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瞬撃の魔剣士  作者: Legero
誅世の書篇
27/46

3.

2024/3/4 セリフが厳密でなかったので微修正

2024/4/21 微修正

2024/5/12 数字を漢数字に変更、三点リーダの書き方を変更

 ゼロたちが宿で食事を始めた、まさにそのころ。夕暮れ時のドリア王国王城にて。二人の兵士―今度はしっかりと素顔を晒している、正真正銘ドリア王国の兵士である―に連れられた四人の男女が、縦に筋の入った大理石の柱が存在感を放つ、荘厳な、透き通る白の廊下を連れ立って歩いている。彼らの間に流れる空気は程よく弛緩しており、二人の兵士たちも含めて、彼らがよく知り合った仲であり、この場所にも慣れ親しんでいることが窺い知れた。


 緑の髪色に、素朴な装備を身にまとう、一見して普通の村娘にも見える少女が、興奮したように言う。


「それにしても兵士さん! あの屋台の……なんて言うんだろ、名前分からないんだけど、パンに灰豆(ヒーズ)とかピリザとかルイフとか、肉とかいろいろ挟まってるあれ! すごい美味しかったし、値段も破格っ! だし……」


「ああ、フィズのことですか。建国記念祭の前後四日間の間、王宮から屋台を出しているのですよ。何でも、建国者のリゼルタ様が好んで食していた食べ物であるとか。」


「そうだったんですね! はぇ~。」


 得心して頷く彼女に、先に答えた兵士と違う兵士が、気軽な口調で尋ねる。


「ということは、リィンヴァルナ様はドリアの建国記念祭に来られたことはないのですか?」


「そうなんですよ~! みんながお祭りいってきたって話は聞いてたんですけど、なんかそういう時に限って体調崩したり別の用事ができちゃったりで。」


 少し落ち込んだ様子のリィンヴァルナを、特徴の少ない顔をした、茶髪の青年が茶化した。彼の服もまた、普通の村人に見える素朴なものだ。


「リィはこういうお祭り大好きだもんな。」


「え~? 確かに、そうだけど……でもでも、ラーナなんてすっごい楽しそうにしてたじゃない!」


「そうですね。私としては、貴方がいてくださったほうが、こういった催し物は素直に楽しめますので。……普段は、あんなにはしゃいだりしないのですよ? 本当ですよ?」


 ラーナと呼ばれた金髪の、高貴な印象を与える白と青の豪奢な、しかし動きやすそうな鎧を身にまとう少女が、若干頬を赤らめて言う。残念ながら、この様子ではあまり説得力がない。当然のように、彼女は二人に下町でのはしゃぎようを掘り返されては赤面させられていた。


「……建国記念日、のう。」


 騒ぎに混ざらずに、彼ら五人から一歩離れて歩いていた紫髪の女性がぽつりと言う。つばの広い帽子から垂れる得体のしれないアクセサリーが、黒いローブを背後に揺れる。たまたま最後尾にいた兵士が、彼女のほうを振り向いた。


「どうかしましたか、サリア様。」


 サリアと呼ばれた女が顔をあげる。若い女のように見えるが、顔の半分が仮面に覆われて見えない。


「なに、少し気になっただけじゃよ。二日後は新生ドリアの王族による新たな統治が始まった日。であるのに、初代女王リゼルタの好物を喰らうのか、と思うてな。」


 意図が読めなかったのか、ぽかんとした表情で彼女を見つめる兵士。その様子に勘違いしたのか、その声音に若干の焦りが混じる。


「ああ、その、別に主らを非難しているわけではないのじゃ。ただ、リゼルタの血脈はすでに途絶えておるのじゃろ? それでもかの者が今もなお、ドリアの始祖であることは変わらないのか、と思うただけじゃ。他意はない。」


「ああ、そういうことでしたか。いえ、別に怒っているわけではないのですが……。」


「優しいのう、おぬし。」


「ははは……そういう意図ではないってこと、分かっていますから。」


 そんな会話をしながら、城内のある場所にたどり着いた一行。二人の兵士は四人からそっと離れ、恭しく眼前の扉を手で指し示す。重厚な扉には波打つ海にも燃え盛る炎にも見える金色の装飾がなされ、この先にいる人物がやんごとなき身分であることを暗に示している。


 その扉についたノッカーを、青年が掴み、きっかり三回。扉に軽く打ち付ける。時を置かずして、その重厚な扉が内に向けて音もなく開かれた。一行は無言で部屋の中に入っていく。おそらく扉を開けた人物であろう、二人の女性が彼らに向けて頭を下げた。


 極端に色の少ない部屋だった。窓から取り込まれた光が、室内を気休め程度に白く染める。あたり一面に書類が山積みになっており、その中心に置かれた執務机の向こう側から、金髪をわずかに乱れさせた青年が四人のほうを見つめていた。服装、体形、そして髪質、気品。彼のたたずまいこそがそのやんごとなき身分を証明している。


 客人の青年が、口を開く。


「傭兵団『緋色の翼』、ただいま到着しました。」


 その言葉と同時に、四人はその場に跪き、深く頭を下げた。


「ああ、よく来てくれた。顔をあげてくれ。」


 青年の気軽な言葉に反応し、四人は各々の調子で頭をあげる。礼が行き届いた所作とはとても言えないが、青年がそれを気にする様子はない。


「召喚に応じてくれたこと、感謝しよう。」


「当然のことです。殿下も、お元気そうで何よりです。」


「ああ、これも君たちのおかげだ。この前君たちが進めてくれた、屋香(おっこう)、あれは素晴らしいものだった。寝不足の頭痛が簡単にひいていったよ。ありがとう。」


「勿体無いお言葉です。」


「ふふふ。これからもなにかいいものがあったら紹介してくれ。庶民の間には、我々が知らない便利なものが沢山あるからね……。」


 そう言って、青年は机の向こうでそっと足を組み替えた。


「さて、今回、君たちを呼んだのはほかでもない。二日後に、我々ドリア王家から竜崎家への、とある書物の引き渡しがある。君たちには、王宮の兵士団と一緒に、その引き渡しに立ち会ってほしいんだ。」


「引き渡し、ですか。」


「ああ。……『誅世の書』のことは、君たちも知っているね? わが国で封印を施されている、災いの書……二か月ほど前、当代の竜崎の巫女が訪問してきた時に、これについて一つ提案をされたんだ。ぜひともこの私に、あの忌まわしき書を回収、そして処分させてほしい、と。あれは我々魔族の身内が犯した罪の証だ、と。相も変わらず彼女らしい、随分と迂遠な言い回しでね。」


 客人たちがわずかに身構えるが、本人たちにその自覚はなさそうだ。最も、身構えるのも無理のない話である。竜崎家に絡んだ話は、何かと大ごとになりやすいのだから。


「我々としても願ったりかなったりな申し出だった。封印をかけているとはいえ、あんなものをわざわざこちらで保管しておく意味はない。むしろさっさと手放したいくらいだ。いつ何時、あの書が再びこの世に災いをもたらさないとも限らないのだからね。」


 そう言いながら、彼は隣に山と積み上げられた資料の山から、おもむろに一枚の紙を抜き出した。対面の四人に向けてそれの表面を向けひらひらとふる。そこには、『誅世の書の引き渡しに関する留意事項』といった内容が、小さな読みにくい字でびっしりと書き込まれていた。


「というわけで、私はこの大切な取引に関わる全ての権限を父から譲り受け、変に時間をかけずにさっさと取引を終わらせることを決めたのさ。繰り返しになるが、『誅世の書』、あれは一刻も早く処分されるべきものであると、私は思っている。あまり予定を先延ばしにして、余計なところに情報が漏れるのも困る。それに個人的にも、三日後の建国記念祭に懸念を残したくない。私としては、少なくともここに積んである仕事を片付けて、気持ちよくその日を迎えたいんだ。と、いうわけで。」


 そう言って、彼は再度足を組みなおした。四人はその様子を身動き一つせずに見守っている。


「この引き渡しを確実なものとするために、君たちにはぜひ、我々に協力してもらいたいというわけだ。引き渡しを行うということはすなわち、今あの書物にかけてある封印を、一時とはいえ解かなければならないということだ。ならば、万が一の事態を見据え、備えを万全にしなければならない。そこに、君たちのような実力のある傭兵団の協力があれば、今回の引き渡しは必ずや成功に終わることだろう。」


 そう言って、彼はじっと対面の青年を見つめる。鼻の上に組まれた手から覗く眼光は鋭く、青年の感情を感じさせない視線とぶつかりあう。


 青年がゆっくりと言葉を選びだす。


「……引き受けたい気持ちはやまやまです。殿下には今まで、何度もお世話になってきましたから。ですが……竜崎家には、あまり関わりたくありません。」


 そう言って、彼は後ろに控える三人にちらりと視線を向けた。三人は、じっと青年のほうを見つめているばかりで、特に何かを言おうとはしていない。


 ドリアの王子は、さもありなんと言わんばかりの表情でうなづいた。


「まあ……そうだろうね。特に今代はまあ、なかなかに大変だ。なんといっても、あの竜崎呉羽が残した悪意に立ち向かおうとしているのだからね。」


 その言葉を聞いて、青年は露骨に嫌な顔を浮かべて見せる。


「……それですよ。折角封印されている『誅世の書』を回収するだなんて。千年の時を超えて悪意をばらまく化け物に、あくまでただの人でしかない存在が勝てるとは思えません。無謀です。」


 王族に対して失礼であると思われても仕方がない振る舞いであったが、とうの王子本人はそれについて特段気にした様子はない。厳かな空気の中であっても、そのささやかなやり取りから、二人を結ぶ絆の強さが浮かび上がってくる。


 青年は、そしておそらく王子のほうも、その悪意……『誅世の書』を放置したことで何が起こるか、ということは、竜崎董千が伝え聞いた遺言の断片すらも知らないのだろう。何も知らないからこそ、彼ら二人の判断が行き着く先は、それぞれ大きく異なったものとなる。


「うむ。そうかもしれない。だが、そんなことは本人たちも分かっていると思わないかな? 竜崎家は、そこまで愚かではないと私は思っているが。」


「……つまり、勝ち目が薄いと分かっていながらも、挑まなければならない理由がある、と。」


「私はそう思っているよ。」


「……一理あるかもしれません。ですが、それで事態が悪化したら? 『勇者の悲劇』と同じように、また国が崩壊するような惨事が繰り広げられたら? 封印されてもう百年はたつ、と殿下は言いました。百年何もなかったのなら、もう少し様子を見ても……。」


 慎重な青年の意見。これもまた一理あると王子に思わせるだけの説得力があったのだろう。彼は静かに頷いた。


「まあ、そういう意見もあるだろう。だが君も、僕とさほど変わらない意見を持っているはずだ。すなわち……あの書を処分、ないしは破壊することができるに越したことはない、と。存在しなければ、悪用のしようもない。逆を言うならば、存在する限り、それは災いと転ずる可能性がある、ということだ。」


 そう言って、彼は青年に形の良い指を力強く突き付けた。青年の視線が自然とその先端に集まる。


「はっきり言おう。結局のところこれは、誰かがやらないとことなんだ。君たちには、その『誰か』たりえる資格があると、僕は思っているよ。」


 しばしの、本当に長い沈黙ののちに、青年は決意したように小さく頷いた。


「分かりました。その依頼、受けさせていただきます。」


 王子もそれに頷きで答える。口元には満足そうな笑みが浮かんでいた。


「うむ、感謝するよ。」

 ~~~~~~~~~~








 ~~~~~~~~~~

「……さて、話もまとまったことだし……みんな、楽にしてもらって構わないよ。」


 王子の言葉と共に、ピンと張りつめていた部屋の空気が一気に弛緩する。一世一代の大博打(おおばくち)でも打っているのかと言わんばかりの表情が、先ほどまでの廊下と同じ穏やかな表情に変わる。肩の力を抜き、小さく深呼吸をした青年が、王子に声をかけた。


「ふう。では改めて。久しぶり、アルフレッド。」


「ああ、久しぶりだなライバート。」


 そう言って席から立ち上がったアルフレッド王子がつかつかとライバートに歩みより、そして二人は握手を交わす。そして、王子の視線はそのままライバートの背後に向かった。


「元気そうだな、ラーナ。サリアに、リィンヴァルナも。」


「お久しぶりですお兄様。」


 彼の気さくな言葉にラーナが答えた。残りの二人も次いで挨拶を交わす。


 中でも緑髪のリィ、リィンヴァルナの変わり身の早さは素晴らしい(・・・・・)ものであった。気づけば彼女は何処からか引っ張り出してきた椅子に腰を下ろし、冗談交じりの―だと思われる―不服な声をあげる。


「も~、王子様、取引の時のかたっ苦しい口調やめてって言ってるじゃないですか~。あれされると怖いんですよ、体がキュ~ってなります!」


「無理を言うでないリィンヴァルナ。アルフレッドには立場という者があるのじゃからな。それにこうして、立場を気にせんでもよい場を用意してくれているだけでも、十分じゃろうに。」


「え~、まあ、そうですけど……。」


 そう言ってだらりと頬杖をつく彼女に、男性陣二人が苦笑を漏らす。


「リィンヴァルナは変わらないな……。」


「いや、本当に、いつまでたっても成長しないというか……。」


「ちょっと! まるで私がいつまでたってもお子様のままみたいじゃない!」


「そう言ってるしその通りだよ。少しは成長してくれ。」


「なにおう! オバケが怖いライバートのくせに!」


「そっ、それは関係ないだろ!?」


 そう言われて言い返さないほど、リィンヴァルナはおとなしい性格をしてはいなかった。やいのやいのとじゃれ合いを始めるライバートとリィンヴァルナを横目に、楽しそうに苦笑を浮かべるアルフレッドに声をかける人影が一つ。


「時に、アルフレッドよ。」


「ん、どうしたんだい、サリア。」


「うむ、この雰囲気の中仕事の話をするのも迷うところではあるが、おぬしの話に少し気になったことがあってな……。」


「気になったこと?」


 サリアの言葉に、部屋の隅で従者と会話をしていたラーナ、そしてついにじゃれ合いが取っ組み合いに発展した二人が同時に彼女の側に視線を向ける。彼らのほうを見返したサリアが、なんとも複雑な表情で言った。


「……おぬしら、騒いでいても良いのだぞ……?」


 代表してか、ライバートが答えた。


「いや、気になるしな。サリアの言うことは大体いつも深いし。」


「そうじゃろうか。おぬしらが浅すぎるだけだと思うがのう……。まあ良い。」


 そう言って、彼女は改めて王子の方に視線を向ける。


「今回の話、持ちかけてきたのは竜崎の方であったな? その話が持ち上がったのは、竜崎の巫女がおぬしらレベティリアの一族を訪ねて来たときか? それともドリア王国を訪ねて来たときか?」


 その言葉に王子、アルフレッド・レベティリアが答える。


「すまない。質問の意図が分からないが……。」


「前提の話じゃ。儂は前者と認識しておるが、そこに間違いがあっては疑問自体が見当違いということになるからの。」


「なるほど。まあ結論から言うと、その認識で大丈夫だ。竜崎家が持っているのは各国の王族とのつながりだ。竜崎家はどの国に対しても王族との個人的な友誼しか結んでおらず、それはドリア王国に対しても例外ではない。彼らが我が国の貴族と接触することは、なぜかないんだよ。」


「ふむ。そうであるならば……先の『余計なところに情報が洩れてほしくない』というのは、単に市井の者に対してだけではなく、貴族に対してもまたそうである、ということなのじゃな?」


「ああ、そういうことになる。例外はバータ家だな。あそこは代々誅世の書の封印の維持を王族と共同で行ってきた由緒ある家だ。この話を進めるにあたって、あの家に話を通さないわけにはいかない。」


 ここでラーナが口をはさむ。


「バータ家なら大丈夫でしょう。あの一族はとにかく生真面目で融通が利かない者ばかりですから。」


「まあ、それは良いのじゃが。いずれにせよおぬしら王族は、竜崎家との個人的な談笑の場において、今回の引き渡しの決行を決めたことになる。他の貴族の意思を確認することもなく。」


 話しがここまで来た辺りで王子に質問の意図が伝わったようで、彼は納得した顔でうなづいた。


「なるほど、サリアが言いたいことがようやく分かったよ。それについては問題ない。我が国に、誅世の書の引き渡しに反対する貴族はただの一人もいない。つい四か月程度前の対策会議でも、どこかに押し付けられればいいのにな、って言って話がいつまでたっても進まなかったよ、ははは。」


 笑い事ではない。しかしそれは最早彼らにとって日常なのだろう。実際のところ、封印まで成功している以上、彼らにできることはそう多くは残っていなかったのだから。それこそ、つい二か月前まで。


 人とおり笑ったあと、王子は居住まいを正し、真面目な顔で言葉を繋げた。


「まあ、そういうことだ。我らがドリア王国の中に、あの『誅世の書』を悪用しようとする者は一人もいない。断言しよう。」


 彼はそう、力強く言い切った。サリアがその答えに満足したかは分からない。彼女は小さく頷いて、口に手を当て、目を閉じてしまった。


「……それにしても、意外ですね、お兄様。バータから反対はなかったのですか。あの家は、『誅世の書』にかけられた封印の維持にある種の誇りというか、特別な感情を抱いていたように思うのですが。」


 ラーナの質問に、アルフレッドは軽く手を振りながら答えた。


「ああ、それは少し違うよラーナ。あの家がやっていたことは『誅世の書』の封印ではなく、『誅世の書』の脅威をドリア王国から排除すること。封印は手段に過ぎないんだ。だから、竜崎家に引き渡しを行うことで、『誅世の書』がドリアの地から消えるのであれば、それはそれで僥倖である……と、本人たちが言っていたよ。」


 どうやらただの受け売りだったようだ。ラーナは納得したのか、目を丸くして頷いている。


 彼らの話の区切りがついた、まさにその瞬間。待ち構えていたかのように―実際待っていたのだろうが―部屋の扉が開き、小奇麗な服に身を包んだ中年の女性が彼らに向けて頭を下げた。


「殿下。晩餐会のご用意ができました。」


「おお、そうか。では向かうとしよう。」


「『緋色の翼』の皆様も、どうぞ、こちらへ。」


 手で廊下を指し示す従者の女性。彼女の手振りに従って、傭兵の四人は歩きだし、先を進む王子に付き従うように部屋から出て行った。


「ではマーサ、案内を頼むよ。」


「承知いたしました。こちらでございます。」


「久しぶりですね、マーサ。」


「お久しぶりでございます、王女殿下。」


 様子を見る限りでは、下働きの者達との関係も良好なようである。徐々に緊張がほぐれ、来た時のにぎやかさを取り戻しつつある一行の後ろで、王子の部屋の扉がゆっくりと閉まり、布がこすれる小さな音を立てた。

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