再び、禁書庫
アルバートの話を一通り聞いての感想。
大変申し訳ありませんでした……!
ここまでの経歴抱えてたらそりゃ人間不信にもなるわな。特に親から貴族らへんの話が一番きついよ……苛つくとか言ってる場合じゃない話だった。
それに自分の周りだけに結界発動……?なにそれ頭いい。自分の思慮の足りなさを痛感させられます……
そして極めつけの冒険者だよね。20年はちょっと……望み薄いかなぁ…
冒険者が25歳だったとしても45歳。45歳でこの……範囲わかんないけど多分めちゃくちゃ広い魔境を倒すとかは無理だろう。魔力も低いって言ってたし、寿命も多分短い。
魔素量が多いアルバートが今45歳でパッと見10歳でしょ、つまり実年齢が見た目の4.5倍なわけで……ってことは、300歳超えられる可能性があるんだ?この世界の平均寿命によるけど。
逆に言えば、魔素量が少ないと寿命が短くなるわけなので、冒険者がもう死んでいる可能性もなくはないだろう。
アルバートは期待なんてしてない、とか言ってたけど本当は心の奥底では信じているんじゃないだろうか。冒険者が来る、という可能性を。
確かに今まで酷い目にあってきたアルバートからすれば、誰にも会わず食料は豊富にあるここは天国だろう。
けど、何の希望も抱かずにそう長い年月を自死を選ばず生きられるものなのかな?
さっきの話を聞いてもなお、アルバートを連れ出したいと思う私は偽善者なんだろうな、と思う。
アルバートには何のメリットもない、信用できない相手からの感情論から出た言葉。
そんなものにアルバートの心が動いてくれるかは分からない。けど、動いてほしい。動かす。
どんな言葉ならここから出よう、と思う?
考えつつ、ペンを走らせる。
[そんな過去があったとは思わなかった。ただ、それでもアルバートには一緒に外に出てほしい]
「……馬鹿じゃないの?出ていくなら出ていってよ。この変な魔法かけてあげるからさ。そうしないなら死んでほしいって言ってるじゃないか」
やっぱりこういう対応になるか。
ここで突っつくべきことは……
[あなたを置いていった研究者達に、なんの恨みもないのか]
「……は?」
[あなたを辱めた貴族に、なんの恨みもないのか]
「いや、何言って」
[約束をして置いていった冒険者に、なにか言いたいことはないのか]
「……なにそれ?復讐を誘ってるってこと?」
ここで大ボラを吹く。
[私は、不死の体を持っている。私を殺すことはできない。だが、今ここで手を組めば散々あなたを虐げた人々を、共に滅すと誓おう]
勿論、私は不死の体なんて持ってはいない。核を突かれれば死ぬし、復讐が素晴らしいことだとは思わない。
けど、今はこの言葉がきっと、効く!
「……確かに僕を見下して苛めてきた奴らの大切なものを踏みにじりたい気持ちはある。けど、この容姿のせいで外の世界で僕は生きていけない。メリットよりもデメリットの方が大きい」
そのことなんだけど、ちょっと話を聞きながら思ってたことがあって。
[髪と目の色を変えることはできないのか]
「……そんな呪文は……あるみたいだけど禁呪として定められているらしい、し…裏のルートでも高すぎる。無理だ。塗料にしても、少しの間しか欺けない…」
まあ、そういう方法を探ってない訳ないよね。禁書庫にはないのかな?
[禁書庫の存在は、あの魔法陣を作ったのなら知っているだろう?あそこにある書籍にはその呪文はないのか]
「……禁書庫?いや、魔法陣は普通に外で発動したのを研究員がどこかに運んでいったけど……それに、あの魔法陣を描いたのは僕じゃない」
まさか、知らない?
それはなんて好都合。
[禁書庫にはそんな呪文があるかもしれない。が、私にはこの世界の言葉が完璧にわからない以上限界がある。でも君なら読めるだろう?]
「……どうせ無いだろうけど、禁書庫には興味があるし、言葉なら貴族と研究員に嫌ってくらい叩き込まれた。……ほら、早く案内してよ」
◆
本を差し込み、また本を差し込む。そして書斎の鍵を挿し込む。
……一挙手一投足をじっとり見つめるのはちょっと緊張するからやめてほしいかな。
扉が開く。
魔法陣を見たアルバートが息を呑む。
「本当に、ここにあったんだ……これさえあればまたこの結界を張り直せる……」
……え?まさかさっきの「結界はいつでも張り直せる」とかいうの、ハッタリなの?
よくそんな状態でここに居続けるとか言えたな……逆に尊敬する。
いざとなればアルバートが静止の魔法を使った瞬間にこの魔法陣を壊そうかな。そうしたら信頼関係は築けないだろうけど、外には出せる。
アルバートを引っ張って書架の前に連れて行く。実は前読んでいたときに、この国の統計っぽいやつと呪文の本っぽいやつで分けていたので、とりあえず呪文の方へ。
アルバートが本に手を伸ばすのを確認したあと、私は結界の魔法陣を書き写し始めた。
知っている魔法陣は多い方が良いし、外に持ち出せる本も少ないだろうから、他の本の魔法陣も役に立ちそうなものは写していく。
流石は禁書庫に入っているものというべきか、強力なものが多い。
ただ、強力すぎて使い所が無さそうというか……攻撃魔法とかは普通に図書室の方で事足りそうだし、こんな一つの村一網打尽にしそうな魔法を発動させるほどの魔素もないというか。
……あ、隣にいたわ。魔素世界トップクラス。
多分アルバートはアルビノなんだろう。目が青いのは、血が青いからかな?本来は血管が透けて赤くなるわけだし。
私はかなりアルバートの容貌は好きなんだけどな。厨二心がくすぐられるというか。
ルーレロットとミラルダの戦い、とかいう宗教的要因なら意味なく虐げられちゃうのかな。
日本にはそういうの……まあ、あったっちゃあったみたいだけど身の回りには無かったから驚きだ。
禁呪とされている魔法は対人が多い気がするな。この国では戦争はあまりしていないのかもしれない。
……そもそも、この世界どんな感じなんだろう?エルフとか魔族とかいて、昔に和平条約を結んだみたいな歴史書は読んだんだけど、今のことは分からない。
ミラルダが相当支えてたみたいだしね。ミラルダがいなくなったことで崩れたものがたくさんあるなら、今の外の世界は荒れているか復興しているかのどちらかだろう。
ミラルダのことをアルバートは盲信しているみたいだったけど、あれだけ酷い目にあってきたのに助けてくれなかった神を信じられる理由が私には分からない。最初の激昂加減もちょっと怖かった。
まず、ミラルダがいなくなった時点で崩れるって、ミラルダに依存し過ぎじゃない……?これは人類サイドとミラルダサイドのどちらが悪いかは傍観者の私にはまだ分からないけど。
外に出るのが、楽しみなような不安なような。
INTが足りない




