星
あの後、泣き止んだ彼女は僕を途中まで送ってくれた。そして帰り際に、
「湊、退院してから1週間くらいは学校行けないと思うから、その間よかったら家おいで」
と言って手を振ってくれた。彼のお母さんだけあって本当に優しい人だ。
次の日、その日は僕は彼の家に行かないつもりだったのだが、ふとした瞬間に彼は無事に退院出来たのだろうかと考えてしまうようになったため、結局昼頃に彼の家を訪ねてみる事にした。貰った紙を頼りにたどり着いたそこは立派な一軒家で、周りの家と比べてもひと目でわかるくらい大きくて美しかった。レンガのような柄のオシャレな壁に神崎と書かれていたのでここが彼の家で間違いないだろう。今更本当に来て良かったのだろうかと後悔する。やっぱり帰ろう、でも頑張ってここまで来たんだから、、、という2つの感情が戦っている。傍から見れば僕は、人の家の前をウロウロしているただの不審者だ。激しい戦いの末頑張ってここまで来たんだから、が勝ったのだが、壁がオシャレなせいでインターホンの場所が分からず結局立ち尽くしてしまう。その時家の扉が開いて、
「いらっしゃい叶人くん。」
と中から出てきた彼のお母さんが言った。
「迷わなかった?さ、あがってあがって」
彼女はこっちまで来て家の門を開けてくれて、そのままおいで、と手招きをした。
家の中は外から見た時の印象と変わらず、大きくて美しかった。僕が中に入った時、
「いらっしゃいませ。」
と、家政婦らしき格好をした人がお辞儀をしながら言った。広い家に住んでいて、まさか家政婦までいるとは、彼のうちはお金持ちなのだろうか。彼のお母さんに案内されるまま廊下を進んでいく。廊下には幼い彼のものであろう写真が沢山掛けられていた。中には家族写真もあった。彼のお母さんも、彼のお父さんだと思われる人も、彼もみんな笑顔だった。廊下を3/2ほど進んだところにある階段を登って、2部屋目の所に彼の部屋があった。彼のお母さんはドアをノックしてから中に入り、その後僕にも入るように促した。彼はさっきまで寝ていたのか、パジャマだった。
「おはよ叶人。」
彼は笑顔でそう言った。彼の部屋も広く、僕、彼、彼のお母さんの3人が居てももまだまだ余裕があるくらいだった。
「適当に座って」
と彼に言われて、僕はローテーブルの傍に座った。彼は僕の隣に座った。そのタイミングで彼のお母さんは
「ごゆっくり〜」
と言って部屋を後にした。
2人きりになってから、彼にずっと見られている気がする。
「な、なにか付いてますか…?」
僕は恥ずかしくなって、彼に言った。
「叶人が可愛かったから。」
彼は首をかたむけながら言った。僕は10秒ほど、その言葉の意味を理解することができなかった。そして10秒ほどが経過した時、言葉の意味を理解してしまった僕は段々顔が熱くなって
「ふぇ?!」
と間抜けな声が出てしまった。彼はずっとニコニコしている。