快晴
※自サツ匂わせあり
ここまで来て今更戻ることも出来ないし、声をかけるのも違うのではないかと思った僕は、何も出来ずにただ彼を見つめていた。
眩しさを忘れるほど真っ直ぐに見つめていた。
全てが固まってしまったような空間で、時間だけが正常に過ぎていく。
数分経って唐突に
「君も入学式には行かないの?」
という声が聞こえた。
目の前のその人が微動だにせずにそんな事を問うものだから、彼の声だと気づくには時間がかかった。
彼はいつから僕に気づいていたのだろうか。
「っ……。」
僕は彼の問いに答えたかったのだが、いきなり声を出そうとしたのが悪かったのか声にならない声だけが残った。
ただ黙っているのも時間の無駄な気がして、彼が言っていたことについて考えてみる。
あの言い方からするに、彼も新入生で入学式に行く気は無いのだろう。
そもそも何故僕が新入生だと分かったのか、彼はここで何をしているのか、という疑問が沢山出てくるが、それよりもまず言っておかなくてはいけないことがある。
「そこ、危ないですよ」
正直思ってもいないことを言うのはどうかと思ったが、世間的に彼を放っておく訳にはいかないのだから仕方ない。
それと、少し上から目線になってしまった言い方については大目に見ていただきたい。こっちは一言話すだけでも必死なのだから。
当の彼は数秒沈黙した後、わざと話をそらすように
「今日は天気がいいから、空綺麗だね」
なんて言い出した。
別に怒っている訳ではないが、話をそらすくらいならはじめから本当の事を言って欲しかった。
だって、こっちの言葉には1つの命がかかっているんだから。
彼はそんな僕の考えなんてつゆしらず、そこに座ったまま話し続けた。
「君も空を見に来たの?」
僕はそんなことしないと、はっきり言いたかった。
入学式をサボってまで空を見に来るわけがないのに、どうしてそんな考えに至ったのだろうか。僕には理解し難い言葉だった。
そんな中彼は全然話さない僕を見かねたのか、振り返ってこちらを向いた。
もちろん座ったままだった。
どうせ振り向くならついでにそこから降りて欲しいと思いながらも、僕も彼を見た。
彼は後ろ姿だけでなく正面から見てもすごく綺麗だった。イケメン、と表すよりは神々しい感じがする。
今も風になびいている髪に、整った顔に、漫画の世界から出てきたような人だった。
そしてビックリするくらいに肌が白く、今日が快晴だからなのか光の加減で透けているようにも見える。
彼が、まじまじと彼を見つめる僕にちょっかいをかけるように
「そんなに僕がおかしい?」
と笑顔で聞いてくるから、ついムッとなって
「はい」
と、真顔で即答してしまった。しかし彼は
「ようやく答えてくれた、」
と子供のように喜びながら、こっちを見ていた。