決戦前日譚、その9~英雄たちの宴~
これで前日譚は終わりです。
これまで彼らがどのように冒険してきたか、少し様子が分かってもらえたでしょうか?
そしてとうとう最終決戦の日へと話は進みます。
みんな唄い踊り、陽気に語り合った。
普段はおとなしく話を聞いているレーナですら、今日は饒舌に喋っていた。
みなこれが“誰か”との今生の別れになると知っていた。だからこそ、飲み、唄い、楽しく話しをした。
こんな日常がいつまでも続くのだと、どこかみな勘違いをしていた。
だが現実とは残酷なのだ。こんな無茶を続ければいつか必ず誰かが死ぬ。
その現実を突きつけられたアリシアは、だからこそこの時を大切にしようと思った。
この宴の記憶をしっかりと頭に焼き付けようと思った。
例え明日、自分が死ぬとしても、この思いまでもが否定される訳ではないのだから。
ふと気が付くと、アルファが少し離れた場所からみんな様子を眺めていた。
「どうしたんですか?」
アリシアはアルファに話しかけた。
「うん?あぁ、ごめんなさい。最後の思い出にこの様子をヴィジョンに収めても良いかと思ってね」
「あー、もしかして前に言ってた録画機能とかいうヤツですか?」
「そ、思い出を撮っておくのも良いでしょう?」
「それ後で見せて下さいね。今までも撮ってたんでしょう?わたしも見てみたいです」
「もちろんよ」
アルファがそう答えた時、少し離れた場所でホレスが楽しそうに彼の背中を叩いて笑った。
その横ではレーナがチビチビと酒を飲みながら、彼にまた何事かを言っている。おそらくまた口うるさく注意でもしているのだろう。
ベータは何も言わずゴクゴクと酒を飲んでいたが、一見無表情に見える顔からは珍しく楽しそうな様子が分かった。
「…明日、本当に誰かが死ぬんですね。あたし、どこかこんな日がいつまでも続くんだと勘違いしてました」
「物事にはいつか必ず終わりは訪れるものよ。でもだからこそ、一瞬一瞬がとても眩しいものだと思える。人間とはそういうモノでしょう?」
「そう、ですね。だからこそ今を大事に生きる事が出来るんですよね…ねえ?アルファも一緒に飲みましょう。さあほら」
アリシアはアルファの手を引っ張りみんなの元へと戻った。
アリシア・フィリス。
「黒のアリシア」と名を残す英雄となる彼女は、この日の宴を生涯忘れる事は無かった。
後世で絵画にすら描かれる事になるこの日の夜の事を人々は「英雄たちの宴」と呼ぶことになる。
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