4・動くリンゴ
船長のお人よしは、船の中だけに限らず、村でも発揮されるので、そのおかげか、船員だけではなく、
村人たちからも『湖賊の何でも屋さん』と親しまれている。
少年のほうも、それを分かっているので、『職業:何でも屋』という肩書きを自分につけていて、『船長』と言われるよりも、
『何でも屋さん』と親しみをこめて言われたほうが嬉しく思っていた。
さて、島では、りんごがなる季節になった。
湖の畔に住む人々は、りんごが大好き。
りんごは、森になるのですが、村から歩いていくには、少し遠く、しかも、今の時期、魔物たちも、この森に集まる。
魔物もりんごが好きなのだ。
しかし、そこで、なんでも屋の登場!
船があるので、村から人を乗せて、森の近くまで簡単に、安全に、行くことができる。
船で、人を森へ送り届けるだけではなく、魔物から依頼主を守る、その護衛をかねて、りんご取りの手伝いをするのも、仕事の一つ。
今の時期、大人気のりんご狩りツアー。
今回一緒にりんごを採るのは、湖に住む貝殻タコさん。長い足と、吸盤で、優しくりんごをつかむのだ!
りんごの森に行くことを知った湖魚のヨンヨンは、「おいらもいきたいよーん」と、言って聞かない。
好奇心が旺盛な魚なので、ついて行きたいと言うのは、いつものこと。
お出かけ用の移動式水槽(リュックサック型・軽量タイプ)に、ヨンヨンを入れて、少年は背負って出かける。
さぁ、湖賊と湖魚と湖蛸のりんご狩りが今、始まる。
森と言っても、小さい世界の森。そんなに広くはなく、迷うこともない。
明るく生命力にあふれた森なのだ。
そんな、森を歩いていると、早速魔物が、草むらから、登場した。
緑色のりんごに似ている生物、ころり転がる巨大な青りんご。少年の背丈の半分はあるだろうか。
「きゃーでたでた」タコの触手が湖賊の少年を襲う。
「ど、どうするよーん?」
「とにかく、剣でたたいてみよう」
タコにからみつかれながらも、少年は、唯一落ち着いてる。
この魔物は、積極的に人を襲うといった凶暴な魔物ではないことを知っていたのだ。
つつくように、魔物を切った。
りんごは、あっさり、半分にすぱりと切れた。
むくむく。と、半分になったりんごの魔物は、不気味に揺れる。
切り口が、泡立ち、新たな身体が形成されていく。
「やっぱり、増えたな……」
生半可な攻撃は、この魔物の前では無意味である。
というか、タコが絡み付いていて、邪魔で思うように攻撃ができないのだ。
「にげるよーん?」
ヨンヨンの意見に、「逃げよう」と、全員一致、すぐさまその場から全力疾走する。
戦わないで逃げるもの、賢いやり方。
なにも、戦士や狩人のように魔物を積極的に狩ることが生業ではないのだ。
目の前に現れただけで、襲われたわけでもなく、誰かに頼まれてもいないのに、無理に命を奪うことはないのだ。
決して、湖賊が弱いわけではない。
湖に生きる男、湖賊。
戦士や狩人と言った戦いの本職には劣るが、それなりに実力はある。
『念のため』、『強く』、言っておくけれども……本当だよ。ほんと……
「あんな、まものごときで、にげるとは、なさけないよーん。めちゃ、よわパーティだよーん」
魚は、少年に背負われているだけなので、気楽である。
「なによ、逃げようって、最初に言い出したのは、そっちじゃない」
魚とタコは喧嘩を始める。あぁ、海洋生物大決戦、いや、湖洋生物大決戦。
「し、また魔物が来てしまうぞ」
少年は、あきれながら、そう、言う。これは、静かになる呪文。
こんなことが、ありながらも、無事にりんごを採ることができたのでした。
そして、帰りは、また、同じ道を通らなくてはならない。
そして、また、帰りにも、あの魔物に……
毎年の事ながら、りんご狩りは楽ではないのでした。
★魚の日記「かいき うごく リンゴ」★
ばんゆう いんりょくも まっさおの あおりんご みつけたよーん
あおりんごは うごくから かってに おちても ふしぎは ないよーん
ばんゆ〜 いんりょく はっけんの うわさは うそかもしれないよーん
あおいりんごは うごくし きいろのたいようは おちてこないよーん
あの つくえのうえにある あかいりんごは いつ うごくのかと
いまから とても たのしみに おもうよーん
わくわく
でも やっぱり こわいから うごかないで ほしいよーん
4話目まで書いて……
なんだか、まったりしすぎていて、つまらないかな……
りんごといえば、ニュートン。
ニュートンの「りんごの逸話」は、創作の可能性があると言うのは、知っている人は知っていること。
しかも、その逸話も正確に覚えている人もあんまりいない。
(自分もその一人、だいぶ、はしょって覚えている)
自分が覚えている範囲では、
ニュートンは、「りんごが落ちた」から、重力や引力といった『力』の存在をひらめいたのではなく、
「りんごは落ちるのに、何であの空の月は落ちてこないのか」と疑問に思って、
そこから思考を展開していき、『力』について考えていく話ということぐらい。
はしょりすぎ♪
知っている人は、もっと詳しく知っているであろう雑学。