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7・ひよこぴよぴよこ

葛西臨海公園にある水族館で、まぐろ見てきたよ。

くるくる回るまぐろは、大きかったです。

あぁ、あの狭い水槽の中でも、あんなに速く泳ぐこともできるのかと、関心しました。

ずっと見ていられますよね、魚の遊泳は。

ちょっと疲労気味、でも、テンションはまぐろ。

……という、コンディションのもと、書きました。

湖、唯一の縦帆船は、基本的に、風に身を任せ、湖を遊覧している。

気ままに湖を帆走る(はしる)帆船に用があり、来て欲しい時には、呼ばなくてはならない。

そのための方法で、一番よく使われている方法は、湖岸で船呼びの合図に使う煙を焚く方法だ。

風の方向にもよるが、どんなに遅くても、半日以内のうちに船は、迎えに来てくれる。

島に住む人にとっては、身近で、大切な交通手段なのだ。


今日も、船呼びの煙が上がった。

村ではない、あまり人が寄り付かない森の方角だ。


そこは、霧の森。

常に、霧を生み出している森。

視界が非常に悪く、道には迷いはするが、小さな森。二度と出られなくなるほど恐ろしいところではない。

なぜここだけ、常に霧が立ち込めているのかは謎だし、何があるのか(逆に、何もないのかもしれないが)、詳しくは誰も知らないこの世界の最後の秘境といっていい。

狭い世界とはいえ、まだ、未知なる所はあるものなのだ。


そんな、森の湖の畔に、人が立っている。

風になびく白衣、淡い紺青の髪。その人物は、今まで会ったことがない人だ。

この狭い世界で会ったことがない人に会うことは、めずらしい。

職業柄、様々な場所で人と会い、この世界の誰よりも、人と会っているので、なおさら。


最近、普段、あまり会うことのないような人に逢うことが多くなった。

何かが起ころうとしているのだろうか?


そんなことを思いながら、船を湖岸につける。

乗って来た人物は、中性的な顔立ちで、全てが霧をまとったような淡い白さの雰囲気を持つ人物だった。


「こんにちは、」

その声は、幼い響きがあった。長身ではあるが、その人物が、未だ幼いことを示していた。


「どこまでいきますか?」

湖賊の少年は尋ねる。


「……向こうに、向こうの村に、」

白い指は指し示す。ヤチボカの村を。


「ヤチボカ村、ですね?」


「そう、その村に、迷い雛子(ひよこ)がいるんだ。可愛い(かあいい)雛子……可愛そうな(かあいそう)な、」


「その雛子を、探しにわざわざ村へ?」


「そう。全て、……ミテいたから、」

不思議なことを言う。


森から村はなんとか見えるが、よほど目がよくても、日の光が邪魔をして、小さな雛なんて見えるはずがない。そもそも、人の姿さえわからないのだ。

どうやって見ていたというのだろう。


「特別なんだ。ボクの目は、」

日の光で、青銀色に輝く長い前髪の下、赤い瞳が印象的に瞬く。


その瞳が、船の上を歩く小さな生物をとらえる。

「……おや、湖魚がいるんだね。この船には、」

甲板を散歩しているヨンヨンを見て、言う。


自分のこと話題にさえていることに気がついたヨンヨンは、二人に近づく。

「おいらは、ヨンヨンだよーん」と、自己紹介する。


彼(彼女なのかもしれない)は、微笑むと、「テースキラ、」と名乗った。

そして、細い手はヨンヨンを抱きかかえた。


「この船に、住んでいるの?ずっと、」

テースキラは、ヨンヨンに問う。

「そうだよーん」


「ボクは、霧の森の中に住んでいたんだよ、ずっと、」


話によると、テースキラは、霧の森に住んでいるらしい。

あんなところにも、人が住んでいたのかと思う。彼は、かなり変わった部類の人間なのだろう。


彼のような、あまり村で見かけない人には、たまに会うのだが、普段どこにいて、どのように生活をしているのか全く分からない。

外とあまりかかわりを持ちたくない人たちが集まる秘密の村でもあるのだろうか。

あの霧の森に、モイの地下深くに住む人たちのような。



風は順風。

風をいっぱいはらんだ船は、あっという間に船をヤチボカ村まで運ぶ。


「船、少しだけ、待っててもらえるかな?雛子を、拾ってくるだけだから、」

着たばかりだと言うのに、まるで、雛がどこにいるのか、知っているような風。

船を下りると、テースキラは、何の迷いもなく歩き出した。


数分後、テースキラは、無言で、船に戻ってきた。


手には、小さな毛並みもあまりよくない黄色い雛が。目をつぶって、口を開いたまま、鳴きもしないでただ震え、ている。だいぶ弱っているようだ。

今にも、命の火は消えてしまいそうだ。

「……」

湖賊の少年は思う。もう手遅れかもしれないこの雛は。


しかし、テースキラは、悲しい表情はしていない。

「……この状態なら、まだ、間に合うかも。友人の復元屋なら、まだ、大丈夫なはずだ。この雛なら、」


「復元?モイの?」

復元屋といえば、ひとつしかない。

あのモイ地下街の最下層に住む、変わり者の復元屋のことだろう。

復元屋にならコップを直してもらったことがある。


「彼に会ったことがあるのか。なら話は早いね、」

「でも、雛子を?」

湖賊の少年は、気になって仕方がないので、ついて行ってもいいか、尋ねる。


「かまわないよ。べつに、」


今すぐにでも、出航したほうがいいだろう。

雛は、あまり良い状態とはいえないのだ。


モイはヤチボカの対岸、風向きは、悪いことに、逆風気味。

船は、順調にモイまで……とはいかない。

風が吹いてくる方向に向かって、帆船は、帆走らせることはできないのだ。

うまく帆の向きを変えながら、可能な限り風に向かって切り上がりながら、ジグザグに、進んでいくしかない。

それは、それなりに時間がかかってしまう。


ヨンヨンは、雛が心配になり、テースキラがいる休憩室へ行く。

休憩室にはテースキラ以外の人の姿はない。

大半の船員たちは、今、甲板で帆を操作するため出払っているのだ。


「ひよこ、だいじょうぶよーん?」

休憩室に飛び込んだ、ヨンヨンはそこで見た。

テースキラの瞳が、くるくると、輝いているのを。身体が、白い霧と化しているかのように揺らめいていたのを。

「よーん?」

「……、あぁ、ヨンヨンちゃんか、」

いつの間にか、テースキラの体は戻っている。何事もなかったかのように。

ヨンヨンには、何がなんだか分からなかった。

「なにしてたんだよーん?」


「大気循環に外部から干渉して、空気の流、」

そう途中まで言ってはみたものの、テースキラは、どう説明したものかと、考えているようだ。


「……つまり、風と友達なんだよ。ボクは、」

テースキラの赤眼は細く、微笑んだ。

「これは、秘密だよ、ヨンヨンちゃん。ボクと君、ふたりだけの、」



……風の向きが、変わってきている。

「この風ならば、思ったよりも速く着きそうだ」

湖賊の少年は、一安心する。

不思議なことに、今日は、風の流れが味方している。天が雛を助けるためなのか。

「途中で、また風が変わらないことだけを祈ろう……」

今は、あの雛のためにできることといったら、それだけしかないのだ。



モイ地下街に着いた。

相変わらず、モイは酒場のある商店街だけが賑わっている。

地下1階のフロアを過ぎてしまえば、そこは、薄暗く、人の姿はない。

自分たちの足音だけが響いている。


『なんでも復元します、復元屋』という古びた看板が見えてくる。

地下街の最下層だ。

そこには、ぽつんと、一軒の店がある。相変わらず入りづらい雰囲気の薄暗い店である。


人の気配に、店の奥から、アラクが出てくる。

「ここは、復元屋。コップや、剣はもちろん、生き物も、限りなく元のとおりに、復元しますよ……」

相変わらず、不健康そうな、眠そうな黒い瞳が気だるそうにしている。


「む、誰かと思えば。……君が、あの森から出てくるとは、めずらしい」

表情一つ変えず、昔からの友人との再会を懐かしんでいた。


「過去の記憶が騒ぎ出して……大気が震えている。運命の星の気配にいずれたどり着く。この小さな世界が湖が揺らいで、瞬いていて、」

「そうか」アラクは、そう、短く言った。

意味不明だが、ただそれだけの会話で、多くを語らなくとも、この二人には、伝わる何かがあるのだろう。


アラクとテースキラ、二人並んでみると、そこは不思議な空間に感じる。

日のあたらない地下に住む生物の世界のような。

二人の肌は、濃く暗い地下街の中にあっても、闇に染まることなく白く淡い。

類は友を呼ぶ。湖賊の少年は、そう思った。


「それはそうと……」

アラクは、本題に入る。


テースキラから、弱った雛を受け取った。

「雛子の復元か……やってみよう……」

そして、その雛を机の上にそっと置いた。


「この動かなくなった、雛子……」

アラクは、雛に手をかざす。

どんな仕組みで、どんな働きによって、それが起こるのかわからない。


「あっという間、このとおり、もとどおり!」

やはり、注意深くよく見ていても、分からない。

息も絶え絶えであった雛が、もう元気よくひよひよと歌っていた。


雛は、無事に復元された!


それにしても、「ひよ、ひよ、」と棒読みに鳴く雛……

何か、何かが、違うような……


「『普通』というのは、先入観の問題なんだよ。これは、間違いなく雛子であり、限りなく雛子に近い……」

アラクは、そう言うのだが、湖賊の少年は、何か納得できないでいた。



★魚の日記「それって、ぴよこ?」★

かぜさんと おともだちの てーすきらさんが

ひよこさんを よみのくにから つれもどす

ふしぎで そーだいな ものがたり?

だったような きが するよーん


あんまり ひんぱんに おともだちに たのみごとを したのが わかっちゃうと

しすてむさん?とか ししょうさん?に おこられちゃう らしいよーん

だから ふたりだけの ひみつのやくそく なんだってよーん

でも おいらには むずかしくて よくわからなかったよーん


挿絵(By みてみん)

ひよこといえば……『卵が先か、鶏が先か』と言う問いがありますよね。


卵から生まれるのがひよこでありそれは、鶏になる。

しかし、その卵を産んだ親は、鶏の1つ手前の生物であって、鶏ではない可能性がある。

そのニワトリの卵を産んだのは、ニワトリ一歩手前の雄と雌の鳥。

そうかんがえると、親が何であろうと、卵に鶏になる生物が入っているのだから、卵が先と言うことになる。

その卵から、ニワトリの歴史は始まっていくのです。


そして、鶏の卵は確実に鶏になるけれど、

鶏が産む卵は、鶏にならないこともあるのではないかと思うのです。

1万年後とかには。親は鶏だけれども、それが産んだ卵からは、鶏ではない生物が生まれる可能性だってあるのです。


しかし、鶏の卵になるためには、雄鳥の精子と雌鳥の卵子が卵よりも先……と、考えると……?

思考はおわらない……

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