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第5話:意味ないじゃん!

「あーもー鬱陶しい! おばあさん! アタシの声、聞こえる?」



 十数本のツルは一カ所から生えており、その根元で女性が立ち尽くしている。

 どうやら意識を取り戻したようだ。


「気が付いたんだったら、なんか返事しなさいよ!」


「もし返事ができても、高齢の女性ですからね。ここまで聞こえる声量はないかと」



 アンナに並走しながら、アビーが答えた。



「確かに。……それにしてもアビー。アタシのホウキについて来られるなんてやるわね」


「あ、これですか? アンナちゃんのホウキに自動で並走するように設定したので、私は特になにもしてないです。全部アンナちゃんのおかげです」


「な! インチキじゃん!」


「これも実力のうちです。それよりも良い方法を思いつきました」


「なによ?」


「通話すればいいんですよ」


「通話?」


「はい。私のスキルに確か無線機があったはずです。ほとんど使ったことがないので忘れてました」


「無線機っていうのがよくわからないけど。とにかくやって頂戴!」


 アビーは頷くと右手の手のひらを胸の前に出した。



『ラブミー・トランシーバー!』



 アビーが唱えると、彼女の手に2つの小型無線機が現れる。

 その無線機は一見すると普通の形だが、耳にあてる部分にクマの頭部が飾り付けられていた。

 アンナは「また悪趣味な形ね」と思ったが、この状況を打開できるのなら、とやかく言うのは止めようと口をつぐむ。



「大変です、アンナちゃん!」


「なによ?」


「無線機がここにふたつあるので、おばあさんと会話できないです」


「意味ないじゃん!」



 アビーはじっと無線機を見つめて、少し考えをめぐらせた。



「アンナちゃん! 受け取ってください」



 アビーが無線機のひとつをアンナに放った。

 急なアビーの行動にアンナは慌てて手をのばす。

 もう少しで掴み損ねるところを、うまい具合にクマの耳が彼女の指に引っかかり、どうにか受けとめることができた。

 この悪趣味な形もたまには役に立つのね、と思うアンナ。


「ちょっと! 急に投げないでよ」


「それ、クマさんの左目を押すと通話できますから」


「なに言ってんの、アビー?」


「私がもう片方をおばあさんに渡してきますので、あとはアビーちゃんがおばあさんと話をしてください」


「ちょっと! 待ちなさい!」


「行ってきます!」



 アンナの制止を聞かず、アビーが急降下する。

 アビーはツルを避けながら、おばあさんのもとへと向かう。

 だが、おばあさんのもとに着く十数メートル手前で新たに生えてきたツルに絡め取られてしまった。

 体をツルに掴まれた瞬間、アビーは無線機の通話ボタンを押すとそれをおばあさんの足元へ投げた。



「おばあさん! それでお話してください!」



 そう叫んだアビーはそのままツルに掴まれて上空へと跳ね上げられた。

 彼女が乗っていたバズーカは主を失い、霧散してしまった。



「アビー! 大丈夫?」


 ツルに捕まっているアビーから少し離れたところにアンナがやってきた。

 だが、ほかのツルを避け続けているのでなかなか近づけない。



「アンナちゃん。私のことはいいですから、それでおばあさんに呼びかけてください!」


「……わかったわ」



 アンナはツルの攻撃圏外である上空へと非難して無線機のボタンを押した。

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