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2・船の上の湖魚

船には、人懐っこい性格で、いろいろ知りたがる、好奇心が旺盛な湖魚がいる。

名前は、ヨンヨン。「よーん」が口癖だから。そういう安易な理由、そのままな名前だ。


ヨンヨンは、たまに、水槽から抜け出しては、船内を歩いている。

エラ呼吸だけではなく、肺呼吸だってできるのだ。

乾燥にだって強い。炎天下や極端に乾燥した場所でなければ、1日くらいは、外にいても平気なのだ。


しかし、赤子の頭くらいの大きさのヨンヨンは、階段は降りられるが登れないし、ドアも開けられないので、行くことができる場所は限られている。

同じ階か、下の階に行くか、しかできない。

そして帰りは、大抵、誰かに、家である水槽まで連れて行ってもらう。


人語を理解するので、帆船に乗ってくるお客たちとも、時々、話をしている。

ヨンヨンは、船の人気者である。



ヨンヨンは、今日は、厨房を覗きに行っている。

厨房では、数人の料理人が各自自分の仕事をしていた。

食事時が近いのだ。


「ああ、しまった。魚を切らしてしまった」

食料の保存庫を見て、料理長が困っている。

船には、常に20人くらいの船員がいる。そして、お客として乗せる人が多い時には、すぐに食料はなくなってしまうのだ。

長い航海をするわけではないので、保存食もあまり準備していないのだ。

逆に、食料のストックがすぐなくなるので、いつも野菜や魚を仕入れることになり、新鮮なものが料理に使える利点もあるのだが……


ふと、ヨンヨンと料理長は目が合った。

「おいらは、食べてもおいしくないよーん」

ヨンヨンは、飛び跳ねる。


「はっはは、ヨンヨンちゃんは、食べないから大丈夫だよ」

料理長は、魚の頭を撫でる。

ヨンヨンを見かけるとなぜか撫でたくなる、そんな欲求にかられるのだ。

「おいら、あせったよーん、よかったよーん」


「今日は、お客が急に増えたからなぁ。うかつだった……」

しかし、料理長は、いい考えが浮かんだ。

ヤツにたのもう。こういうときのために、あの釣りバカがいるのだ。

急に魚が必要になっても、ヤツがいる限り大丈夫なのだ。


しかし、誰が、ヤツの元へ行くのか。

厨房の人は、誰も手が離せない。

しかし、そんな時でも、大丈夫。


料理長は、厨房にある船内の連絡回線で、ヨンヨンの飼い主である船長を呼ぶ。

「あの釣りバカから、魚をもらってきてくれないかな。きっと、今日も、甲板で釣りをしているよ……あと、ついでに、君のヨンヨンが、ここに来ているから、回収も頼むよ」

回線を切ると、料理長は、別の料理をつくりはじめた。作るものは、何も魚料理だけではないのだ。



連絡を受け、船長である少年は甲板へ行く。

こういう雑用を頼まれるのはいつものことなのだ。


2本のマストに白い帆をたたえた縦帆船は、太陽によく映える。

湖を見れば、今、どこにいるか、どこに向かっているのか、すぐにわかるほどに。

こんなに天気が良いと、釣りもしたくはなる気持ちは分かる。


少年は、いつもの場所で、釣りをしてさぼっ……いや、食料調達をしている船員の元へ行く。

食料調達という立派な仕事といえば仕事なので、少年は釣りに関しては、大目にみている部分はあるのだが、彼本来の仕事は、さぼらないでほしいと、常々思ってはいる。


「調子はどうだい?」


どうどうと釣りをしている壮年に話しかける。


「魚を分けてくれないかな?料理で使いたいらしいから」

「あいよ!お安い御用、今日もたくさん獲れたから、持ってきな!」

バケツいっぱいの魚を受け取る。釣りの腕はなかなかなのである。


「こうやって、湖風の中、釣りができるって、すばらしい。釣りは、誰でもできる簡単な娯楽だな」

「娯楽も良いけれど、仕事もね」

「あいよ、船長!」


まぁ、返事だけなのは、分かっているのだけれども。


「これだけあれば、大丈夫だろう」

少年は、魚を厨房に届ける。


「おお、ありがとう、いつもすまないね」

料理長は、魚を受け取りと、調理にかかる。


「とんとんとん♪包丁は、太鼓の音を奏でて♪

シャキシャキシャキ!野菜は、フレッシュ1番♪リフレッシュ2番♪

ぱふぱふぱふ♪ぽんぽんぽん♪小麦粉舞う、粉雪のワルツ♪

じゅーじゅーじゅー♪ジューシーな旋律は舞い降りる♪湖の幸!」


料理長は、歌いながら、次々に魚料理を作り上げていくのでした。



★魚の日記「こげつくくらいがちょうどいい!」★

とんとんしゃきしゃきぱふぱふぽんじゅー

みずうみの さちの おとだよーん


おいら さかなだけれど

そ そんな メで みないで ほしいよーん

おいらを たべても おいしくないよーん

おいら ないちゃうよーん


こらーげんなんて たっぷりじゃないよーん

うろこが とても かたいよーん

船については、あんまり詳しくは知らないけれど、帆船には、縦帆船と横帆船があって、逆風でも小回りがきく機動性が高いのが縦帆船。

風を効率よく推進力に換えられ長距離航海に向いているのは横帆船。

だいたいそんな感じらしいです。


今回、縦帆船を選んだのは、湖だから、効率よりも機動性を重視。そんな安易な理由で選びました。

船については簡単に調べたのですが、船に詳しい人が見たら、突っ込みどころ満載な偏った知識なんだろうなぁ。


ちなみに、帆船は、トップスル・スクーナーとか、バーケンチンの造形が好きです。

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