表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鏡よ鏡。かっこいい私はどっち?

作者: 犬三郎

「あははは〜、マジうける〜」


 女友達と教室で車座になって話し合う。美優と彩と咲は私の架け替えのない友達だ。帰りに流行が過ぎたタピオカを飲んで、家へ帰宅。

 自分の部屋に慌てて走って、鏡を見る。


「女を演じる私じゃなくて、貴方がいい」


 鏡に映っているのはセーラー服を着ている私じゃなくて、化粧をしている私じゃなくて、長髪の私じゃなくて、学ランで短髪で凛々しい顔の私が立っている。


「貴方になりたい。貴方のようにカッコイイ男になりたい」


 私の心はいつまでも男に憧れている。親に相談したら病気だと精神科に連れていかれた。誰も私を分かってくれない。

 私は右手を鏡に近づけた。

 爪は長くなくて、手の甲は荒れている。男らしい。

 顔を近づけた。眉は濃くて、太くて、頬にニキビ。なんて男らしい。

 髪を触ってみた。私の髪のようにサラサラしてなくて、つんつんしてゴワゴワしている。男らしい。

 腰を触ってみた。私の腰は肉付きはなく、クビレができているのに鏡の私にはクビレなんかなさそうだ。


 ——男になりたい。貴方のような男らしい


「ぁぁぁああああ!」


 高い声じゃなくて、低い声にしたい叫び。焼かれる喉をもっと強くしたい。

 床に蹲ると邪魔をするこの乳を剥ぎ取りたい。


「私は何者にもなれないんだ」


 私は鏡の私になりたい。鏡の私はどんなに自由なんだろう。私の足枷を全て壊し尽くした私はどんな顔をしてるんだろう。


「俺は俺だろ」


 男らしい声が耳を掠める。家には誰もいない、男の人なんていないはず。


「貴方……なの?」


 上半身を手を使って起こして、鏡を見る。女座りをしている私じゃない、胡座をかいてはにかんでいる私が口を動かす。


「俺は自由だろ。誰に縛り付けられた? 誰に首を絞められている? お前のここはもう声に出てるだろ」


 私は胸を右拳で叩き、拳を私に向ける。


「誰かは分かってくれる。人を信じろ。俺を俺で苦しめるな」


 私は「分かってくれないよ」と吐息のように言葉を吐き出すと、私は「なーに馬鹿なことを言っているんだよ」と優しい笑みで応える。


「お前の友達は? 相談所は? 同類は? 沢山、お前の声が届く奴はいる」


 ——だって()に届いたんだ。お前の声が


 ゴツゴツな手で私の心を撫でてくれた気がした。再び鏡を見ると、私が写っていた。女の子の私が。


「声は届く……か……」


 誰かに言ってみよう。届かなかったら違う人を探そう。

 私が届いたと言ってくれたんだから。()に恥じぬような、かっこいい人になるんだ。

この話は中々、大変な事だと思います。世間が否定することを打ち明けるなんて苦しいですよ。

でも、自分にだけは嘘をついたら終わりですよ。誰もが味方じゃなくなる。そんなの苦しいだけですよ。苦しくてもそれを隠している人は沢山いる。まずは苦しい理由を自分に打ち明けて、他の人に打ち明けましょう。

世の中は本当にオワッテルので、共に頑張りましょう


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ