抗えぬ本能
本当ならもっと戦闘シーンを書こうと思っていたのですが、諸事情により全て割愛します。
もしかすると、完結させた後に改めて戦闘シーンを書いた話を投稿するかも知れませんが、今は完結させる事を優先します。
申し訳ありません。
カナタはゆっくりとギルゴマに悟られないように所定の位置へと移動していた。
そっとパーティーメンバーを見ると、全員が作戦通りに行動しようと試みている事が窺えた。
レーナもゆっくりと作戦の指定位置へ向かっているようだ。
ホレスもまた果敢にギルゴマへと牽制の動きを見せていた。
アルファとベータは先程からギルゴマの索敵に引っかからないように魔力を溜めていた。
(良し、ここまでは予定通りだ)
カナタは不敵な笑みのまま作戦が上手く行きそうだと考えていた。
だが、アリシアだけは、先程から全く動きを見せず、相変わらず元のA地点にいた。
カナタがアリシアに声を掛けようと思った時、ギルゴマが突然大きな声で笑い始めた。
「クックック、はあーっはっは!君達の起死回生の作戦と言うのはもしかして、先程から魔力を溜めている。ルクレシアの娘を期待しているのですかねぇ?」
そう言って、ギルゴマは死角になっているはずのアルファとベータの足元へ魔法を放った。
ギルゴマが魔法を外したのは単に管理者の宣誓によって、カナタ以外の者を攻撃できないからだと瞬時に全員が理解した。
「それとも先程から一生懸命この地点に食い止めようと必死に牽制を掛けているホレス君の事を期待しているのかねぇ?ふむ、しかし少々邪魔なのは事実ですねぇ。だから…私の子供達よ。動くな」
ギルゴマがそう言った瞬間にホレスとレーナはまるで金縛りにあったかのように動けなくなった。
アリシアには元々動く意思などなかったように思われた。
それは魔法などではなく。
そもそも攻撃ですらない。
単なる命令であった。
だがその一言だけで、三人は全く動けなくなった。
魂に直接響くような絶対者からの命令にただ従う事しかできないようだった。
「私は君達の父であり主なのですよ?本気を出した私の命令に君達は、抗えぬ本能として従ってしまうのですよ」
ギルゴマは然して自慢する訳でもなく、淡々と事実を述べているだけのように見えた。
「忘れてはいけないねぇ。君達はやはり私の子、第五世代なのですよ」
ギルゴマからは一瞬、慈悲ともとれるような表情が伺えた。
「愚かな人間共に誑かされ。父に刃を向けた事は、本来であれば許されざる行為。だが私は君達を許しましょう」
そう言ってギルゴマは、慈愛の笑みを浮かべた。
そのギルゴマの言葉に、真っ先に反応を示したのは…アリシアだった。
「お父様、いえ主よ。私の質問に答えて頂けますか?」
アリシアは身動きの取れない体で、懸命に言葉を話した。
「ふむ、父と呼んで構いませんよ、アリシア。そして君の質問に答えましょう。言ってみなさい」
ギルゴマからは、真にアリシアを気遣う気配が見て取れた。
あるいはギルゴマを、本当に説得できるのかとも思えるような、そんな雰囲気が二人の間に流れていた。
戦いは急展開に、第三幕へ入ろうとしていた。
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