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第21話:駐屯地で助っ人を

 無事にラナトルをフェルソン卿の元まで送り届け翌朝。

 俺は集合時刻の前にとある場所へと足を運んでいた。


「失礼、ここは許可された者のみ立ち入りできます。身分を証明できるものは?」

「これでいいか?」


 俺は首にかけてあるペンダントを見せた。

 それは剣の形をしていて銀で出来ているものだ。厚さは一センチほど。そこまで大きいものでもないが、これの持つ効果は大きいものだ。


「公爵令息でございましたか。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」

「エブティケートだ」

「承知致しました。ではどうぞお入りください」


 そう、これ一つでその貴き身分が証明できるのだ。剣はジスティア公爵家を象徴するもの。家紋とも言える。

 ちなみに俺が普段これをつけていない理由は、権力を振りかざしたいわけではないから。身分が関係ない時は付ける必要もないが、やはりこういった際には役立つ。というか無いと入れない。


「ここには入ったことなかったな。見た目通りの要塞で頑丈そうだ」


 ここはジスティア公爵領エクレイド王国軍駐屯地。エクレイド王国の貴族領の中心地には必ずあるものだ。

 数は少ない場所だと一個小隊(二十~四十人)、ここリガルレリアなど大きい場所では一個大隊(五百~六百人)ほどが駐屯しており日々訓練に励んでいる。


 今回俺が軍の基地を訪問したのはしっかりとした理由があるのだ。


「ここが大隊長室か……」


 少し緊張するも、なんとか抑えノックを三回。扉の奥からはすぐに声が聞こえた。


「どうぞ」

「失礼する」


 少し広い部屋の奥、黒く大きな椅子に腰掛ける筋骨隆々の男。その目は俺を射抜くかのように鋭く、歴戦の猛者だという雰囲気が伝わってくる。


「先に自己紹介をさせてもらう。俺はエブティケート・ジスティア。ジスティア公爵家三男だ」

「丁寧にどうも。俺――私はヘルテイト・ガグンラーズ。ガグンラーズ伯爵家が次男。エクレイド王国軍リガルレリア領駐屯地大隊長だ」


 この男はゲームにおいて、リガルレリアの防衛に命を賭したとされ名を遺している。そのため人となりは知らなかった。


 しかしどうやらこの男、相当な口下手らしい。敬語も少し慣れていないようだ。この感じ、戦いは出来るがそれ以外がダメなタイプだろう。実力主義が裏目に出ている気がしてならない。


「別に普段通りの話し方で構わない。貴殿はきっと堅苦しいのは嫌いなのだろう?」

「――あぁ。そうだ。俺はあんまり敬語なんてものは好かん。単純でいいだろう、いちいち回りくどい事を言わずとも。さて、用件を聞かせてもらおうか」


 敬語はいい、そう言った瞬間饒舌になるヘルテイト。

 そう考えると義侠心を持つ人情のある軍人、という印象に変わる。戦場では全力で力を振るい、他では皆の事を第一に考えているのだろう。しかし口下手なので苦労していそうだな。


「そうだな。今回ここを訪れたのは少しばかり兵を連れていきたいからだ。これからとある裏組織の拠点に突入するつもりであるため護衛と監視役がいれば困ることもないだろうと考えた」

「そうか。分かった、第五小隊第二班を連れて行く事を許可する。閣下の身を命に代えても守らせる」

「それは心強い。では失礼する。また会おう」

「もちろんだ」


 きっと彼の前では物事を必要最低限の文字数で簡潔に述べるのが最善なはずだ。その方が好かれるだろう。

 ああいう人物との繋がりはいずれ役に立つ時が来る。既にお釣りが来るほどの利益だ。


 部屋を出るとそこは石造りの廊下だ。灰色で統一されている景色は重厚感があり軍の規律正しさを象徴するように感じた。


 そこに俺の足音がただ響き渡る。少し遠くからは訓練と思しき威勢のいい声が聞こえてくるも、気にならない程度の大きさだった。だが歩みを進めるたび、その声に近づいていくのが分かる。


「そこの兵士、少し訪ねたいことがあるのだが良いだろうか」

「はっ、なんなりと」


 廊下をたまたますれ違いそうになった兵士に対し、胸元のペンダントを見せつつ声をかけた。俺の立場を理解したようだ。

 そして帰ってきた反応はさすがとしか言えないものだ。安心感があるな、この国も安泰だ。


「第五小隊第二班はどこにいる」

「それでしたら私が案内致しましょうか?」

「では頼む」

「はっ」


 簡潔な会話を終わらせ、言葉もなく廊下を歩いていく。少し曲がったりして数分、そこには五名の男がいた。


「第五小隊第二班! 訓練やめ、注目せよ!」


 おお、いかにも軍隊って感じだ。男ならばロマンを感じるのではなかろうか。


「第三中隊長!?」

「このお方――閣下は貴君らに用件があるそうだ」

「まずは自己紹介を。名はエブティケート・ジスティアという。俺は貴君らに同行して欲しいのだ。ヴォルトという裏組織の拠点へ突入するつもりであるため、護衛と監視役が必要だ」

「では私が同行致します」


 すぐに立候補したのは一人の男だった。よく見ると外の四人とは少しだけ服装の紋章が違う。


「班長が、ですか?」

「あぁ。お前らは班長不在での訓練をしておくがいい。それぞれが班長代理をやってみれば管理能力も向上することだろう」

「了解しました。ではそのように」


 どうやらその男は班長だったらしい。優秀そうで信頼できそうだ。彼も大隊長ほどではなくとも筋肉の大きさは威圧感がある。


「よろしく頼む。名前を教えてくれるか」

「自己紹介が遅れて申し訳ない。私はグリーム。見ての通り第二班長だ」

「では早速集合地点へ向かおう。集合時刻は八時なのであまり悠長にしていられない」

「了解した」


 軍人は素直でいいな。まぁ、指揮官にはなりたいとは思わないけどね、戦場怖いもん。でも英雄になるためには避けて通れない道かもなぁ……


 その後は作戦について詳しく説明しながら屋敷まで歩いた。ヴォルトの三人衆たちのことも話し知識を共有した。


「お、兄ちゃん! おはよう」

「今日も兄ちゃんはかっこいいぜ!」

「最高だぜ兄ちゃん!」

「そうだな。おはよう。あと、こちらは安全のために同行するグリームさんだ。お前ら、軍人だから犯罪すると捕まるから気をつけろよ」

「なるほど。さすが兄ちゃんだぜ!」

「兄ちゃ――」

「時間がない。ほら、さっさと行くぞ」


 予想以上に時間を潰してしまった気がするな。さっさと金をぶんどって日常に戻りたい。あわよくば掘り出し物があれば嬉しいな。

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