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空に近い場所  作者: 彼方
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保険室の先生にお礼を言ってから、僕は迷わず学校を出た。

もちろん彼の元へ向かうためだ。

まだ10時頃なので、校庭で授業をしている人達にバレないように学校を出るのが大変だった。

学校を出てからは、ひたすらに走った。というか、無意識に走り出していた。

でも久しぶりに走ったから、病院に着いた時にはひどく息が切れていた。


そこは総合病院のような大きな病院だった。

もちろん僕は部屋番号を見ても場所が分からなかったため、受付の人に聞くしかなかった。

僕を見た受付の人は少し驚いたような顔で、部屋まで案内してくれた。もしかしてこの人は彼のことを知っているのだろうか。

そうこうしてるうちにたどり着いた彼の部屋のドア横のプレートには、「神崎 湊」と書かれていた。

どうやら彼の苗字はという神崎らしい。読み方はかんざき、であっているだろうか。

彼に会いたい一心でここまで来たが、いざとなるとあと一歩踏み出すことが出来ない。

僕は現在扉の前で突っ立っている。

このままだと通行人の邪魔にもなるし、何のためにここまで来たんだと意を決してドアをノックする。

でも彼の返事は無い。寝ているのだろうか。念の為もう1回ノックするが、返事はなかったので仕方なくゆっくりドアを開けた。

「失礼しまーす。」

音を立てないよう細心の注意をはらって中の様子を見てみると、彼は予想通りベッドで寝ていた。

細い腕に点滴の針を刺され、静かに寝息を立てて眠っている彼は弱々しくて、今にも消えてしまいそうだった。

でもとりあえず、生きててくれてよかった。

彼の寝顔を見て安心した僕は、でもそれだけじゃ満足できずに彼に近寄る。

ベッド横に置いてあった椅子を借りて、そこから彼を眺めた。彼の状態はこの間よりもだいぶ良くなっているようで、今日は全く辛くはなさそうだった。

そして15分ほど経った頃、彼が唐突に目を覚ましたので起こしてしまったんじゃないかと焦っていたら、彼は寝ぼけていたのか、

「叶人」

と言いながら僕に抱きついてきたので、びっくりして変な声が出た。

彼は今日も冷たかったが、彼の腕の中はすごく安心した。

長いこと僕に抱きついていた彼は、ようやく目が覚めてきたのか、

「わ!叶人!なんでいるのびっくりした〜」

と笑顔で言っていた。

その後も彼は、

「叶人また痩せた?」

とか、

「俺が居なくて寂しかった?」

とか、色々聞いてくる。

いつもの彼が戻ってきてくれたのは嬉しいのだが、それよりもずっと気になっていたことがあるので、今は心から笑えそうにはなかった。

そして彼はそれを察したようで、少し沈黙してから、

「聞いたんだよね…?俺が病気だってこと」

と言った。その時の彼はひどく悲しそうだった。

「ごめんなさい、聞きました。でも湊さんが言いたくなかったのなら、僕は聞きたくなかった。」

これは本心だ。

僕は聞きたくて聞いたわけじゃないし、先生も悪気があって言った訳では無いのだから、今回ばかりは仕方がないと思っていた。いや、そう思って気を紛らわせていた。

彼は、

「ほんとに優しいね。だからこそ傷つけてしまうかもしれないけど、聞いて欲しい。」

と言った。僕の事を咎めず、心配までしてくれる彼の方が優しいと思った。

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