった魚肉ソーセージと、水道水で飢えをしのぐ事になった。高校生でまだ成長期の僕にとってはさすがに辛い夜ご飯だが、食べられないよりマシだと自分に言い聞かせる。こんな生活を続けているというのにまだ生きている僕は本当にすごいと思う。今日はこれでもいい日な方なのだが幸せでないことに変わりはない。こんな僕でもいつか、幸せになる事が出来るのだろうか。


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