35 自由時間 2
窓の外の石壁に指をかけて降りながら、茅乃はふと思った。
「あれっ、もしかして廊下のほうから出てもよかったんじゃ・・・・」
こっそり出ていく、ということが身に沁みついているのでうっかりバルコニーから出てしまったが、ここアズイルでコソコソする必要はないのでは、と茅乃は気付いた。
「階段のところにいるっていう護衛のひとに声をかけたら、ふつうに通してもらえたんでしょうか?」
壁に張り付くようにして降りている茅乃の隣では、ワンワンが当たり前のように壁を摑みながら小刻みに跳び降りている。
「そりゃ、通してもらえたと思いますよ」
「えー・・・・、そっかぁ。次はふつうに回廊を通って行こう」
よけいな体力を使わないほうがいいよね、と茅乃は次回のルートも下見しておこう、と考える。
ふたりとも難なく地上に降り立ち、茅乃はまだ馴染みのない敷地の中の、闇の多い景色を見回す。
午後からの記憶を思い返してみると、王城の内部は建物の中央部分に執行機関が集中している。キアヒムの執務室をはじめ、茅乃の案件を処理したいくつかの窓口はほとんどその周囲に限定されていた。そしてカシュアに案内された兵舎は王城を俯瞰で見て東側に位置している。
王城の東側が軍部ということは、西側にはなにがあるの?
明日また部屋に来てくれるというシャノンやカシュアに案内を頼めば連れていってもらえるかもしれないが、明日はお店の件に専念したい。それに西側を見てみたいのはただの興味、好奇心だ。それこそ自由時間に満たしておけばいい類のことだろう。
「えーと、西は・・・・」
たしか星を頼りにするんだった、と茅乃はキアヒムに教わったことを思い出しながら夜空を見上げる。
「・・・・あっちですね!」
ひと際強く光るふたつの白い星を見付け、自信満々に指した方角をワンワンが控えめに訂正した。
「・・・・あちらは南です」
「え? ふたつ星の方角が西って聞きましたけど?」
「それは数日前までの情報です。守護星がふたつあるのは南、アズイルは守護星が増えてみっつになりました」
「増える? 星が増えるなんてこと、あるんですか?」
「神子様が、アズイルに滞在すると決めたからみっつになりました」
「わたし? レンさんじゃなくて?」
「先代神子様の星はもう上がっています。守護星は当時の神子様が滞在した国の上空に現れ、加護を与えるものですが」
「そうなんですか?」
「はい。それで、先代神子様の滞在は過去のことなので、星はもう動きません。そこにみっつめの星が現れました。かわりに東の星はひとつ減っています。ボクは星が動くなんてはじめて見ましたが、あれは陛下が当代神子様とともにアズイルに戻られたからだと聞きました」
「・・・・・・」
後半は合っている、と茅乃は思う。ただ、前半はよくわからない。
世界の仕組みが茅乃にとって複雑すぎるのだ。そこにどうやらじぶんも関わっているようなのでなおさらわかりにくくなる。そして。
―――じぶんの行動とともに星が動いた?
そろそろ、プライバシーはどうなってんのと本気で叫んでもいい頃ではないだろうか、と茅乃は思う。
ともかく、星を目印に覚えた方角はもういちど覚え直しだ。先ほど部屋で読んだ書物の内容を思い出しながら照らし合わせる。
「ええと、じゃあ、西がみっつの星で、東がよっつ、南がふたつ、北がひとつ、ですね?」
空を見上げ、指さしながらワンワンに確認を取る。
「はい、そうです」
きちんと答えてくれるワンワンに、茅乃は覚え直した西の方角を指して言った。
「じゃあ、あっちに行ってみましょう」
「わかりました」
闇に紛れるような格好のワンワンとともに王城の西を目指す。
庭を歩きながら王城を見ていくと、様々なひとがいた。
カシュアやプラトに似た格好のひとたちは軍に所属しているひとたちで、軽装に見えた服は制服の一種なのだと教えてもらう。アビダと似た服のひとは神官だろう。場所が神殿ではなく王城の中なので見かける数はそう多くなかったが、チラホラといた。そしてシャノンやラムジが着ていたような薄い茶色のゆったりした服は文官の制服だという。
「そのほかの、ときどき見かける華やかな色の服を着た女性はどういったひとたちなんでしょう?」
「ああ、侍女のひとたちじゃないですかね」
マーサの管轄下である。
それにしても、夜の鐘が鳴ってだいぶ経つというのに、王城内はたくさんのひとの行き交いがある。終業を越えて働いているのはシャノンやカシュアだけではないようだ。もしかすると場所が場所だけに完全に寝静まる、ということがないのだろうか。ちょうど横にワンワンがいるので、訊いてみることにした。
「ワンワン君、この王城で明かりが落とされる時間はいつごろですか?」
「部署にもよると思いますけど、真夜中にはだいたいどこも暗くなってます」
「ということは、みなさん長い時間働いてるんですね・・・・」
「交代制のところもあります」
「なら、安心ですけど・・・・」
雑談を交わしながら王城の左翼、建物の西側に着いた。
外から見るとこちらにもまだ明かりが点いている。
ここはどういう場所なんだろう、と思いながら近付いていくと、部屋の窓はすべて開けられていることに気が付いた。そして開放された窓からは白い蒸気が出て夜の空に昇って薄くなっていくのが見えた。そしてかすかに流れてくるいい匂い・・・・。
厨房かなあ?
茅乃が裏口から覗き込んでみると、中にいたひとと思いっきり目が合った。
いままさに外に出ようとしていた、くらいには近い距離で、人が立っている。
目の前に立っていたのは、茅乃とそう歳の変わらない少女だった。
茶色の髪は後頭部で丸く纏められ、はっきりと丸くなった形の目は薄い茶色をしている。茅乃と同じようなキャミソールのうえに短い袖の服を着ていて、生地にゆとりのないズボンと足首までしっかりと覆う革靴を履いている。手にはふたつの空のバケツ、のようなものを持っていた。
水を汲みに行くのだろうか、と考えた茅乃に、遠慮のない声が掛けられた。
「なに、あんた、ひとり?」
そう問うた少女の目はまっすぐ茅乃に向けられていて、茅乃は慌てて背後を振り返った。
「いえ、あの」
ワンワン君が、と言いかけたが、そこには誰もいなかった。
「あっ、あれっ?」
さっきまでここに・・・・と考えるが、実際にワンワンの姿は消えている。
どういうこと、と考える茅乃を気にしたふうでもなく、少女は続けた。
「まあいいわ。ヒマならちょっと手伝ってよ。芋の皮剥きやってくれる?」
「あ、はい」
厨房を入ってすぐのところに、別のバケツがふたつ置かれてある。ひとつのバケツにはジャガイモに似た芋が山盛り、もうひとつは空だ。
「これ、よろしくね。あたしは水汲んでくるわ」
「わかりました」
「あ、あとこれ使ってね」
渡されたのはペティナイフのような小さな刃物だ。そして足元に置かれた背もたれのない簡素なイスが示される。
「そのイスも使っていいわよ」
「ありがとうございます」
剥けた芋はそっちに入れといて、と空のバケツを示される。そこまで説明すると少女は行ってくるわ、と闇の多い外へと消えていった。
「・・・・・」
小さなイスに座り、慎重に潰さないように土が付いたままの芋を手に取る。シャリシャリと撫でるように丁寧に皮を剝きながら、茅乃はあのひとはどこに水を汲みに行ったのだろう、と考える。
厨房なのに、外に行ったってことは、中には水道設備がないってことなのかな。
ここが砂漠の中である以上、井戸という設備はあまり一般的ではないような気がした。ということは水路の水か、それに代わる水場があるのだろうか。
それを、この暗い中、夜の鐘が鳴った後だというのに汲みに行く。
重労働だなぁ、と考えながら芋を剥いていく。
―――芽の部分もしっかり取らないと。食中毒になるって家庭科の先生が言ってたし。
慎重にナイフの刃先で芽を抉っていく。ひとつ剥き終わり、全体を見て芽の取り残しがないかを確認して空のバケツに入れていく。
シャリシャリと無心で作業を行っていると、バケツの半分くらいまで剥き上がった芋で埋まってきた。ちょうどそのころに少女が戻ってくる。
「お待たせ―」
「あ、おかえりなさい」
「あら、けっこう進んでるわね。あんたこの仕事向いてるんじゃない?」
「そ、そうですか? お駄賃もらえますかねー?」
「そうねー、早く終わったら親方からぶんどってあげるわ」
などと軽口を言い合っている間にも少女はバケツに水を入れ替え、空いたバケツを棚にしまっている。もうひとつの水が入ったバケツは最後の洗いに取っておくのだろうか。
ガラガラとイスを引っ張ってきて、少女は茅乃の向かいに座る。その手には茅乃に貸し出されたナイフとは別のナイフがある。
「そういや言ってなかったわね、あたしはハウラよ。あんたは?」
「カーヤと申します」
「ふうん? 聞いたことない名前ね。最近入ってきたの?」
「はい、今朝から・・・・」
嘘ではない。が、ハウラは厨房に入ってきた時期を聞いており、茅乃は王城に入った時期、つまり目が覚めたときを指して答えている。ふたりの間には齟齬が生じていた。だがそれでもおしゃべりをするには問題ない。
ハウラは話しながら芋の皮剥きをしているが、その動きは手慣れていた。茅乃がひとつの芋を剥く間にみっつくらいの芋を剥いている。
「すごい・・・・速いですね」
茅乃が感心して言うと、ハウラはなんでもないことのように答えた。
「これを終わらせないと、仕事が片付かないのよー」
あんたは怪我しないように剥いてくれたらいいから、と言われ、茅乃は頷いて皮剥きを再開する。
「それにしても、たくさんの芋ですね」
「これでも一部よ。というか、これで最後ね」
「そうなんですか。この芋はどういった料理になるんですか?」
今日食べたアズイルのご飯はおいしかった。アズイルの料理に興味を感じながら訊くと、ハウラはうーんと口ごもる。
「献立は親方が決めるから、あたしはよくわかんないな。まだ下っ端だから料理のほうは触らせてもらえないんだー」
修行中なの、とハウラが言ったとき、ハウラの背後、厨房の裏口とは反対側の扉から誰かが入ってくるのが見えた。
「おいハウラ、芋は終わったのか」
のっそりと姿を見せたのは三十代前半くらいの男性だった。
明るい金に近い茶色の髪と、透きとおるような青色の瞳をしている。その眼の色はきれいだが、目つきが鋭いせいで人相がとても悪い。眉間のしわも深く、どこか気難しいような人物にも見受けられた。背は高くも低くもないようだが、ハウラと同じような袖の短い服からのぞく腕は逞しく、よく見れば全身は労働で鍛え上げられたかのようながっしりとした体格をしている。
「親方、いま終わりましたー」
ちょうど最後の芋をハウラがバケツに入れる。そのままガランガランと大きくバケツの中で芋をすすぎ、きれいな水のほうのバケツに移し替えている。そしてそのバケツを男性に渡すと、親方と呼ばれた男性は茅乃を注視した。
「誰だ」
「あ、カーヤと申します」
「新入りじゃないんですか? 手伝ってもらったんですけど」
「は? 新入りなんて聞いてねぇぞ。それからハウラ、親方と呼ぶなって言ってんだろ」
「すみません、料理長」
料理長、と茅乃は男性を見上げた。
誰だろう、ハウラの上司かなと思って挨拶をしたが、料理長ということはこの王城における厨房の責任者ではないか。
「料理長の方なんですね。今朝の肉団子、美味しかったです。ありがとうございました」
お礼を言う機会ができた、と茅乃はにこにこしながら男性を見ながら言う。
「・・・・・」
眉間にしわが残ったまま、男性は茅乃を見下ろした。
「・・・・今朝、肉団子の汁を食べた、と?」
「はい、いただきました」
どうして確認されたんだろう。そう疑問に思いながらも茅乃が頷くと、男性はその視線を茅乃から外さないまま、傍らに立つハウラの頭頂部に目にもとまらぬ速度で拳骨を落とした。
ゴツッ、という大きな音を聞いた茅乃は内心で、じぶんが打たれたわけでもないのにヒィと悲鳴を上げる。
男性は抗議の声を上げかけたハウラの頭をその大きな手で摑み、力ずくで押さえ付けるようにした。そして当の本人は茅乃の目の前で膝を着く。片手を、胸に当てた姿勢で。
「神子様とは存じ上げず、大変失礼いたしました。わたしは料理長を任されておりますマリクと申します」
「えっ」
「え?」
茅乃とハウラが声を上げたのは同時だった。
ハウラは抑えられ、俯き加減になった面から上目遣いのようにして茅乃を見ている。その眼は驚きに満ちていて、それを見た茅乃がなにかを言うよりも先にさらに力が加えられる。
頭頂部しか見えなくなったハウラの頭をただ見ていることしかできなかった茅乃は茅乃で、マリクと名乗った男性がどうして茅乃を神子だと断定したのかがわからなかった。
疑問に思い、戸惑っている茅乃の正面から見据えるようにしてマリクが言う。
「このものは厨房に入って三年ほどになりますが、まだまだ一人前と呼べる段階ではありません。それでもその仕事ぶりは誰よりも真面目で丁寧です。ハウラに限らず厨房には多くの人員がおりますが、誰ひとりとして欠けていいものではございません。畏れ多くもお願い申し上げますが、どうかこの件は見逃していただけないでしょうか」
「・・・・・」
マリクの眉間のしわは取れているが、その目つきは良くないままだ。おそらくこれが素の顔なのだろう、と茅乃は思い至る。
そして、先ほどまでぞんざいな口調で簡潔に話していたマリクがどうしていきなりこれほど丁寧な言葉とともに饒舌になったのか、という理由にもまた思い至った。
ハウラを褒めたいのか貶したいのか、という主旨ではない。
マリクが言いたいことはきっと、最後の部分。
―――助命を乞われているのだ。
茅乃が神子である立場上、きっとそれにまつわる力があると思われていて。
「・・・・・あの」
そんな大それた、怖いものは持っていないのだ、と茅乃は説明しようとしたが、とっさに息を飲み込んだまますぐには答えを吐き出すことができない。
茅乃が持っているのは馬鹿みたいな怪力だけで、他者になにかを乞い願われてどうこうできる性質のものではない。
それに、と茅乃は深呼吸をしてから口を開く。
「あの、マリクさん。わたしはここで、お手伝いをしただけです。芋の皮剥きをすると、なにか見逃さないといけない事態になりますか」
べつに脅されてやっていたわけではない。押し付けられたわけでもない。
だから、ここで茅乃が手伝いをしていたことは茅乃の自由意思によるものだ、ということをマリクに理解してもらわないといけない。
そして、こんな物騒なやり取りにはもう関わりたくなかった。関わりたくないから、そこから逃げ出してきたというのに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
しばらくマリクと無言で見合う。
先に動いたのは、マリクのほうだった。
「これは、出過ぎたことを申しました」
その言葉だけではマリクが納得したのか折れたのか、茅乃にはわからなかった。けれどもマリクがじぶんで述べた内容を取り下げるような発言をしたということは、茅乃に他意がないということを受け取ってもらえたのではないだろうか。
知らず自分の肩が落ちたのを感じて、茅乃はふと先ほど疑問に思ったことを訊いてみることにした。
「マリクさんはどうしてわたしが神子だと思ったのですか?」
「肉団子が入った献立は、陛下の御膳に用意したものです」
・・・・なるほど、と茅乃は思う。腑に落ちた茅乃に、マリクの横にいるハウラがじっと見つめたまま訊いてくる。
「・・・・あんた、神子なの?」
「はあ、そのようです」
茅乃が返事すると同時に、ハウラの死角でマリクの拳骨がふたたび上がった。それを見た茅乃はマリクに向かって必死に首を振る。
その必要はないのだ、という意思が汲み取ってもらえたのかどうかはわからないが、マリクは茅乃を見て静かに拳を解く。そのやり取りに気付いていないハウラがさらに訊いてきた。
「あたし、あんたがヒマなのかと思って仕事頼んじゃったわ。・・・・迷惑だった?」
「いえ、まったく」
事実時間があるから探索をしている。本当に時間がない状態ならなにか頼まれごとをされてもこなす余裕などない。
それに、厨房の中を見ることができたのはハウラが気軽に声を掛けてくれたからだ、と茅乃は思っている。
なんの裏表もない茅乃の返答を聞くと、ハウラは満面の笑顔になった。
「なんだ、迷惑じゃないなら良かった。また時間があったら来てくれる?」
「夜はヒマなので、来れると思います」
またお手伝いに来ますね、と応える茅乃の前で、マリクの眉間のしわが復活した。
「・・・・ハウラ、頼むから少しは頭を使って会話をしろ」
「なに言ってんですか、親方。本人がいいって言ってるんだからいいじゃないですか」
「本気で言ってんのか。厨房は本来神子が入る場所じゃねぇぞ」
「ダメなんですか?」
それは困る、と茅乃が正面からマリクを見つめると、マリクは言葉に詰まったようだった。
「お邪魔をしているようならやめますが、邪魔でしょうか?」
「・・・・・」
「親方、意地悪しないでくださいよー」
「馬鹿言え、これが意地悪だと思ってんのか」
「意地悪にしか見えないですよー、本人が来る気になってるんだし、あたしからもお願いします」
「あ、わたしからもお願いします!」
「・・・・・」
「親方ー、お願いしますー」
「おやかたー、お願いします!」
ふたりで言い募ってみると、マリクの眉間のしわが増えた。
「・・・・・好きにしろ」
吐き捨てるように言い放って、マリクは手にしたバケツとともに厨房の一室から出ていった。
先ほどはマリクが納得したのか折れたのかわからない反応があったが、これはどう考えても折れた、というより思考を放棄したような反応だと感じた。だがどちらにしろ厨房の責任者の許可は得られたのだ。
「・・・・やった!」
小さくつぶやくと、マリクの背中を視線で追っていたハウラが振り返る。
「次は山盛りの豆を用意しとくわ。筋取り手伝ってね」
「わかりました」
そう言い合ってふたりでバケツに残った水で手を洗う。
厨房の中と外とで互いに手を振り合い、茅乃は闇の多い屋外を歩きはじめる。
「・・・・・・」
王城の、作業場の片隅で。
以前にも気軽に声をかけられたことを思い出す。
洗い場か厨房かの差はあれど、必要に応じた会話というわけではなく、ただ取り留めのないおしゃべりをしたこと。たわいのないそれだけのことで、心が解れるような気がした。
もういちどおしゃべりをすることはおろか、会うことももうできないけれど。
また話がしたい。
そして、仲良くなれるだろうか。
未来への可能性を問うには、その命が存在していることが前提なのだ。いうなれば茅乃が出会ったひと、そしてこれから出会うすべてのひとに可能性が詰まっているといえる。
神子だと露呈したとたん言葉遣いと態度を改められるような身分など、その可能性を探るうえであまり必要とも重要とも思わない。
「神子の身分や立場が、なんぼのもんだっていうのよ」
低くつぶやいて、茅乃は王城の反対側を目指した。




