低気圧
そして彼に持病があると知ったからなのか、僕は急に怖くなった。
ベットで苦しそうに呼吸を繰り返している彼がこのまま死んでしまうのではないかと縁起でもないことまで考えてしまう。
だって彼の今までの言動を、彼が病気だと知った今考え直してみると、
『1年だけど、新しく入ってきたわけではないかな〜』
『留年しちゃったんだよね』
『だから見られる時に沢山見ておくの』
全て繋がっている気がする。
考えすぎであってほしいし、もう考えたくもないが、もしかしたら、もしかしたら彼は。
その後も彼の体調は回復しそうになかったため、彼の親が迎えに来る事になった。
僕は帰るタイミングを見失ってしまい、未だに保険室から出ることが出来ない。
そんな事をしていると10分程経っていて、気づけば彼の親らしき人が保険室に入ってきた。
そしてその人は僕に気づき、
「息子を助けてくれた方ですか?本当にありがとうございます。」
と頭を下げた。
いきなり過ぎてどうしていいか分からなかった僕は、
「あ、いえ。」
と素っ気なく返してしまったのだが、彼のお母さんらしいその人は優しく微笑んでくれた。そ時の雰囲気が彼にとても似ていて、彼のお母さんと彼は顔はそこまで似ていないが、やはり親子なんだなと思った。
彼のお母さんは彼を起こし、まだ歩くのも難しい彼のことを支えながら帰っていった。
帰り際、目覚めた彼は僕に
「ごめんね。」
と言った。
僕はどうして謝られなければいけないのかが分からなかった。
次の日、彼は空き教室に来なかった。
昨日あんなに体調が悪そうだったのだから来ないのは当たり前なのだが、それでも今日も彼が笑顔で迎えてくれるのではないかと心のどこかで思っていた。
今日は彼が居ないため、空き教室に入ることは出来なかった。
一応屋上にも行ってみたのだが、もちろんドアは開かなかった。やはり彼は鍵を持っているのだろう。
仕方ないのでその日は体育館裏の人目がつかない所でただただ時間が過ぎるのを待っていた。
彼のいない時間は苦しくてすごく長かった。
彼はまたすぐに帰ってきてくれると思って頑張って耐えていたのだが、次の日も彼は来なかった。また次の日も、その次の日も。
日に日に不安が増していった。体調が悪化してしまったのではないか、このまま永遠に彼に会えなくなるのではないか、などとネガティブな事を考えてしまうことが多くなっていった。
気づけば1週間が経とうとしていた。このまま何もしないのは嫌で、というかこのままだと自分のメンタルが持たないということで、勇気を振り絞って保険室の先生に聞いてみることにした。
保険室に行った時、先生は僕が来たことに驚きはせず、むしろ来ることが分かっていたようで、表情も変えず
「湊くんのこと聞きに来たんでしょう?」
と言った。そして、
「昨日湊くんのお母様がいらっしゃって、あなた宛の手紙を預かったのよ。」
と、白い封筒を渡してきた。
僕は恐る恐るそれを開けた。
中には封筒と同様に白い便箋と、鍵が入っていた。鍵はあの空き教室のものだったので、もしかしたらと察して手紙の内容を確認する。
「叶人へ
この間は助けてくれてありがとうございました。
学校、行けなくてごめんなさい。空き教室入れなかったでしょ。
実は入院する事になってしまって、まだ学校には行けそうにないので、叶人に鍵を渡しておきます。
あ、入院するって言っても念の為みたいな感じで、俺は全然元気だから心配しないでね。
早く元気になってまた学校に行くので、叶人も風邪とか引かないようにしてください!
湊 」
やはり手紙は彼からのものだった。
少なくとも手紙を書くことが出来るくらいには回復しているようだったので少し安心した。
それと、何気に彼の文字を見るのは初めてだったので少し嬉しくなる。彼の字はすごく大人っぽかった。
便箋を封筒に戻そうとしてはじめて、メモ用紙のようなものが入っていることに気がついた。
見ればそれは彼のお母さんが後から入れたもののようで、
「この間は本当にありがとうございました。湊はここにいるので良かったら遊びに行ってあげてください。」
と、病院名と部屋番号が書かれていた。




