3・消えたモップ
「なんも船長」という駄洒落が船乗りたちの間にはあるらしい。
これは、船長が悪天候等の非常時や出入港の時以外に、これといって仕事がないからなのである。
この帆船の船長も、例外ではない。普段は本当に仕事がない。
少年船長は、操舵の技術はそこそこあるものの、まだまだ体力もない子供で、
実際のところ、船の仕事の面では、あまり役に立たない。
だから、実は船長という役職は、実は一番都合良く、しっくりくるのかもしれない。
しかし、仕事が無いからといって、いつも何もしていないのかというと、そうではない。
困っている人がいると、助けずにはいられない性格ということもあり、気がついたら、何か頼まれたことをしている。
そういった経緯もあり、専らの仕事は、雑用係と同じなのである。
今日は、船内で、消えてしまった数本モップの捜索をしている。
そんな、ささいなことでも、いやな顔せず、こなすのだ。
船には、客や船員がいるので、雑談がてら話を聞いてみると、子供たちがモップを使って、甲板でチャンバラをしていたと言う情報が手に入った。
船旅は、子供たちにとって、ちょっとしたイベントである。
かくれんぼ、イタズラ、探検と称して、どこにでも入り込む。
気をつけていないと、見張り台のはしごまでよじ登ってしまうのだ。
それくらい元気すぎる方が丁度いいのかもしれないが。
甲板には、すでに子供たちはもういない。しかし、その代わりに、モップが、甲板に散らかっていた。
遊び終わったら、元の場所に戻して欲しいものだと思いながら、拾い集める。
数を、数えてみると1本足りなかった。
そういえば、この場所に来た時から、少し何か違和感を感じている。
少年は辺りを見回した。
「……」
その違和感の正体を知ったとき、最後のモップを見つけた。しかし、見つけたモップは、柄の部分だけ。モップは折れていた。半分に。
チャンバラをしていて、折れてしまったのだろう。
モップの柄があった場所は、ロープなどを巻いてあるビレイピンが並んでいる場所。
いかにもこれはビレイピンですよとばかりに、モップの柄が船の縁に立てかけられていた。
ご丁寧に、ロープまでそれっぽく巻いてあった。
巻いてあるロープも船では使わないロープで、巻き方も適当なので、少年は、違和感を感じ、気がついたのだが。
「……証拠隠滅の知恵だけは、一人前なんだから……」
モップの柄を回収する。
あとは、モップの房糸の部分。それは、近くには、見当たらない。
「さて、どこだろう」
最悪の場合は、湖の中だろうと少年は思っている。
実際その通りだった。
子供たちに折れた柄の証拠を突きつけて、白状させたら、案の定、「湖に捨てた」という回答をもらった。
叱るのもほどほどにして、子供たちを解放した。
湖に還ってしまったモップ。
柄だけでは、それはモップではなく、ただの折れた木の棒。どうがんばっても、もはや、モップには戻らない。
「1本くらい足りなくても何とかなるか……」
船の中にある道具屋に、注文すれば数日後には、届けてもらえるし。
とにかく、折れたモップで、子供たちに怪我がなくてよかった、よかった。と、そう思うことにした。
★魚の日記「おれちゃった」★
もっぷさがしを したらしいよーん
もっぷは ばらばらになったり
ろーぷに うまったり いそがしいよーん
そして ふさふさが みずうみに なげこまれたらしいよーん
ふさふさは およげないから もう もどって こないみたいよーん
もっぷは みずうみの いちぶに なったけれど
もっぷのゆくえが てんごくだと わかったから よかったよーん
どうでもいいことですが、
海賊船の船長の片目がつぶれているのは、あまりに暇なために、
望遠鏡で太陽を見てしまうからだと言われています。
本当かどうかはしらないですが。
両目を失った海賊いるのかな……
いや、さすがに、学習するかw
望遠鏡を持っているのは船長だけ。(望遠鏡は権力の象徴らしい)
でも、望遠鏡を覗いてもやっぱり海。
ずっと、水平線なんだもの。退屈も退屈だよね。
海は、何もないから、太陽も見たくなるよね、きっと。