プールでの子供二人の会話がおかしかった
夏休みの期間を利用してプールの監視員のバイトを始めた。
市民プールには25mプールのほかに子供用のプールも設置されていた。
そこでは、小さな子供達が親に見守られながら黄色い声を上げている。
プールサイド入口から子供の声が聞こえ、振り向くと二人の女児が入ってきた。小学校低学年ぐらいだろうか、学校指定の紺色の水着姿だった。
小さい子には要注意と、意識の片隅に彼女達の存在をおいた。
座りっぱなしの時間が続き、特にやることもなくぼーとしていたが、聞き耳を立てなくても子供特有の高い声が耳に飛び込んできた。
「子供用プールって浅いわね」
視線を向けるとさきほどの2人組の子供の姿が見える。
一人は楽しそうにちゃぷちゃぷと水をはねさせて水遊びをたのしみ、もうひとりは風呂にはいるように水に身体を沈めていた。
「深くないよね。学校以外のプールにきたのは初めてなんだけど、こういうプールもあるんだね」
「ここでは広く浅い在り方を許容して、自らの力に溺れないように鍛えるのよ」
「ここなら溺れないから、ちっちゃい子も安心だね」
「地に足がついているってのはいいことね。でも、所詮は子供騙しよ。底が見えてるわ」
体育座りした彼女の膝が水面からでていた。
最近の子供ってこんなに語彙力が豊富なのかと驚きながら、彼女達の会話が気になり始めていた。
「もぐらなくても簡単に手がついちゃうね。そろそろ、学校のプールも深いところにいってみたいけど、先生がだめだって」
「そうね、惨めだわ。早く大人になりたい。しかし、深さばかりを求めて背伸びをしても大人になれるわけじゃないわ」
「だよねー、今年は身長あんまり伸びなかったの。すぐに大きくなるってママはいってたけど、本当かなぁ」
子供らしい短い足を水面からだして、ため息をついていた。
「大人たちは我々を子供用プールに縛り付ける。わたしたちに必要なのは新しいプールに飛び込むことよ」
そういうとザバリと水しぶきをはじきながら、ひとりがプールからでる。プールサイドを歩いて向かう先には飛び込み台があった。
さすがにまずいと止めようとしたが、もうひとりの女児がプールは飛び込み禁止だといって引き止めていた。
「……わたしは高く飛びたかっただけなのに」
「ねえねえ、あっちのプールとか楽しそうだよ。行ってみない?」
指差す先には水路のように水が流れていくプールがあった。
「そうね、たまには流されるのも悪くないわ」
そうして、二人は流れるプールで楽しげに遊んでいるのであった。
まとめサイトで見つけた記事を見て、どうしても書きたくなってしまった