雨と晴れの境目
目を開けたら、目の前に広がっているのは夜空だった。
びっくりして起き上がると、正座の彼は笑顔で
「おはよ。」
と言った。
僕はどうやら泣き疲れて寝てしまったらしい。彼の膝を枕にして。僕はまた彼に迷惑をかけてしまった。
「ごめんなさい」
と謝ると、彼は
「そこはありがとうって言ってよ、よく寝られたでしょ?」
と冗談交じりに言った。彼は本当に優しい。
「ありがとう、ございます。」
膝枕は恥ずかしかったが、今はその優しさが嬉しかった。
彼は満足げににこっと微笑んでから、
「さて、今多分8時半くらいなんだけどどうする?保健室、やだ?」
と言った。
彼は僕がここを離れたくないと言ったから気をつかってくれているのだろう。だから僕は優しい彼の心にとことんつけ込んでみることにした。
「1人じゃなければ、平気です。」
と、遠回しに彼について来て欲しいと言った。
今はそれくらいのわがままを言わせて欲しかった。しかし彼は何を言ってるんだという顔で
「そもそもこんなにボロボロの人を放置するわけないけどね?」
と言う。
彼にはまだ一緒にいて欲しいというのが本心だが、そもそも彼はこんな時間に学校にいて大丈夫なのだろうか。彼の親が心配していたりしないだろうか。と考えていると、
「あ、俺は時間とか全然大丈夫だよ?じゃなかったらこんな時間に学校に忍び込んだりしてないし。」
今日もまた、僕の考えなんてお見通しのように、彼は笑いながらそう言った。
その後2人で屋上を出て、現在2人で廊下を歩いている。
電気を付けたら学校に忍び込んだ事がバレてしまうという理由から、電気を消したまま保健室に向かっている。そのため保健室までの道は暗く、軽く肝試し状態だった。
僕の手を引き先頭を歩く彼は、
「なんか、幽霊とか出そうだね」
と、笑顔でサラッと怖いことを言う。本当は結構怖がっている僕も、
「た、例えば何がですか?」
と対抗してみる。そして、
「貞子とかじゃない?」
「えっ……」
と、くだらない会話が続く。
彼は僕が怖がっていることを分かっているようで、反応を楽しまれている気がする。冗談だと分かっていても怖くなって黙り込んでいる僕を見て、彼はくすくす笑いながら
「叶人は本当に可愛いよね?」
一言、そう言った。
僕はそれに何も答えられなかった。
そんなことをしている間に保健室に着き、彼がなんの躊躇いもなくドアを開けた。彼に恐怖心というものは存在しないのだろうか。
保健室は学校の人目に付きにくい裏側の方にあるので、念の為カーテンを閉めてから電気をつけた。久々に明るい場所に来られたからか、なかなか目があかなかった。
彼は保健室に慣れているようで、素早く救急箱や氷嚢を持ってきて、
「そこ座って。」
と言った。
言われた通り座ると、彼はこれまた素早く処置をしてくれる。彼は器用だった。
処置をしてくれている間に1つ気になっていたことを聞いてみる。
「どうして、この時間に学校にいたんですか?」




