9・奇麗なお菓子、魅惑の肉球
リニューアルに伴い、なんだか色々変わっていて、大変でした。
挿絵も入れてみました。無駄に。
名前のあるキャラは、この話までで、全て出揃います。
基本的に、名前のないキャラは使い捨て(?)で、1話限り、1回しか出てきません。
名前のあるキャラは、他の話に再登場します。
まだ、名前が明らかではない湖賊の少年……もしかして、毎回使い捨てられていて、毎回違う人物で、今回で9人目?
……と言う冗談はさておき、9話目をお楽しみください。
「どうしたものか……」
湖賊の少年はため息をついた。
目の前にいる、二匹の白狐の子供を捕まえられない、空回りな自分の手を見ながら。
すばしっこいうえに、物陰にも入り込む。
そして、何よりも、都合が悪いことに、この肉球が邪魔をする。
白い毛の中に埋まっている肉球のある手のせいで!
湖賊の少年は、もどかしい気持ちになる。
普段は、あんなに愛らしい肉球も、このときばかりは、憎らしい。
そもそも、こんなことになったのは、この二匹の白狐が道具屋の商品を盗んだことに始まる……
いつものように、船の中にある道具屋の主人は、店の商品の在庫確認をしていた。
道具屋の壁に提げている鞄から、チラリと覗く派手な色の包装紙。
船の荷の陰、それを見つめる二つの影があった。
白い狐だ。
村にある小さな祠に住んでいる。
白くてきれいなふさふさの胸毛が生えているのが「房殿」と言う名前で、
玉の首飾りをしているのが「玉殿」と言う名前の白狐の子供である。
わりと、そのままの名前なので、分かりやすいと言えば、分かりやすい。
「あのお菓子、狙うですぅー」
「ですぅ」
房殿は焦らず緩やかに、派手な着色の短剣のような物を取り出した。
「じゃーん。秘密兵器『シュルシュル棒』ですぅー」
『シュルシュル棒』とは、もちろん房殿が勝手に付けた名である。
その棒は、祭りの玩具屋で、よく見かける物である。実際の名前は『カメレオン』という名称だ。
長い紙を巻物状に巻いて作られており、シュルシュルという摩擦音と共に伸びる棒のことである。
紙でできた、ヨーヨーのようなものだ。
紙製の特徴でもある壊れ易さにより、三日も経たないうちに壊してしまう人が多い。
誰でも簡単に入手できるが、気が付くと手元には無い。
そのような極稀な道具を、房殿は今持っているのだ。
房殿は『シュルシュル棒』を振り回した。
棒の先に細工がしてあったらしく、鞄の中のお菓子は、棒に貼りつき、房殿の手に落ちていく。
「お菓子、もらっていくですぅー」
「では、さよならですぅ」
玉殿が、煙の玉を投げる。
「デロデロデロデロデンデロン♪ですぅ」
逃げる方法だけはしっかりと、確保している。
「あ、こら、まちなさい!」
道具屋の主人が気がつき、そう言うまもなく、白狐たちは、どこかに走り去ってしまった。
「ああ、あの商品は、子供にはまだ早いのに……」
誰も追いかけてこないことを確認すると、二匹は、戦利品を分け合う。
「綺麗なお菓子、たべるですぅー」
「奇麗なお菓子、おいしそうですぅ」
一口で、頬張るお菓子。
二匹に、異変が襲う。
「……あははははは……ですぅ」
「まわるですぅ~くるくるくる」
偶然、向こうから歩いてきた湖賊の少年にぶつかる。
「おおと、大丈夫かい?」
「だいじょうぶですぅ!!!!」
妙なハイテンション。
少年は、なんだか嫌な予感がした。
「キツネショーするですぅ」
突然そう言うと、二匹は、手と手を取り合う。
「こちらは、玉殿ですぅー」
「こちらは、房殿ですぅ」
お互いが、お互いを紹介する。
「ふたりは、たまふさ!」
そして、二匹は、左右対称な決めポーズを決める。
玉殿と、房殿は、キツネに伝わる、魔法の葉っぱを、少年の湖賊の頭に乗せてみた。
どろん!と、少年の頭の上で音を立てる。
視界が、白い煙に覆われる。
「わ、何するんだよ」
煙を振り払う。
だんだんと、視界が良好になるにつれて、その身に起きた変化に気がつき始める。
周りの風景が、一変している。
床が近い、天井が高い。
すべてのものが大きい。
「な?一体、何をしたんだ!」
きょろきょろしていると、床についてる自分の手が、ふと見えた。
白いふさふさの毛並み。曲がった獣の爪、肉球。
これは、猫。
白い猫。
「わ、猫になってる!」
思わず、叫ぶ。
「こ、こいつ、語尾がニャーじゃないですぅー」
「……ですぅ」
何を期待していたのかは、大体想像はつくが……
「夢物語の見すぎだね……」
さて、いつまで、猫の姿でいなくてはいけないのだろうか。
白い毛に覆われた肉球の手を見つめ、少年は、ため息をつく。
「どうしたものか……」
そして、再び、ため息をついた。
……結局、元の姿に戻ったのは、一晩たって、朝になってからであった。
少年は、疲れて眠っている幼い2匹の狐を、村にある棲み処に、そっと帰したのでした。
★魚の日記「おかし~~!!」★
おかしをたべると げんきになるよーん
それって あぶないおかし? それって はんざい?
きっと ゆめみるおかしだよーん
ふたごの「どの」どのは にこにこしていたよーん
まだ たくさんかばんに きけんなおかしが はいっているよーん
みつゆ っていうの しているのしれないよーん
あぶないよーん
お祭りで売っているカメレオン(ペーパーヨーヨー)。
この名前を知ったのは、高校生になってから。
それまでは、ずっと、シュルシュル棒と言っていました。
自分は、このカメレオンが大好きで、大抵、2,3本買います。
1本が壊れる頃には飽きるので、余ったやつは箱の中。
半年後くらいに、見つけて、また遊ぶ。それの繰り返し。
今も、1本(新品)、箱の中に入っているはずです。