エピローグ、その10~アリシアの望み~
三人の交渉は言わば前座ですね。
「それから…第五世代が世界の代理管理権限者と成るには少なくとも、もう一人補佐として第五世代が必要です。そうすることでやっと問題なくこの世界をかつてのギルゴマと同程度に治める事が可能でしょう。残念ながら現状ではユーリィ一人でこの世界を治めるのは難しいと言わざるを得ませんねぇ」
ルクレシアはまたしても爆弾発言をした。
「そ、そんな」
アリシアが呆然とした表情で呟いた。
「問題ありません。では、私がその補佐役に立候補します」
レーナがルクレシアに毅然とした態度で答えた。
「あら?それならば何とかなりそうね。でも残念ながら貴女の望みは既に叶えたのよ?いかがなさるおつもりかしら?」
ルクレシアは小首を傾げてレーナに聞いた。
「ならば私の願いを使います!」
すかさずアリシアが答えた。
「よろしいでしょう。では…。はい、手続きは終了ですよ。これでこの世界は滅びの危機から免れました。ただ貴女達には、彼の捜索に行って頂くことになりますから、補佐役に就いてもらうのは帰って来てからで構いません。それまでは代わりに私がユーリィの補佐をします」
ルクレシアは笑顔で答えた。
「さて、これで三人の報酬は決まったわね。残ったのはアルファとベータ、そして…」
そう言ってルクレシアはカナの方を見た。
「中田佳奈さん、貴女と報酬についての交渉をしたいと思います」
ルクレシアが微笑みながらカナに向かって話し掛けた。
カナはルクレシアの言葉に反応して、ゆっくりと振り向いた。
その表情は厳しい顔つきをしており、まるでこれから戦いに臨むかのように、キッとした視線でルクレシアを真っ直ぐに見つめていた。
「その前に、まず、現状を把握するために、いくつか質問をさせて貰ってもよろしいでしょうか?」
カナは言葉を選びながら慎重に聞いた。
「もちろんですよ」
ルクレシアはその言葉を聞いて、ニッコリと嬉しそうに微笑んで答えた。
その表情を見て、カナは交渉の第一歩目は間違いではなかったと確信した。
「では、最初にお聞きしますが、これから私が質問することに全て真実で答えると、約束して頂けますか?」
「当然です。地球の管理者、ルクレシアの名に懸けて、貴女の言葉に真実で答えると誓いましょう」
ルクレシアは管理者の宣誓を言った。
それに合わせて、システムが管理者の宣誓を認める声を上げた。
この様子を見ていたホレス、レーナ、アリシアの三人は驚いた。
そして、自分達の迂闊さにようやく気付き、全員が頭を抱えた。
管理者という、自分達にとって未知の存在と交渉するにあたって、最初から対応を間違えていたのだと三人はこの時、初めて理解したのだ。
ルクレシアはそんな三人の様子を見て、更に笑みを深めた。
「さあ、では本物の交渉を始めましょうか」
ルクレシアは再びカナへと視線を戻して言った。
…ここにカナとルクレシアの舌戦が始まりを告げた。
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