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いきなり最終話(クライマックス)  作者: アルファ・D・H・デルタ
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回顧録~アリシア・フィリス~

本来の構想ではアリシアがストーリーテラーでした。

アリシアの視点から見た、彼の物語を書く予定だったんですよね。


アリシアは二度目の爆発を見て青ざめていた。

あんなのモノに二度も巻き込まれて無事な訳がない。あの人の死んでる姿を見るなんて私には耐えられない!

そう考えたアリシアは思わず視線を外していた。だがしかし。


「嘘でしょう?あんな馬鹿げた攻撃をまともに受けて、なぜ立ち上がれるの?」


そう震える声で呟くレーナの声で、再び視線を彼に戻した。


生きている、体中血だらけでボロボロではあるが、彼は生きて立ち上がろうとしている。

よろよろと剣を杖代わりに両手で支えながら、彼は「ヒール」と唱えた。


「馬鹿なあの状態で回復魔法を唱えるなんて自殺行為だ」


ホレスが叫んだ。


よく勘違いをされるのだが、回復魔法とはそんなに都合の良い魔法ではない。

街中で使用する時などは麻酔魔法をかけてから使用される魔法だ。

そうしないとあまりの激痛で死ぬ人間すら出るだろう。

回復魔法とは傷付いた場所の自然治癒力を劇的に上げて無理矢理回復させる魔法だ。

無から有を生み出す魔法ではない。

傷付いた場所のダメージが深ければ深いほど痛みも増し、さらに傷を補う為に体の他の部分から生命力を奪う。

そのため結果的には応急処置のように出血が止まり傷口も塞がるが身体全体の状態としては治っている訳ではないのだ。

本来であればベッドなどで回復を待つ時に回復力を高める為に使う魔法である。


それでも冒険者であれば、一度や二度は緊急処置として回復魔法を使用した事は誰しもあるだろう。

だが少なくとも、戦闘中に行う行為ではない。

それは薄い膜のように傷口を塞いでいるだけの状態である。

傷は完全に塞がれるものではないのだ、動けば再び傷口は開く、現に回復魔法を唱えてすぐに動き出した彼の傷は再び出血し始めていた。

そしておそらく常人であれば耐え難い苦痛を感じているはずである。

それでも彼は不敵な笑みを絶やす事無く戦闘を継続している。


「なぜ?どうしてそんな事が可能のですか?教官!」


アリシアは彼と初めて会った時の事を思い出していた。

当時の彼は冒険者アカデミーの教官であり、アリシアはその生徒であった。

教壇に立つ彼は初めての講義で全員に対して問いかけた。


「本当に凄い冒険者とはどんな奴だと思う?」


生徒達は思い思いの凄い冒険者を挙げた。

一通り生徒の意見を聞いた彼は最後にこう言った。


「俺は本当に凄い冒険者とは、最後まで諦めない奴だと思っている、どんな絶望的な状況でも、何度倒れても、必ず立ち上がる。立ち上がった時に不敵に笑える、そんな奴だけが不可能を可能にする事が出来る。とまあ思っている訳だが、みんなには是非ともそういう、諦めの悪い冒険者になってもらいたい」


「それが教官の理想の冒険者ですか?」


アリシアは彼に聞いた。


「ソウイフモノニワタシハナリタイ」


彼は笑ってそう言った


「何ですか?その妙な言葉は?」


アリシアは笑って聞いた


「あぁ、俺の国の…そうだな、吟遊詩人?の言葉さ」


「なぜ疑問形なんですか、そのお話し聞かせて下さい」


彼はそこから自分の国の吟遊詩人の歌や、話をいくつか聞かせてくれた。ちくりと痛むアリシアの淡い思いと共に、彼の笑った顔を思い出す。


なってますよ教官そういう者に、あなたはなっています…


結局、全部あなたの事じゃないですか教官、ずるいですよ。

あなたはいつもずるい、なぜ立ち上がれるのですか?なぜそんな不敵な笑みを浮かべられるのですか?

なぜ…そんなにも…強いのですか?

やっと、やっと追いついたと思っていたのに、あなたと肩を並べられるようになってきたと思っていたのに…まだまだ教えてもらうべき事がたくさんあるのに…


アリシアは映像がぼやけている事に気が付いた。


あぁ、そうか、私は泣いていたのか。

どうりでさっきから映像が見にくいと思った、泣いている場合じゃない、見届けなければこの人の戦いを。その生き様を。一瞬たりとも見逃してはいけない。

きっとこれはあの人の最後の講義だ。

ならば最後まで見届けよう。

この最高の冒険者の戦いを。


アリシアは涙を拭いた。そして彼の戦いを最後まで見届ける覚悟を決めた。


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