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空に近い場所  作者: 彼方
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始まりの空

※自サツ匂わせ等の、命に関する表現あり

4月上旬、一般的に入学式が多くなるシーズン。

例にならい僕も今日は入学式で、でも屋上に向かっている。

言い方を変えればサボりとも言う。そもそも入学出来たことが奇跡だというのに、初日からサボっている僕はある意味度胸があるのかもしれない。

正直なところ僕にはサボっているという自覚はなく、ある種の癖のようなものだから仕方ないとも思う。でもサボりはサボりだから良くないとも思う。まだ一般的な感覚は残っているようだ。

中学の時より少し長い階段をようやく登り終え、音を立てないようにつまに重心をおいて歩きながら、人がいないか辺りを見回した。

皆入学式に出席しているようで、幸いにも人はいなかった。

校内の地図を校門の掲示板で1度見ただけなので、屋上まで予想以上に時間がかかった。

ようやく着いた屋上のドアには「立ち入り禁止」と書かれた札がかかっていて一瞬怯んだが、度胸は人よりある僕だ。少し引き気味になりながらも、ドアノブを回す。ドア自体は鍵でも掛かっているのかと思えばすんなり開いてしまった。

罪悪感もあり多少の恐怖を覚えるが、怖がっている場合でもないのでさっさと屋上に出てしまおうと思う。


見上げたそこは予想通りの屋上だった。

牢獄のように閉ざされた教室とは違ってとても開放的だ。

今日は入学式にぴったりな天気で、屋上は照り返しが強くてまぶしい。

なんとなく、踏み入れたら何かが変わってしまうような気がして、1分ほど踏み出すことを躊躇っていたが、僕は屋上に来る為だけに今日学校に来たのだ、という事を思い出して覚悟を決めた。

せめてもの気持ちで両足同時に踏み入れてみたが、特に何かが起こる訳でもない。

もう一度辺りを見回してみる。屋根のない場所から見ると屋上(ここ)は本当に解放的で、上下左右360°空だからもはや空と一体化しているように見える。そして見回していて気づいた、僕以外にも人がいるという事に。


(そのひと)の後ろ姿はすごく綺麗だった。

ただ、その彼が座っていた場所はフェンスの上だった。意図としてやっているのか、屋上の中でも仮に落ちたら助からなそうな所に座って足を揺らしていた。

まず、屋上に人が居た事には驚きはしなかった。だから鍵が開いていたのか、と思う余裕さえあった。

そして、その人が座っている場所が危ないなとも思わなかった。いや、正しくは思えなかったのかもしれない。

それはそれでどうかとも思うが、その時の僕は無心で「この人も生きるのを諦めたんだろうな」と勝手に思っていた。

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