90話:王宮でのお話(1)
転送魔法で王宮に皆を転送する。ガイセリックはいまだに慣れないなと
呟いている。そして、ガイセリックが口を開いた。
「また、詳細に関しては直ぐに部下を送って連絡する。しばらく待っていてくれ。」
「分かったよ。」
「それじゃあ俺は失礼するよ。」
「ああ。連絡待ってるよ。」
そう言って、ガイセリックと別れる。俺は転送魔法で家に転送する事にした。
家に帰ると皆集まって少し雑談する。飲み物を飲みながら。
「なんか疲れたな。」
「そうね。」
相槌を打つエルマ、他の皆も疲れた様子だ。
「魔族と人間にここまでの怨恨があるなんてな。」
「そうですね・・・。」
「取り合えずは入隊試験を頑張らないとな。」
「難しそうですね・・・。」
皆端的な返答をしているので、疲れているようだ。なので、早めに切り上げる
事にした。
「それじゃあ寝るか。」
「はい。」
そう言って、各々自室に入る事にした。
~王宮~
「殿下、陛下がお呼びです。」
「分かりました。すぐに行く。」
自室に戻ってすぐ、メイドから王様に謁見するように連絡が入る。
王様の命令は絶対なので、俺は仕方なく向かうことにする。
「父上、失礼します。」
一礼し、個室に入る。内装は豪華だが、プライベート用の打ち合わせ室
になっている。小さい部屋だが、魔法による防音処理がなされており、
俺達以外の人には聞こえないようになっている。
「面を上げよ。」
顔を上げると、皇帝である父と、側近である男が居た。彼は、父の幼馴染で
極秘任務を請け負っているらしい。詳しい事は謎に包まれている男だ。しかし、
一番の問題があり、
(精神魔導士か。)
そう、彼は人の精神を読み取り、記憶や人の心が読める。彼の前ではどんな
嘘をもつくことが出来ないのだ。なので、俺は事実を言うしかないかと諦める
事にした。
「昨日何をしていた。」
「魔族の元四天王に会ってきました。」
俺が素直にそう言うと、驚きながら父は答える。
「嘘ではないのだな?」
「彼が居る以上、嘘をついても仕方ありませんしね。」
俺は諦めながらそう返答した。父に対する少しの反抗もあったのかもしれない。
「そこで何があった?」
「過去の話しを聞いて来ました。」
俺はそこで聞いた話を全てする事にした。魔族の成り立ちから過去の話まで。
そうすると、父が口を開き。
「知っている。」
「え?」
一瞬何を言うのか分からなかった。なので聞き返す。
「知っているとは?」
「人間と魔族の成り立ちは知っている。」
「それじゃあどうして争っているんですか!?魔族を滅ぼす事を目的として
戦争をしているじゃないですか!」
俺は腹が立ちそう答えてしまった。
「確か、お前は対話による解決を望んでいたな。」
「そうですが・・・。」
「お前の意見は、ただの理想主義に過ぎない。」
俺の意見を一蹴するように父が話を続ける。
「先祖の遺恨をなぜ子孫が贖罪しなければならぬ。親が犯した罪は子に責任があるか?」
「それは・・・・。」
「それにな、今まで戦った人々の家族・子孫になんて言えば良い?
魔族と対話をして講和したところで、親を殺された恨みを持っている子供は
どこに怒りをぶつければいい?だから、お前の意見は理想主義の子供の意見に
過ぎないんだ。」
俺は何も反論できなくて下を向く事しか出来なかった。




