11-1・ゆきだるま中
合言葉は、「たまふさよんよん♪」(意味不明)
前回は、少しまじめだったので(そうかしら?)、今回はほのぼの系な日常を。
ほのぼのまったり日常の一コマだ!
島と湖に訪れる短い季節、冬。
数年に1度しか訪れない白い精霊に、子供たちは喜び、白銀の世界を一日中駆け回る。
甲板には、船員とか、船に乗ってくる子供たちが作った雪だるまがいくつかある。
様々な大きさの、色々な顔の雪だるまが、たたずんでいる。
魚であるヨンヨンは、寒いのが嫌いなのだが、空からやってくる白い形の結晶には、興味津々で、
暖かな船内の、霜が溶けて滴り落ちる窓辺から、外を眺めて、そこを離れようとしない。
「外にある雪だるま、動いたような気がするよーん」
ヨンヨンはそれが、気になって仕方なくなってしまう。
寒いのは嫌いだけれど、好奇心のほうが優るそんな湖魚のヨンヨン。
「外に出たいよーん、ドア開けてよーん」
この船の船長である少年に、頼み外へ出る。
凍てつく、痛みを感じる風が肌を刺す。
「さ、さむいよーん」
「部屋に戻るかい?」
「だいじょうぶだよーん」
「あまり、無理はしないでね」
少年は、ドアの前で、ヨンヨンを見守ることにした。
「……そういえば、ヨンヨンは、雪は初めてか……いや、生まれたばかりの頃、1度体験しているか。
きっと、覚えていないだろうけれど……」
白い息を吐きながら、少年はそう思った。
そう言う少年も、雪は3、4回くらいしか見たことがない。それほど冷えこむことは稀なのである。
数年に1度、空に浮かぶ太陽の光が弱り、本来なら、雨として降りてくるはずの水滴が、
氷の結晶となって地上に降ってくると、聞いたことがある。
大人たちは、太陽を修理するために、神様が光と熱を弱めるからだと、冗談交じりに、
話してくれたっけ。
「修理」という言葉に、モイの最下層に住んでいる復元屋のアラクをなぜか思い出す。
もしも、あの太陽がこのまま弱り、光を失うことがあったら、アラクは復元できるのだろうか。
そう脳裏に浮かんできた。
「……なんとなくできてしまうような気がする」
それほど、彼は、神秘的で不思議な気配を感じる人物なのだ。
ヨンヨンは、雪かきですっかり雪のなくなった甲板を進み、動いたと思われる雪だるまの前に立つ。
それは、おかしな形をした白い雪だるまだった。
「よーん」
「……」
ヨンヨンは、雪だるまに呼びかけてみたが、雪だるまは、何の返事もしない。
普通の雪だるまだった。
「……ぅ?」
ヨンヨンは首をかしげる。
「……よーん?」
今、雪だるまが、何か、しゃべったような気がする。
ヨンヨンは、雪だるまに体当たりをして、雪だるまを倒し、壊してみる。
「よーん!?」
ヨンヨンは、驚く。誰かが、雪だるまの中にいた!
中から、2匹の白狐、玉殿と房殿が転がり出てきたのだ。
2匹は、変な布の服を着ている。
「も、もっと、や、やさしく、こ、壊して欲しかったですぅ……」
「で、ですぅ~」
「だ、大丈夫かよーん?」
「と、凍死するんじゃと言う、し、心配は、む、無用ですぅ!」
「こ、この服は、い、家に代々伝わる、さ、寒さに強い素晴らしい、ふ、服なのですぅ~」
あんまり寒くないから、ずっと、じっとしていたら、雪だるまになってしまったらしい。
ほのかにカタカタ震えている2匹の白狐。
「……温かい、お風呂に入るかい?」
事の成り行きを、ずっと見ていた湖族の少年は、凍える3匹を船室に連れて行くのでした。
★魚の日記「ゆきだるま?」★
「どんなに じょうずに かくれても♪
さむさで あんよが しもやけよーん♪」
ゆきは ようせいの はねの きらきらした
はばたきから うまれると おいらは おもうよーん
さむいゆきのうえで こごえるきんぎょは
あかくそまって がらすのようだよーん
かちかちだよーん
おゆ かけたら とけるか?よーん
よ よーん……
おそろしい そうぞうしちゃったよーん
雪。冬。
大好きな季節です。
自分の故郷は東北なのですが、冬、列車に乗るときは、気をつけないといけない事があります。
開閉ボタンのある列車は良いのですが、半自動のドアになるものがあります。
半自動ドア。駅に着いても、数センチしか自動では開かず、あとは、手でドアを開けて外に出るタイプの列車です。
田舎の路線は、誰も降りない時もあるので、無駄に寒い空気を入れないための工夫です。
ちなみに、他に降りる人がいなかったら、ドアを、閉めるのがちょっとした優しさです。